誰も知らない部屋へ
伸はエレベーターに乗り、ボタンを押し3階で降りた。
そして廊下を歩き、304号室の前で立ち止まる。
伸はドアノブを握り手前に引いた。
すると鍵はかかっておらず、静かにゆっくりと開いた。
「ごめんくださ~い」っと中に向けて言ったが、反応は無く伸は中に入った。
部屋の中は暗く、携帯のライトを点け靴を履いたまま侵入した。
床はギシギシと鳴り、やけに寒気がする。
そう感じながら進むと目が暗闇に慣れ、ベランダの方へ向いている人間の背中が見える。
伸は驚きライトを向けた。
「お、お前誰だ!?」
その人物は振り向いたがガラスに反射する光で顔が見えない。
しかし体格からして、女性ではなく男性だと分かる。
その男は「俺のことをよく知っているだろ・・・林田伸」と言うと伸は意識を失った。
しばらくして伸はそのマンションの管理人にドアの前で起こされる。
「あんた大丈夫かい?」
伸はゆっくりと起き上がるとドアノブに手をかける。
しかし鍵は閉まっていて開かなかった。
「あの・・・ここは今閉めたのですか?」
「は?何言ってんだい、ここは空き部屋でもう1ヶ月はずっと閉めてるよ」
「そんな・・・バカな・・・」
伸はエレベーターに乗り、一階へ降りる途中さっきの男の声を思い出していた。
「あの声・・・どこかで聞いたことが・・・」
伸は携帯で3人へ部屋の事をすべて話した。
3人は唖然とした。
「私たちのこのチャットルームも304よね・・・それにその部屋にいた男って・・・」
「おそらく犯人かもな」
「ちょっと変な事言わないでよ!」
「でも、もしそれが犯人なら誰か確定するわね」
「うん。僕はそのマンションへ向かったんだ・・・となると、この4人の中で僕以外の男性はたった一人しかいない」
西村は必死で自分ではないと説明した。
リサは強気で西村へ言った。
「それじゃ、あんた退室しなさいよ。あんたが退室しても生きてればあなたが犯人ってことで、もし誰も死ななくても私たちはもう追及しないから・・・」
「そんな、リサさん!ちょっとやり過ぎじゃ・・・」
「もう私は疲れたの!こんな自殺に付き合わされて、もう終わらせましょう!」
西村はむきになり、リサの言う通りにした。
「退室してやるよ!もうこんなバカな遊びは終わりだ。昔みたいにちゃんと現実世界で生きてやるよ!こんな所に来たのが間違いだったぜ」
西村は退室した。
この部屋に残ったのは3人。
「ニュースにあの人の名前が出なかったら、私たちも退室しましょう」
「そうだね・・・」
そうなればいいと誰もが願ったが、現実ではそうもならなかった。
西村彰、刃物で無数に刺され公園のトイレで発見されるニュースが流れた。
3人は頭の中が混乱した。
「もうどうなってるのよ!!これってサイト運営者のイタズラ?」
「イタズラで人を殺すわけないでしょ!他では何人も行き来してるはずよ・・・この部屋だけなのよ」
「伸あんたじゃないの?」
「急に何を?」
「そもそもあんたが見に行ったこと事態、私たちはあんたの話でしか聞いてないのよ!」
「僕が嘘をついてるって言うのか?」
「だっておかしいでしょ!こんなのありえない・・・」
突然、チンチンっとパソコンから音が聞こえる。
そんな部屋に二人の新しい住居者がやってきてしまった。
「どうも、空いていたので参加させてもらいますね!立花光女子大学生です。よろしくね」
「俺は田中守こういうの初めてだけどよろしく。高校生です」
新たに何も知らずにやって来た二人の若者・・・
一度は入れば二度と出れない。出れば謎の死が待っている。
死の連鎖はこれからさらに加速するのであった。