evidence 4「家族力は53万です」
そして翌日、朋美の二日酔いと俺の頭痛が治った朝。
今日は木曜日、タイムリミットまではあと七日。
朝飯を食いながら、俺は榎本さんをなんとか勧誘する戦略を立てているのだが。
「全く浮かんでこない…」
「何が?」
と、俺の呟きに反応した向かい側のイスに座ってるのは、
土方夏海。中三。俺の妹であるが、文化系なうの俺とは違ってバリバリの体育系なう。
中学のソフトテニス部に所属していて、そこそこ強い。
「なんでもねーよ。朝練あんだろ? さっさと食っちゃえ」
「…あ! 昨日言ってた転校生の子のことでしょ?」
―なぜわかったし。
動揺を隠しつつ、トーストをかじろうとした直前、
「ついにお兄ちゃんもリア充か…」
「ぶっごふっごふぅ!!」
いきなり何を言い出すかこの妹は。
「そそそそんなわけないだりょ!?」
「わー…すっごい動揺してる…」
くすっ、と夏海は笑みを漏らし、トーストにかじりつく。
「想介もついに夏海に負かされるようになったか…うんうん」
そしてキッチンから会話に参加、母・朋美。
「母さん…勝ち負けうんぬんじゃなくて…」
「お得意の女の勘だろうな…ふぁっ」
と、あくびをしながらリビングに登場&会話にログインしたのは、
土方航輔。四十三歳。髭と黒ぶちメガネの似合う父親。
出版社で働いていて、雑誌の記事を手掛けたりしている。
「母さん…女の勘って…誰にでもあるもんなの?」
「んーそうねー…やっぱり個人差はあるけど、土方家のそれは特に強いわね」
なにその裏設定。
「ていうかパパ、起きるの遅いよ。あたしもうすぐ行っちゃうよ?」
「しょうがないんだって…明後日まで仕上げる記事もあるし、編集長にもねー…」
「出版社か…」
メディ研とけっこう関係のある感じするよな。
「部活のほうはどうだ、想介?」
「あいにく暗礁に乗り上げて沈没寸前」
朝のリビングで放つにはかなりブラックな感じがしたが。
ブラックジョーク(?)に苦笑いしつつ、航輔は続ける。
「…そうか、まあ行き詰まるのは誰にでもある、それに、」
「「諦めなければ活路は必ず見出だせる」」
と、朋美と夏海が続けた。
見事ユニゾンした二人は、カウンター越しにハイタッチ。
そう、これは。
土方家の家訓というか、そういう感じの言葉である。
この言葉を胸に焼きつけて、俺たちは毎日生きている。
何が起こるのか、誰が立ちはだかるかわからない人生。
だからこそ気が抜けないし、かつスリリングで魅力に溢れている。
常に意識にしているが、改めてその言葉の意味がわかったような、そんな気がする。
「…よし」
メディ研を絶対に潰させやしない。
とにかく、悩んでちゃ始まらないな。
朝食終わりの、七時半。
後から出るという航輔を置いて(?)、俺と夏海は道を歩いていた。
「…お兄ちゃん」
突然夏海は口を開いた。
「なんだ?」
「…がんばってよ」
ポニーテールを揺らして、ちょっと恥ずかしそうに言う姿に。
なんとなくドキッとしてしまった。血の繋がった妹だけど。
「おう!」
To be continue...




