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えびでんす。  作者: 紅アルペジオ
始まった、春
4/22

evidence 4「家族力は53万です」

そして翌日、朋美の二日酔いと俺の頭痛が治った朝。


今日は木曜日、タイムリミットまではあと七日。


朝飯を食いながら、俺は榎本さんをなんとか勧誘する戦略を立てているのだが。


「全く浮かんでこない…」


「何が?」


と、俺の呟きに反応した向かい側のイスに座ってるのは、




土方夏海。中三。俺の妹であるが、文化系なうの俺とは違ってバリバリの体育系なう。


中学のソフトテニス部に所属していて、そこそこ強い。


「なんでもねーよ。朝練あんだろ? さっさと食っちゃえ」


「…あ! 昨日言ってた転校生の子のことでしょ?」




―なぜわかったし。




動揺を隠しつつ、トーストをかじろうとした直前、

「ついにお兄ちゃんもリア充か…」


「ぶっごふっごふぅ!!」


いきなり何を言い出すかこの妹は。


「そそそそんなわけないだりょ!?」


「わー…すっごい動揺してる…」


くすっ、と夏海は笑みを漏らし、トーストにかじりつく。


「想介もついに夏海に負かされるようになったか…うんうん」


そしてキッチンから会話に参加、母・朋美。


「母さん…勝ち負けうんぬんじゃなくて…」




「お得意の女の勘だろうな…ふぁっ」


と、あくびをしながらリビングに登場&会話にログインしたのは、


土方航輔。四十三歳。髭と黒ぶちメガネの似合う父親。


出版社で働いていて、雑誌の記事を手掛けたりしている。


「母さん…女の勘って…誰にでもあるもんなの?」


「んーそうねー…やっぱり個人差はあるけど、土方家のそれは特に強いわね」




なにその裏設定。




「ていうかパパ、起きるの遅いよ。あたしもうすぐ行っちゃうよ?」


「しょうがないんだって…明後日まで仕上げる記事もあるし、編集長にもねー…」


「出版社か…」


メディ研とけっこう関係のある感じするよな。


「部活のほうはどうだ、想介?」


「あいにく暗礁に乗り上げて沈没寸前」


朝のリビングで放つにはかなりブラックな感じがしたが。


ブラックジョーク(?)に苦笑いしつつ、航輔は続ける。


「…そうか、まあ行き詰まるのは誰にでもある、それに、」




「「諦めなければ活路は必ず見出だせる」」




と、朋美と夏海が続けた。


見事ユニゾンした二人は、カウンター越しにハイタッチ。




そう、これは。




土方家の家訓というか、そういう感じの言葉である。


この言葉を胸に焼きつけて、俺たちは毎日生きている。


何が起こるのか、誰が立ちはだかるかわからない人生。


だからこそ気が抜けないし、かつスリリングで魅力に溢れている。


常に意識にしているが、改めてその言葉の意味がわかったような、そんな気がする。


「…よし」


メディ研を絶対に潰させやしない。


とにかく、悩んでちゃ始まらないな。







朝食終わりの、七時半。


後から出るという航輔を置いて(?)、俺と夏海は道を歩いていた。


「…お兄ちゃん」


突然夏海は口を開いた。


「なんだ?」


「…がんばってよ」


ポニーテールを揺らして、ちょっと恥ずかしそうに言う姿に。


なんとなくドキッとしてしまった。血の繋がった妹だけど。


「おう!」





To be continue...


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