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イザヤではありませんでした。
「イザヤではありませんでした。」
ヒョウは嘘をついた。
南は真っ直ぐにヒョウの目を見る。ヒョウは目をずらさない。
「……分かった。そうなんじゃないかとは思っていたんだ。それにしてもよかった。もし西だったら気球を飛ばすことも難しくなるからね。」
唯一の地上にでれる穴があるのは西だけだ。
その所有主に気球を壊されてしまっては元の子もない。
「あの、南さん。」
「何だい?」
「北の頭首の所から持ってきた本、とうとうバレてしまって。怒りはしないから早く持ってこいとイザヤ越しに言われました。ので、北の所に行ってもいいですか?」
「君は……いい子だねぇ。」南は近所のお爺ちゃんのような口調でノホホンと言う。
「無断で他国に行ってしまって、イザコザを起こすバカもたくさんいるのに、君はいい子だ。」
「……ありがとうございます。」ヒョウは誰かさんのように、薄っぺらい笑みを浮かべた。




