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外に買いに行く? 自分が? 自身で? わざわざ?
灰皿も無いし奴隷もいない。今日は厄日か? いや、毎日厄日だ。みんな死ね。全員死ね。
「酒持ってきやがれ!」
家に響く声。潰れたカエルみたいな声だ。気持ち悪い。誰の声だ。こいつも死ね。
駄目だ酒が切れると落ち着かない。やっぱり買いに行こう――
「あー……」
財布に七円しか入っていない。今度こそ庭に投げ捨てて、拾いに行かない。庭も汚い。部屋も汚い。ごみ屋敷みたいだ。嫌な臭いがする。そういえば風呂に入っていない。いや、お湯が出ない。違う、水が出ない。ガスが止まっている。電気も来ていない。
これは何のせいだ。あいつのせいだ。もう三か月も帰ってきていないあの女が金を払っていないからだ。どっかで野垂れ死ね。酒だ酒、とりあえず酒。
包丁が目に入る。錆びついた出刃包丁。これ持って酒屋に行くか……? そうだそれが良い。酒をくれやと頼みに行くだけなんだから。たまたま右手に包丁を持っていただけであって、何もやましいことはない。
「あ? なんだこれ」
玄関のドアノブに紙が貼り付けてあった。
その場に座り込んで紙を拡げる。
揺れている。なんで揺れている? ああ、そうか、手が震えているからだ。どうして手が震えている? 酒が切れているからだ。
「あー……『昨日はこの子の七歳の誕生日でした』……?」
その文から始まる手紙には、以下のようなことが記されていた。
つまり妻は、子供を連れて出ていったらしい。七歳の誕生日を機会として。
「そうか……そうか」
灰皿はもう帰ってこないらしい。
そうか。
出刃包丁を勢いよく壁に突き刺した。柱が軋み、埃が舞う。
死ね死ね死ね。みんな死ね。
この世のすべてに呪詛を吐く。
死ね死ね死ね死ね、死ね死ね死ね。
※
「できました!」
「おお、すごいすごい」
一週間かけてジグソーパズルを完成させた西野の方を見もしないで、至極適当な返事を返す。
こちらはまだ思案中なのだ。全然良い案が見つからない。西野家はどう揺さぶったらコイツを引き取ってくれるのだ。もう良い加減面倒になってきたぞ――育児が。
その後も、思いついたこと思いついた順番に話す西野の言葉に、やはり適当な相槌を打ちながら、俺は考え続けた。
――すっかり古くなった、背中の火傷跡を無意識に掻きながら。




