さめても。さめなくて。
『葉月、明日のことなんだけど、雨予報なんだよな、どうする?』
そうだ。
洋ちゃんと出かけるんたった。
熱下がるかな……
「くしゅん」
えーと。
「あのね、風邪引いちゃって、熱が出たから、出かけるの無理かも」
『そっか。熱は何度?』
「38度。ちょっと眠い……」
返事を打ちながら。
うつらうつら。
まぶたが。
勝手に下がってきて。
頭が。
かくんかくんして……
ザーッ……
遠くで。
雨の音がする。
ゆっくりとまぶたを上げる。
暑い。
汗でびちょびちょだ。
掛け布団を剥いで。
んー。
両手で伸びをする。
少し。
頭はすっきりしたのかな。
でも。
だるさは残ったまんま。
喉もカラカラ。
おでこに手を当てると。
手のが冷たい。
あれ?
冷えピタどっかいっちゃった。
アイスノンも。
ぶよぶよになってる。
何時だろ。
暗い部屋の中。
手探りでスマホを探す。
見当たらなくて。
ゆっくりと体を起こして。
ベッドの上をまさぐって。
ん?
枕の下にあったスマホを手に取った。
うっ……
画面の光が眩しくて。
目を細めた。
もうすぐ22時。
5時間くらい寝てた。
あっ?
洋ちゃんとメッセージしてたんだ。
「くしゅん」
とりあえず。
着替えよ。
喉も渇いたし。
ベッドからゆっくりと立ち上がって。
部屋の電気をつける。
下着から全部着替えて。
さっぱりしたけど。
なんかまだ体が熱い。
ガチャ。
「葉月起きたの?」
「あ、うん。汗かいたから着替えたとこ」
お母さんは。
私の前髪を押さえて。
おでこをくっつけてきた。
「まだ、熱あるね。鼻声だし。測ってみて」
受け取った体温計を脇に挟んで。
ベッドサイドに腰かけた。
「お粥さんとうする? 食べれそう?」
軽く首を振る。
「飲み物が欲しい」
ピピッ、ピピッ……
体温計の表示は。
37.7度。
全然下がってない。
「じゃあ、代えのアイスノンと薬と飲み物。持ってくるから、横になってな」
「うん。ありがとう」
お母さんは。
私の洗濯物を抱えて。
部屋を出ていった。
私はスマホを手に取って。
洋ちゃんへのメッセージを打ち込む。
「洋ちゃん、ごめんね。しんどくて寝ちゃってた」
よし。
「くしゅん」
はあ。
ズルズルと鼻をすする。
ピコン。
『大丈夫か?』
「うん。まだ、熱下がらない。だるい」
『しんどい時は寝るのが一番。出掛けるのは、またにすればいいし、じゃあな、おやすみ』
「うん。おやすみなさい」
「お待たせ」
そこへやって来たお母さん。
手にしたトレーの上に。
あっ。
アイスのカリカリくん!
「お母さん。ありがとうカリカリくん」
「ああ、これ? 夕方、洋介が持ってきたのよ。葉月が熱出したの知って」
「洋ちゃんが?」
「葉月は熱出すと、ご飯食べれないから、でも、これなら食うから、おばさんよろしくって」
「ああ……」
「ほら、溶けないうちに食べて、水分摂って。薬飲んで。ああ、歯磨きだけはしなさいよ」
「うん」
トレーのアイスを取って。
袋を破いて。
取っ手を持って引き抜いた。
水色のアイス。
一口かじると。
しゃりっとして。
甘いソーダ味が。
冷たさと口の中に広がる。
「葉月顔を上げて」
「ん?」
お母さんは。
私のおでこに冷えピタを貼って。
枕にタオルで巻いたアイスノンをセットしてくれた。
「しんどかったら、お母さん起こすのよ」
「うん……」
私は。
カリカリくんを食べながら。
想い出していた。
小学校3年生の頃だった。
熱を出した時。
洋ちゃんがお見舞いに来てくれて。
食欲がない私に。
「何か食べないと元気にならないぞ」
って。
その時。
夏休みで。
カリカリくんのCMを。
たまたまテレビで。
目にしたか何かで。
アイスなら食べれるかもって。
「じゃあ、ソーダ味のカリカリくんが食べたい」
って。
言ったら。
洋ちゃんが。
買ってきてくれたんだ。
しかもね。
後で。
知ったんだけど。
福田町のお店には。
カリカリくんが置いてなくて。
わざわざ。
内海町のスーパーまで。
バスで買いに行ってくれたって。
それから。
私が熱を出したりしたら。
洋ちゃんは。
カリカリくんを持って。
お見舞いに来てくれるようになった。
熱のせいかな?
アイス食べてるのに。
心がほんわかしてる。
しゃりっと。
アイスをかじりながら。
洋ちゃんにメッセージを送る。
「洋ちゃん。カリカリくんありがとう。今食べてる」
『そっか。やっぱ、ソーダ味だよなカリカリくんは。早く良くなるといいな』
「うん。おいしいよ。カリカリくん食べたから、熱下がると想う」
『だな。まっ、とりあえず早く寝ろよ』
「うん」
食べ終わった。
アイスの棒を眺めながら。
クスリと笑う。
洋ちゃんは。
昔っから優しいもんね。
私にも。
みんなにも。
棒をトレーに置いて。
ペットボトルを両手で持った。
スポーツドリンクごくごく。
冷たさが喉を伝っていって。
一気に半分ほど飲み干した。
歯磨きして。
寝ようかな……
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




