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【二巻発売中!】追放された勇者の盾は、隠者の犬になりました。  作者: 家具付
第一章 いかにして盾師は隠者の犬となり、元の仲間と決別したか
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突入(1)=対象物はよく見ましょう

到着した砦の前。砦の周辺は活気づいている。

おそらく結婚式で浮かれ騒いでいるのだろう。

遠眼鏡で確認していれば、何やらアリーズたちが作戦に対して文句を言っている。

順番に連続攻撃、という作戦ではなく、自分たちを中心にしろと言っているらしい。

賭けをしているから、おれが出る前に扉を壊したいんだろう。

気持ちはわからないでもないが、遠眼鏡で確認したおれは。


「あいつらばかだなー」


というしかない。扉はそれ自体が結構頑丈な鉱石を組み合わせて作られているし、攻撃を加えて壊すなんて、四人だけじゃ無理だ。

扉には何か書かれているらしい。読めないけど。

しかし読めている人達は、すごい難しい顔でどうするか相談している。

中身をディオに聞く事にした。


「あそこ何の意味書かれてんの」


「俺も詳しくは読めないが、不可侵の結界の強さなどと警告文らしい」


「何で読めないの」


「遠眼鏡を持っていないから読めない」


「たしかに」


この距離からだと遠眼鏡なしには文字が読めなかった。

アリーズたちも遠眼鏡で確認してはいるらしいが、自分たちを一番にしろとうるさい。

ほかの奴らがあきれ果てている。


「あれだぞ」


結構上の騎士が、扉を指さして言うけど、アリーズは胸を張る。


「私たちは階位=三以上の術を武器に付加している! 攻撃は効果がある! 私たちならあの扉を壊せるから一番にしてくれ!」


「わたしたちは暁夜の閃光よ! 上位冒険者よ! これ位壊せるわ!」


続いたミシェルの自信過剰な断言。その後のマーサの、勝手な意見とシャリアの無言の圧力。


「早くしなければあちらも私たちに気付いて、防御を固めてしまいますよ。急いで決断してくださいな」


「……」


騎士たちの忠告も何のそのだ。

しかし扉はその素材だけでもかなりの物。壊すのは手間だし、侵入しようとしても扉に弾かれるのは、さっき入ろうとした潜入組の失敗で明白。

どう失敗したかといえば、商人のふりをして入ろうとして、おれたちが隠れている所まで吹っ飛ばされてきた。なかなかすごい光景だった。

砂の賢者の言う通り、侵入目的で入ると、扉に弾かれるのだろう。

それを騎士たちも分かっているから、数でどうにかしようとしているのだろう。

しかしすさまじく言い争った結果、アリーズたちが動けなくなったら、次を投入しようという事になったらしい。

争う時間が惜しかったようだ。

騎士たちにとって結婚式前に姫を救出したいのに、こんなわがまま放題の奴らに付き合わされるのは腹立たしいだろう。

わかる。すごい分かる。言わないけど。

そしてアリーズたちはさっそく突進していった。

マーサが幾重にもアリーズたちの攻撃力を強化させている。

強化されたミシェルが扉に蹴りを加える物の、びくともしない。

どころか痛みが自分に跳ね返ってきたらしい。

地面に打ち付けられて悶絶している。

続いてアリーズが剣を魔力で大きくして叩きつけるも、叩きつけた途端剣の魔力は霧散して、ぽっきり折れた。

そしてその衝撃でアリーズの腕が、あらぬ方向を向き、彼学問の声をあげてのたうち回る。

マーサが二人とも治癒しているが、何度やっても結果は同じだろう。

シャリアは術を使おうとしているらしいが、うまくいかないらしい。詠唱の時に回る魔法文字がぐちゃぐちゃの輪郭だ。あいつどうしたんだろう。


「さすが不可侵の結界だな、階位=三以上の術が付加されても効果なく、自分に跳ね返ってくるのか」


分析する隣。おれに対しては、どうするつもりだと言いたそうだ。

事実目の前で繰り広げられる、扉を壊そうとして失敗する間抜けたちに気付いた砦の中の住人達が、ざわめき始めている。

四人のそんな……ぶざまというようなありさまに、騎士たちが顔を覆った。

ほかの冒険者たちもだ。

そんな時。

にやりとしたのは、アリーズたちと同じ馬車で来た奴らだ。

そいつらは、言う。


「そこの盾師はたしか、彼等と扉の攻略で賭けをしていたよなぁ?」


「してたけど?」


「だったらお前も行くべきだろ? それとも、騎士や俺たちが扉を何とかしてた最後に、扉を殴って壊す予定だったのかなぁ? 殴るしか能のないおちびちゃん?」


おれを怒らせたいらしい。

だが。

これで怒る俺ではないし、騎士たちがそいつらを止めようとしている。

だが彼らはやれと口々に言う。オーガの混血だから、何を言ってもいいと思っている調子だ。

うるさい。

やらないなんて言ってないだろうに。

これでは作戦どころかチームワークすら皆無で、この姫君奪還は夢のまた夢になる。

おれは肩をすくめて、隣のディオを見た。


「うるさいから一寸行ってくるわ」


「作戦か何かは」


「扉とその周りの外壁で大体わかった」


「は?」


おれはんじゃ、とディオに耳打ちした。


「それをやるのか?」


「そ。その顔は信じてないだろ。おれさ、おれの事ただの打撃野郎って勘違いしてるやつら、ぎゃふんて言わせたいんだよね」


おれは盾師で守るものだ、攻撃は二の次なのに、それを言って馬鹿にされるゆえんはない。


「盾師である事、馬鹿にされるのすげえ腹立つんだわ」


おれは言いながら歩きだす。

歩いて、扉の前まで行けば、やっぱりデカい扉でしかない。

背丈の三倍。おそらく威容を見せるためってやつだろう。

人が出入りするためだけなら、こんな大きくなくていい。

おれは、魔力も空っぽで伸びている四人を見た後、扉に手をかけた。


「はぁっ!」


そのままおれは……扉を“開けた”。

扉は引き戸式だった。

開けたおれは、それを固定するべく、中に飛び込んだ。

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