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74.登校と出迎え

それから。


多分、私が落ち着くのを待ってから、トラン様は口を開いた。

「話を変えてしまうが、他に、急いで伝えないといけない件がある」

「はい」

大丈夫、もう、普通に答えることができそうだ。


「昨日、ポニーのところから連絡があったんだ。スミレ・ヴァイオレット嬢と一緒に、今日から学院に戻って来られるそうだ」

「え」

今日?


「その方が、お互いに周囲の注目を分散できて都合が良いと、スミレ・ヴァイオレット嬢が判断したようだ。きみに何があったか伝わっている。ランチを一緒にとも誘われた。部屋は手配する。どうだろう」

「はい。是非。大丈夫です、が」


「が?」

「スミレ・ヴァイオレット様、私のことはお好きでは無いと思うので、ランチご一緒でも良いのでしょうか・・・」


「向こうからの誘いだ、問題ない。俺もいるし、ポニーもいる。大丈夫だろう」

「はい」


「ではランチは応じておく。それから、出迎えを頼まれたんだ。きみが無理なら俺だけで行く。恐らく、注目を分散という意味で、俺ときみがそろって二人を出迎えた方が良いと判断したんだろう。どうする?」

「・・・よく想像できないので、ご一緒して良いですか?」


「分かった。かなりギリギリに来る予定だ。こちらもできるだけギリギリに出迎えよう」

「はい」


「それから。また急に話を変えてしまうんだが」

と、トラン様が笑ってくださった。

「はい」

笑ってもらえると私も安心できる。自然と笑顔になれる。


トラン様が、少し首を傾げた。

「実は、きみたち家族をどこの貴族が支えているのか気になっている。きみ、例えば、自分自身の生活費は誰から貰っているんだ? 定期的に接触があるのか?」

「いえ、生活費は、寮の管理人さんから月々のお小遣いとして貰っています。寮の費用は、管理人さんに直接払ってくださっているそうです。制服とか教科書は、一番初めに支給して貰いました」


「ということは、きみはその貴族に会っていないのか」

「父が亡くなった時、一度・・・。今思えば、あの人は、貴族じゃなくて使用人の人だったのかもしれません。あとは馬車とか、言われるがままで、ここに来ました」


「・・・恐ろしいな。人攫いだったらと思うとゾッとする」

「町では、善意しか知りませんでした・・・」


「なるほど。・・・なら、ご家族の方は? 誰が生活費を持っていくんだ」

「私はずっと家に帰って無くて、分かりません」


「え? 大丈夫か?」

「帰るにはちょっと遠いんです。2つぐらい東にある町です。この学院、休みとかないですから」


「まぁな。休みたければ勝手に休めばいいだけだからだが」

「あ、なるほど・・・」


「ご家族とやり取りとかどうしてるんだ?」

「3ヶ月に一度、レポートを先生に出してるんです。その時に、家族への手紙を預かってもらえます。返事も先生から貰っています」


「大丈夫か?」

「え?」


「本物か? 間違いなく家族の字か?」

「えーと。まだ弟も妹も小さいので、近所の人に代筆をお願いしているはずです。でも絵も入っていて、やっぱり弟と妹のだと思います」


「そうか・・・なぁ、誰がきみについているか、調べても構わないか? 迷惑をかけるようなら手を引くと約束する。とりあえず、きみのご実家に使用人をやっても良いか? 様子を見て来れるし、手紙も持って行かせるぞ」

「本当ですか? それは、嬉しいです」


「正体を調べるな、とか言われていないよな?」

「そんな話は無いです。気の毒だからって、善意からの提案だったんです」

なのに学院には悪意が溢れていましたけど。


「分かった。なら、すぐに手配しよう」

「ありがとうございます! あ、じゃあ早速手紙を書きたいです!」


「あぁ、なら、3日後に出発予定にしよう。それまでに手紙を用意してくれればいい」

「嬉しいです。本当に有難うございます!」


テンションが上がってニコニコしたら、トラン様が目を細めて嬉しそうだった。


***


ジェイさんに時間を告げられて、トラン様と並んで、ポニー様とスミレ様の出迎えに。

鞄はトラン様の使用人の人が持ってくださった。出迎えだから手ぶらの方が良いそうだ。


トラン様と一緒に部屋を出る。前、それから後ろに使用人の人たちが歩いてくれて、緊張する。

私のクラスがある棟に行く間に、いろんな人たちが私たちを見てそこかしこで話題にしているのが耳に入ってくる。


『骨』とか『血の池』とか怖い単語も。え、嘘だよね? 骨見えるまで齧られてた? 嘘だ嫌だ!

ゾッとして思わず腕をさすってしまう。


あ。『トラン・ネーコ様』『泣かれて』とも。

チラ、と横をばれないように見上げると、同じようにチラ、と私を見て来られたところだった。

「!」

瞬間、バッと視線を逸らすトラン様。

小さく低く唸っておられる。顔が少し赤い。


私もつられて赤くなった。


***


指定の場所に到着。

数秒後、馬車がギッ、と停まり、扉が開けられ、ポニー様が降りて来られた。


お久しぶりです・・・!


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