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37.ミルキィ・ホワイト様。そして廊下。

午後の授業。今日は美術。

人物を描く、というので、今日は先生が私たちの先輩に声をかけ、特別にモデルに来てくれた人を紹介した。


「ミルキィ・ホワイト嬢だ。大変美しい絵を描かれる。今日はきみたちのために無理を言って参加していただいた。この白磁のような肌! 良いか、きみたち、心して、この方の美しさをいかに表現するか、筆に尽くしたまえ」


先生は若い男性だ。

ミルキィ・ホワイト様は、先生がこんな風に褒めるぐらいに綺麗な人だ。独特の神聖さがあるというのか。

とはいえ、先生、ミルキィ・ホワイト様に好意を持っているのかな。

と思ったのは、きっと私だけでは無いはず。


ミルキィ・ホワイト様は、恥ずかしそうに少し頬を染めて、私たちに軽く会釈した。


「この方を描くにあたって、知りたい事柄があればいくつか質問する事を許可しよう」

先生が偉そうだ。


皆がざわついたが、遠慮したようで誰も発言しない。


「誰もいないのか?」

と言ったので、一人の男子生徒が手を上げて立ち上がった。


「僕たちのクラスに絵のモデルとして来てくださり、感謝申し上げます」

顔が赤くて、その子の目はキラキラしている。


ミルキィ・ホワイト様は笑みを返された。


それだけで男子生徒は胸を押さえて感激したようだ。

着席。

他の皆も同じように顔を少し上気させてざわめいた。


「さぁ。では貴重な時間を大切に使わなければならない。今日は私も描かせてもらうぞ。それぞれすぐ準備しなさい。・・・ミルキィ・ホワイト嬢、どうぞこちらに。この椅子におかけください」

先生が恭しくミルキィ・ホワイト嬢を促した。


「お伺いして、良いですか?」

私はどうしても気になって、傍にいる、多分年齢の違うクラスの女の子にそっと声をかけた。

その子はギョッとした。

「何よ」

「ミルキィ・ホワイト様、とてもお綺麗ですから、どなたと婚約されているのでしょうか」

うん。悪役令嬢なのかなと、思ったのだ。飛びぬけて顔立ちが整っているから! 攻略対象者が飛びぬけて顔の作りが良いのと同じに、悪役令嬢の人も、美人だったり、服とかも他の人と違う風に特徴がある。


「まぁ、そんな事もご存じないの」

その子は馬鹿にして笑った。

「はい」

「ミルキィ・ホワイト様は、メーメ・ヤギィ様と婚約されているのよ。お似合いよね!」

「なるほど。有難うございます」

「ふっ!」

その子は去っていく。ちなみに、私への対応は基本皆こんな感じだ。

馬鹿にしつつ、聞いたことは教えてくれる。親切ではあるけど、意地悪でもある。


でも教えてもらえてよかった。

そうか。

メーメ・ヤギィ様の婚約者の方か・・・。

乙女ゲームにいなかったと思うメーメ・ヤギィ様。だけど、婚約者のミルキィ・ホワイト様も間違いなく他の人とは違うキレイさを持っている。

つまり、やっぱりメーメ・ヤギィ様は攻略対象者で、ミルキィ・ホワイト様は悪役令嬢なのでは。


別に違っても良い。

重要なのは、私、ミルキィ・ホワイト様からも嫌がらせ受けるのかな、それは嫌だな、受けませんように、と切に願うだけなのだ。


***


授業は黙々とすんだ。

とはいえ、90分間では、きちんと絵を仕上げられない。

一方、教師はそれなりに整えているのが流石だ。


絶対先生、ミルキィ・ホワイト様に気があるよね・・・。良いのかなぁ。

先生はミルキィ・ホワイト様にモデルに来てくれたことについて重ねて感謝を述べていた。


ミルキィ・ホワイト様は笑んでおられた。

だけど、一度も話されなかった。話すのが苦手なのかな? それとも、身分があって気安く声を出すのはダメ、とか?

そういうルールがあっても私には分からない。


***


放課後、今日の部活は無し。

毎日するのも負担になるだろうし、今日は実際教えることができるレオ様のご都合が悪いそうだ。

モモ・ピンクー様との婚約をどうするかの話があるものね・・・。そりゃ、私の部活なんて見ている場合じゃないと思う。


自分一人でテニスを練習できるレベルでもない上、トラン様のお守りを進めたいから、今日はすぐに寮に戻ろう。


***


ルティアさんが馬車で送ってくれて、一緒に寮の自室へ。

その途中であれ、と気付いた。


廊下、一部分だけ、妙にピカピカ輝いている。

何か零したのかな。


自室に向かいながら床を見つめる。

ルティアさんが、

「天井も」

と呟くので天井を見れば、茶色いシミが転々とついていた。


天井なんて今までちゃんと見て無かったけど・・・。

「新しいものですわ」

とルティアさんが小さな声で私に教えてくれる。


私とルティアさんで視線を交わして、自室に向かう。


自室は何も変わらないみたい。


「役に立っているようで何よりですわ」

ほっと息を吐いて、ルティアさんがそう言った。


多分、昨日トラン様が買ってくれたお守りが、ちゃんと仕事をしてくれたんだろう。そう思える。

そうか。

やっぱり、必要な状態だったんだ。

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