暗闇の邂逅
自体は急展開を迎える(テレビ演出風)
シュウジは1人で学園からの帰路についていた。
夕日はすでに沈んで、夜の闇が街全体を包む。
人々はすでに家に帰り着いて、家族と夕食を食べて笑っている。
「すっかり遅くなってしまったな」
明るい民家の窓を見ながらシュウジは呟く。
それでも急ぐことなく一歩一歩家に向かって歩く。
シュウジの家は街の外れにある。
家賃が低いことが売りの地区だ。
当然、治安もそこそこ悪いがそれでもスラムよりは比較的安全だ。
悪事を働く人もスラムに流れる。
「はぁー。今日も駄目だったか・・・」
シュウジの独り言だ。
今日遅い帰りになった理由でもある。
また、学園に1人で残って聖術の訓練をしていたのだ。
「ま、訓練といっても精神修行だけど・・・」
普段着より学生服の方が身が入る気がして、そのための学園だ。
しかし全く出来ない。
何が足りないのか。
「もうできていても良い頃だ、か」
マリーもロバートも言う。
だが、現実にはできていない。
それは何を意味するか。
自分で分析する。
そして一つの可能性を考える。
「俺ってやる気ないのかなぁ~」
自分の凡才さに気がついてしまいそうで。
そういってため息をつく。
「ま、考えたってしょうがない。今日は帰ってゆっくり風呂でも入ろう」
そう呟いたとき音を聞いた。
爆発音だ。
「なんだ!?」
シュウジが驚いて身構える。
「この先か!?近い!!」
シュウジは爆音のほうへ向かう。
腰を低くして、しかし速やかに。
何が起こっても対応できるようにと。
先を進み、一つ角を曲がる。
すると影が見える。
「・・・ッ!!」
見えるのは2つの影。
1人は血を流して横たわっている。
もう1人は、その横たわっている影の傍で立っている。
立っている影は黒い布をまとって顔が見られないようにしている。
まさかロバートが会ったという殺人犯か!?
シュウジはそう直感した。
ただ、この状況をどうするかだ。
そのままシュウジはその光景を傍観していた。
「間に合わなかったか・・・」
そう呟いた。
高い声だ。
少女か?
シュウジはそうは予想した。
が、たとえ少女であってもロバートが聖術で捕らえたのに取り逃がした相手かもしれない。
聖術者としてそれなりの力があってもおかしくはない。
そんな相手と一対一でどうにかなるのか?
どうにもならないとシュウジは思う。
出て行ってしまっては相手次第で殺されるかもしれない。
いっそここから逃げてしまおうとまで思う。
誰かにこのことを伝えよう。
そうすれば義務は果たせる。
市民としての、この街で暮らせるための義務だ。
「うっ、うう」
横たわっている男が目を覚ます。
少女は驚いて2歩下がる。
「まだ生きてるのか・・・ハハ。ん、誰かいるのか?」
低くてかすれた男の声だ。
暗くてよく見えないがどうやら虫の息だということは分かる。
「誰だ?さっきの女か・・・?」
影は答えない。
ただ沈黙を守り見下ろしいる。
「違うか・・・。だが死体は・・・見慣れているようだな。ならば・・・頼む・・殺してくれ。もう・・・助からない」
そうって男は影に手を伸ばす。
影は頷いた。
「ありがとう。顔を・・・見せてくれないか?最後のお願いだ。俺が親切を受ける・・・資格なんてないんだが、最後の親切を心に刻んで・・・逝きたい」
影がナイフを取り出し屈んだ。
そして頭の部分の布を取る。
その下に見えるのは金髪。
「おお・・・美しい。俺に天使が迎えにこようとは・・・。それとも女神か?」
「どちらでもない。私は人を殺せる心無いただの女よ」
「なら女神だな。聖なる術を使う女神」
「女神だったら貴方の命を助けられたかしら?」
「助からない。どうあっても俺はここで死ぬんだ。だがお前に救ってもらえる。そういうことにしておけ」
「・・・分かった。さようなら」
ナイフが男の首を切る。
鮮血が散る。
「この血が私の道しるべなのだから、私は・・・」
その先の言葉はない。
少女はそれから立ち上がった。
その時チラッとシュウジは見た。
シュウジは目を疑う。
その影は・・・
「・・・マリー?」
思わず口に出してしまう。
その呟きは影の耳に届いてしまう。
そして驚いてシュウジの方向へ顔を向ける。
「!?」
その先にいるシュウジと目が合う。
「シュウ・・ジ?」
影は驚いたように目を見開いた。
シュウジはその顔を確り見た。
確かにマリーだ。
「マリー。何してるの?」
その問いかけにより、マリーは驚いた顔から真顔になる。
「見ての通り、この男を殺したのよ」
「どうして!!」
どうしてここにいるのか?
どうしてそんな格好をしているのか?
それじゃあまるで例の殺人犯みたいじゃないか・・・!!
対してマリーは冷静に答えた。
「貴方には関係のない事よ。聖術も使えない貴方にはこのことに関わる資格すらない」
「!?」
シュウジは息が詰まる。
なにも言い返せない。
もしこの件に関わるなら、聖術が唯一といっていいほどの護身方法だろう。。
もしくは聖術に対抗できるなんらかの技術。
2つともシュウジには無いものだ。
マリーは顔に布をかぶせて再び顔を隠した。
「サイレントコール」
途端にシュウジの視界が消えた。
先ほどまで見えていた2人の影も、町の街灯も、街自体も見えなくなった。
「!?」
驚き戸惑うシュウジにマリーは話しかえる。
「私に口出ししないで」
シュウジはその言葉を聞いた後に腹部に衝撃が走る。
「がはっ!!」
シュウジはその場で腹部を押さえながら膝を突く。
膝を突いて倒れそうになっている途中のシュウジのこめかみに蹴りを食らう。
その反動でシュウジは飛ばされ、間近にあった壁に頭を激突させて倒れる。
その時点で意識も殆どなくなっていた。
倒れこんだシュウジに対してマリーはナイフを構えて振り上げる。
「さようなら・・・友達だった人」
そういってマリーはナイフを振り下ろした。
だが、振り下ろされる前にシュウジの意識はなくなっていた。
マリーの最後の言葉はぼんやりと頭に残して。
暗い夜道に気を付けようというお話




