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えびでんす。  作者: 紅アルペジオ
始まった、春
3/22

evidence 3「存続の危機…! 」

写真。


それは我々が普段意識していなくても、日常に溶け込んでいるもの。


雑誌や新聞、教科書、CDのジャケットとか。


身近であり、かつ芸術的な側面も持ち合わせている。


「じゃ、行ってくるわ」


玄関でそう告げると、朋美から「うぃー…」と力無く返ってきた。


…そういえば昨日家飲みしてたよな。


酒弱いのに日本酒なんか飲んで。


「ふう…」と溜め息をついて、ドアを開けて、家を出る。


「…二日酔いに効くの買ってくるか」







スーパーまではそんなに遠くないから、徒歩で行くことにした。


それに、ゆっくり歩いたほうが被写体も見つけやすいし。


「とは言っても…すぐに見つかるもんじゃないしな」


近所の公園に寄ってみると、小学生たちが遊んでいた。


俺にもあんな時代があったもんだ…とか考えてみたり。


「ここの桜もまだ咲いてないな…」


まだ蕾が多く、咲いているのはわずか。


空には、綺麗な夕陽が浮かんでいて、風景を橙色に染めていた。


「いいかも…」


毎年、同じサイクルで命を燃やす桜と、


ずっと変わらずに、空で燃える夕陽。


シンメトリーとアシンメトリーが同時に存在する、被写体を見つけた。


少し無理矢理な気がするが。


鉄は熱いうちに打て、と昔から言われている。さっそく写すことにしよう。


「このくらいかな…」


ピントを調節しながら、唸る。




カシャッ。




シャッターが切られて、瞬間が切り取られた。


「ふふ…」


今日はなかなかいい写真の撮れる日だ。


「精が出るな、土方」


突然俺に投げ掛けられた言葉。


その声の主は、ベンチに座って読書をしている。


「おう。珍しいな、篠原」


篠原奈々子。高二。我ら東雲高校メディ研の部長である。


強気で真っ直ぐな性格と、端正な顔立ちの黒髪のロングヘアーの女の子。


「てかなんでここで本なんか読んでるんだ?」


「古本屋で見付けたんだが…我慢できなくてな」


奈々子が手にしている本は、「速効!心理学入門〜マインドコントロール編〜」。


…なんか怖い。


「そんなの身につけてどうするんだよ…」


「いざというときの為の備えだ」


非常用にマインドコントロールを修得しようとする人を初めて見た。


なんというか、一見クールなように見えてどこかずれている。


それが篠原奈々子なのであって。


「あ…そうだ、土方」


奈々子が改まって俺を見る。


「ちょっとまずいことになってきた…メディ研のことなんだが」


「…どうかしたのか…?」


突然ふられたメディ研についての話。


奈々子の深刻な表情。


それらから、何かよろしくない事態が起こっていると察知した。


「話すぞ…いいな?」


「…ああ」



奈々子の表情が固くなる。



「…メディ研が潰されるかもしれない」


いきなり放たれた言葉に、一瞬息をするのを忘れた。


「潰される…って、廃部になるかもしれないのか!?」


「かも、じゃなくて…このままじゃ確実にだ」







そして、その後。


俺は半分放心状態になりつつも、なんとか平静を保ち、奈々子から話を聞いた。


簡潔にまとめると、


現在、メディ研の部員は二年生が三人。


部長の奈々子、副部長の俺、あと一人部員として奈々子と同じクラスの琴音。


去年は先輩たちが四人いたが、卒業したのでもういない。


そして一番重要な部分として。


学院側から正式に通達があったという。


「あと一人部員が入らなければ廃部を検討する」と。


最低でも四人在籍していなければ、部として活動していないとみなされてしまうということらしい。


「…理不尽だろ」


「全く同感だ。…だが下手に反抗すれば同じになってしまう」


とにかく、あと一人部員が入部すればいいんだな。


ならあてがあるじゃないか。


「それと、私たちと同じ状況に立たされている部があるんだ」


と、奈々子は再び話始める。


「ちなみにそれはどこなんだ?」


「軽音部だ。あっちも三人しかいないからヤバいらしいな」


おいおい。正哉も危ないんじゃないか。


どうりで昼間は必死だったわけだ。


「…私は学院側に非常に腹を立てている」


「おう。今すぐ校舎を灰にしてもいいくらいだ」


我々ノ活動ヲ邪魔スルモノハ等シク排除シマス。




―いかん、思考が無差別殺戮ヒューマノイドになるところだった。




「老害どもはスリーピースバンドを知らんのか…」


「そっちかいな」


てかなにも教師全員が老害でもないからね。


うちの担任の雨宮先生なんかまだまだ二十代の御姐さんだから。


「とにかく事情はわかった。心辺りがあるから、相談してみる」


「そうか…なら大丈夫だな。ちなみにあと八日がリミットだ、頼むぞ」




…おい。それって新入生への部活動紹介の前じゃねえか。


確実に捕まえなきゃ、終わる。







奈々子と別れて公園を後にし、スーパーの中。


「にしても…なんでこんなことに」


非常に頭の痛くなる話だとつくづく思う。


「牛乳と、二日酔いに効く漢方薬…」


精神的ストレスのせいか、頭がガンガンと痛む。


「うっ…頭痛に効くやつも買うか」


買い物カゴに市販の漢方薬をぶちこむ。


仮に廃部になってしまったら、俺はどこの部活に入ればいいのか。


「いやいや! まだ決まったことじゃない!」


とにかく諦めずに奮戦するまで。


なんとしても榎本さんをメディ研に入れなければ。




自分を奮い立たせ、そのままレジへと急ぐ。


夕方のスーパーは、安売りという名の主婦の心をくすぐる時間帯ゆえに混雑していた。


「ぃらっしゃせぇ…」


レジを担当しているのは、明らかにケバくてヤバそうな女性。


つーか女子高生?見たところ私立の生徒らしい。


バイトっぽいが、スーパーでとは珍しい。


「ひゃくよんじゅーえーん…」


あまりにも雑な手つきでバーコードを読み取っていく。


牛乳もカゴに捨てるように詰めやがって。


「…」


この切羽詰まっている時に。


俺は会計に朋美から預かった千円をバイトに渡す。


面倒臭そうに、かつ百円くらいちょろまかしそうな目付きでお釣りを渡される。


その瞬間、俺は舌打ちをかましてレジを離れた。


「マジイミフーウケルー」とか言われたけど、そんなの関係ない。




今の俺の状況下、イラつかせないほうが身のためだ。


気楽すぎて何も考えてないような奴は特にな。




To be continue...


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