第1部 最終話【レンの異世界記録】
前回の冒頭でレンが書いていたものです。
僕は今、異世界にいる。異世界に行っちゃう話はいろんな小説とか漫画とかで読んだけど、自分が本当に体験するなんて思わなかった。でも、異世界って言っても、この世界は日本とそんなに違わない。ご飯も美味しいし水も普通に飲める。普通異世界だとお米が不味かったり、中世ヨーロッパぐらいの生活水準でいろいろ大変だったりすると思ってたけど、すごい田舎で生活してるっていうぐらいで、むしろ学校もないしのびのび生活できて楽しい。
逆に、異世界転生の小説だと、異世界に行っても言葉が通じることがほとんどだけど、この世界はそうじゃなかった。最初はそれが凄く困ったけど、カーズたちのおかげで言葉も覚えれて、何一つ不自由なく生活してる。
カーズたちっていうのは、この世界で出会った人たちで、お父さんが僕と同じ日本人の世渡り人で、兄弟だけですごく広い農園を営んでる人達だ。この前歩いて測ってみたら、カーズの家からミッツの家まで9997歩だった。僕の歩幅が55cmぐらいだから、5.498㎞ある。僕の家から学校までの3倍ぐらいある。
異世界に来てからカーズ達の農園で畑仕事を手伝ったり、一緒に狩りに行ったりして生活した。初めて狩りに行った時にものすごく大きな虎の魔物が出て死にそうになったけど、なんとか勝てた。
この世界に来て、一番びっくりしたっていうか、異世界に来たなぁって思ったのが、魔法。カーズ達と比べると、僕とミーユは最初から強い魔法が使えた。ジョージさんも強い魔法が使えたって言ってたから、世渡り人は強い魔法が使えるのかと思ってたけど、最近気が付いたことがある。僕とミーユが最初にこの世界に来た時に、森の中で大きな茶色い塊があって、それに触ったときにぼやーって紫色に光った気がしたし、ミーユもゾゾゾッてしたって言ってたけど、それって魔物を倒したときに魔力が体に入る時と同じ事が起きたんだって思う。あれはやっぱり魔物で、あの時あの魔物は死にかけてて、僕が触ったのと同時に死んだんだと思う。凄い偶然だけど、僕もミーユもこの世界に来てすぐにあんなにすごい魔法を使えたのは多分そのせいだ。あのあと少し昼寝したのも関係あると思う。魔物から魔力をゲットしてもすぐには使えないけど、寝て起きたらだいたい魔力が上がってる。あの時ひと眠りしたから、すぐに魔力が身に付いて魔法が使えたんだと思う。
魔法のことはいろいろ不思議だったから、ジョージさんのノートを見ながら自分でもまとめてみた。
●魔法は世渡り人かその子孫しか使えない。
これはたぶん合ってると思う。アリルも使えないし、山の向こうの村にも魔法使いはいない。こんなに魔物の森の近くに住んでるのに魔法が使えないっていうことは、たぶんそういうことなんだ。
●魔物が死ぬ瞬間に魔物に触ってると魔力が強くなる。
ジョージさんのノートには、魔物を倒すと強くなるって書いてあったけど、それを信じて魔物狩りをしてたカーズ達はあんまり強くならなかった。弓矢とか使って遠くから倒してたからだってミッツが言ってた。僕がその違いに気が付いたのは、大きな虎の魔物を僕が倒したのに、何故かミーユが強くなってたから。あの時僕は虎の魔物から離れた所にいて、ミーユは虎の目の前にいた。その後、森でカーズ達と確かめたら、やっぱり死ぬ時に触ってるのが一番魔力が入るのがわかった。
●寝て起きると魔力が回復するわけ。
これはまだ何も確認できてないけど、すごく不思議だから僕の考えを書いてみる。筋トレした後に肉を食べると筋肉がたくさん付くって聞いたことがある。実際、魔物の森の中だとちょっと昼寝しただけで全快したけど、農園まで戻ってくるとちゃんと一晩寝ないと完全には回復しない感じがした。魔力がたくさんある所だと回復が早いなら、なんで魔力がない所でも回復するのかがわからない。コセ・シティに行ったら魔法使いも沢山いるから、誰か知ってたらいいな。
●魔力が強くなると体も強くなるけど、たぶん頭も良くなる。
僕はすごく勉強が苦手だったのに、この世界の言葉はけっこう早く覚えれた。まだ小学生になったばっかりで、ちゃんと勉強したことないミーユも、僕と同じぐらいすぐ覚えた。でもセシリアは、最初はあんまり覚えれなかったらしいけど、魔物の森によく行くようになって魔力が強くなってから覚えるのが早くなったって言ってた。もうこれは完全に、魔力と頭の良さが関係してると思う。ミッツの馬も賢いし、森の魔物もすごく知性があると思う。だからたぶん、魔力と頭の良さは関係があると思う。
●魔物の森は奥に行くほど魔力が濃くなる。
だから、強い魔物ほど森の奥に住んでいて、森の浅い所には出てこれない。最初に僕とミーユが触った茶色い大きな魔物も、たぶんすごく強い魔物だと思う。だから、森の浅い所で死にかけてたんだと思う。なんであんな所にいたのかわからないけど。でもそうすると、森の1番奥はどうなってるんだろう?魔王とかいるのかな?ジョージさんのノートには魔人がいるって書いてあったけど、魔人てどれぐらい強いのかな?僕が戦ったら勝てるかな?
そういえば、僕はこの世界に来てから、居合がちゃんと使えてる。おじいちゃんに居合を習ってたのは小学生の時で、もう全然覚えてないって思ってたけど、虎を倒した時にちゃんと使えてびっくりした。その後は、すごく自然に体が動いて、まるでずっとやってたみたいに剣を振れた。たぶんそれは、偶然イメージトレーニングをやってたせいだと思う。この前アークが1人で家の中で目をつぶって座ってたから、何してるのか聞いてみたら、アークはイメージトレーニングをしてるんだって言った。まだ魔法があんまり使えなかった時にジョージさんが教えてくれたらしい。僕も真似してやってみたら、実は同じことをずっとやってたって思った。漫画とかの剣士って、普通じゃありえない動きとか、そんな斬り方じゃ絶対斬れないっていう動きをするから、僕だったらどうやって斬るかって、ずっと想像してた。それがイメージトレーニングになってたみたいで、久し振りにしかも異世界で魔法で岩から剣を作りながら出来たのは、そのせいだったってわかった。だから僕は、おじいちゃんの型を思い出しながらイメージトレーニングすることにした。そうしたらもっと上手く剣を振ることが出来た。やっぱりおじいちゃんはすごい。もっと教えてほしかったなあ。
魔法の事を書いてたのにいつのまにか僕の剣の事書いちゃってた。
明日から、この農園を出て町に行く。最初の目的地はヤナクという町で、カーズ達も時々行くらしい。ユキさんとサラも住んでた町だから、みんな知り合いとかいっぱいいるのかな。人が多い所は怖いから、あんまり行きたくないけど、ミーユと一緒に日本に帰らなきゃいけないから、この世界で一番大きなコセ・シティっていう町に行って色々調べなきゃいけない。カーズも、コセ・シティに行けば世渡り人のことが何か分かるかもしれないって言ってたし。
そういえば、この世界には国がないらしい。異世界といえば王様がいる王国とか、貴族とか騎士とかいるイメージだったけど、この世界には国も王様も貴族もいないらしい。ジョージさんのノートにも書いてあったし、ユキさんもそう言ってた。国がないのは、この世界の宗教みたいな聖魔教の決まりで、国を作っちゃいけないって決まっているらしい。変な宗教だと思った。本当はコセ・シティみたいな大きな町も作っちゃいけないんだけど、そこはうまく仕組みを作って、聖魔教の決まりに違反しないようにしているって、ユキさんが言ってた。ユキさんは、国はないけど、コセ・シティがこの辺りの町や村の首都みたいなものだとも言ってた。
コセ・シティには、ジョゼフさんという商人がいる。国はないのに商人がいるのがちょっと不思議に思った。学校の歴史で習ったけど、まだ国がなかった大昔は物々交換で欲しいものと欲しいものをお互いに交換するのが、お店の代わりだった。ユキさんも、国がないのに商人がいるのは変だと思ってユキさんの旦那さんに聞いたら、コセ・シティを作った聖女っていう人が、今のお金と商売の方法を考えたって教えてくれたって言ってた。最初はコセ・シティだけで使ってたお金が、コセ・シティだけじゃなくて、他の町でも普通に使えるように広まってるらしい。ジョージさんのノートには書いてなかったけど、ユキさんは、ジョージさんは経済には興味が無かったかもって言ってた。
カーズ達もお金は持ってる。金貨とかかと思ったら紙のお金だった。でもそれは本当は紙じゃなくて木でできてるってカーズが教えてくれた。これも聖女が考えたらしい。聖女はすごいな。一つの世界を変えちゃったんだから。
町に行くのは、観光で行くんじゃなくて、町の近くにある北の森っていう所が魔物の森になっちゃったから、僕とミッツとセシリアとミーユで調べに行く。本当は、魔物の森はこの世界の西側にしかないはずだから、コセ・シティの近くに魔物の森があるのはおかしいってミッツが言ってた。なんで魔物の森が西側にしかないのがわかるのかっていうと、世渡り人は必ず西から来るからで、世渡り人はみんな魔物の森に転移して来るから。だから大陸の西側にしか魔物の森はないっていうことらしい。それが半分なのか、3分の1なのか、もしかしたら大陸の90%ぐらいが魔物の森なのかはわからないし、全部が森じゃないかもしれないから本当は魔物の森って呼ばずに魔界とか魔境って呼んだ方がいいかもってジョージさんのノートに書いてあった。
なんか、いろいろ書きすぎで何を言いたいかわからなくなってきちゃった。最初に書こうと思ってて忘れてた、この世界で出会った人達のことを最後に書いておこう。
カーズ・フィンガー
30歳。フィンガー家5人兄弟の長男。僕(170㎝)より5㎝ぐらい背が高い。
痩せ型で昔のアメリカの映画の農夫みたいな人。
火系の魔法使い。剣はあんまり上手じゃないけど、リーダー的存在。
ミッツ・フィンガー
25歳。フィンガー家の次男。この世界で初めて会った人。
2mぐらいある大男。ヒゲがモサモサで体格もいいから、最初に見たとき熊かと思った。ミッツがいなかったら僕とミーユは森で魔物に食べられちゃってたかもしれないから、命の恩人。
狩りが得意。兄弟で1番弓矢が上手い。水系の魔法使い。
農園の1番端に住んでる。
マーサー・フィンガー
23歳。フィンガー家の三男。僕よりちょっと背が高い。
最近気付いたけど、兄弟で1番不真面目な感じがする。
風系の魔法使い。魔法を使うとミッツよりも弓矢が上手い。
アーク・フィンガー
21歳。フィンガー家の四男。僕と同じぐらいの身長だけど、自分の方が高いって言い張ってる。
みんなでいるとあんまり喋らないけど、僕と剣や魔法の練習をしてるとめちゃくちゃ喋る。兄弟で1番剣術が上達してる。
土系の魔法使い。自分で石刀も作れる。土系の魔法を使った高速移動を考えた。あれはすごいと思った。
僕とミーユ以外では農園で1番強いと思う。もしかしたら、町から帰ってきたら僕より強くなってるかもしれない。
ミルク・フィンガー
19歳。フィンガー家の末っ子。よく喋る元気なお姉さん。
背はアリルよりちょっと低い。たぶん155〜160の間ぐらい。胸が目のやり場に困るから服装をなんとかしてほしい。
光系の魔法使い。全部で8属性ある魔法の中で1番珍しいタイプ。ジョージさんもミルク以外では1人しか知らないらしい。
兄弟の癒し係り。最近、光魔法で攻撃もできるようになった。
今年の秋に結婚が決まってる。おめでとう!!
アリル・フィンガー
25歳。カーズの奥さん。魔法使いじゃない普通の人。背は多分僕より10㎝ぐらい低い。
山向こうの村のもう1つ向こうの村の出身。町に行く途中で通るらしいからよろしくって言われた。
とても優しい人。今はカーズの子供を妊娠中で、みんなで助けてる。
セシリア・ミュンヒンガー
15歳。僕たちよりも3年前に、僕たちと同じようにミッツに森で保護された、ドイツ人の世渡り人。僕と同じぐらいの身長でスラッとしたモデルみたいな人。
純粋な世渡り人で、雷系と樹系の魔法が使えるけど、樹系は地味だからって言って使わない。
ミッツの婚約者。この世界では16歳で大人になるから、16歳になったらミッツと結婚する。おめでとう!!
ユキさん(坂本 雪絵)
38歳。14歳の時にこの世界に来た日本人。ジョージさんとは結婚してなかったけど、子供が1人いる。
元々ジョージさん達と農園に住んでたけど、結婚して町に引っ越したけど、魔法使い狩りが出て危ないからまた農園に引っ越して来た。
凍系の魔法使いだけど、飲み物を冷やしたりするぐらいしか使わない。
サラ
19歳。ユキさんの娘。ミルクより少し痩せてる。背もミルクと同じぐらい。
めちゃくちゃ美人。昔ミッツ達がサラさんを巡って大ゲンカしたことがあるらしい。
樹系の魔法使い。最近魔物狩りをするようになったばっかりだから、カーズ達と比べると魔法はまだ弱い。
もうすぐミルクが結婚するから、私も早く結婚したいってよく言ってる。
ジョゼフ
コセ・シティの商人。46歳。町のことやこの世界の魔法のことを教えてくれる人。
背はカーズよりも高いから、たぶん185㎝ぐらいありそう。商人なのに力も強そうな雰囲気がある。
風系の魔法使い。昔ジョージさんと出会ったことがあって、その時にいっぱい修行したから魔法も強いらしい。
ジョージ・フィンガー(指方 丈司)
43年前にこの世界に渡ってきた元日本人。カーズ達のお父さん。5年前に病気で亡くなった。もしこの世界でまだ生きてたら60歳ぐらいだけど、実は日本では平成生まれで僕と7歳ぐらいしか違わない。この世界に渡ってくる時に時間も超えてるらしくてそういうことが起こるらしい。僕には難しくてよくわからない。
チーレムになりたくて頑張ってたけど、最後は田舎で農園を開拓して生活してた変わった人。
めちゃくちゃ浮気性で、奥さんにも逃げられた。
魔法は最強だったらしい。火系と樹系と水系の3属性持ちの魔法使い。
フィンガーっていう苗字は本名の指方からとった。この世界にはまだ苗字を名乗ってる人はいないらしいけど。
ノタム
今日、山向こうの村から農園の助っ人が村に着いたって知らせてくれた人。歳は知らないけどたぶん僕と同い年ぐらい。
着いたのが日が暮れる頃だったから、今日はカーズの家に泊まってる。
町から来た助っ人は3人で、みんな若い人らしい。カーズ達も喜んでた。
明日、初めてこの農園を出る。ここで出会ったカーズ達が良い人で本当に良かったけど、町にはどんな人がいるかわからないから本当は怖い。ミーユも、最初は帰りたいってよく泣いてたけど、カーズ達が良い人ですぐに慣れてあんまり泣かなくなったし。でも、町で怖い人に会ってミーユがまた泣いたりしたらどうしよう。
それでも、僕たちは行かなきゃいけない。町に行く理由は町に魔物が出るようになった原因を調べに行くんだけど、僕は魔法使いの研究所みたいな所があるからそこで元の世界に帰れるヒントがないか探しに行く。
ミーユは帰してあげなきゃいけない。ハナさんも絶対心配してる。怖いけど、僕が頑張らなきゃ。
いつも【勇者でもないのに魔王を倒してしまって申し訳ありません】をご閲覧いただきありがとうございます。
この話の投稿予約をしているのが12月の初週なのですが、年末年始が多忙なのと、第2部の書き溜めを大きく手直ししているため、次話の投稿が数週間から数ヶ月遅れる可能性があります。出来るだけ間を空けずに投稿しようと思っていますが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
こんな思い付きから書き始めた話で、タイトルも一昔前の流行りのような感じで、読んでくださってる人なんていないだろうと思っていましたが、ブックマークや評価をしていただいているようで、本当にありがとうございます。読んでくださっている方がいらっしゃると思うだけでも、とても励みになります。ありがとうございます!!
これで第1部が終了となり、第2部からはいよいよレンとミーユが異世界の町へと旅立ちます。これから2人にどんな出会いがあるのか、どんな困難が待ち受けているのか、タイトルの結末はちゃんと回収できるのか!?などなど、今後の展開をお楽しみにお待ちくださいませ。
誤字・脱字、矛盾点等ありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
2021.12.3. ZIRO




