第3話 美樹本と違和感
俺は、つい呟いてしまったことを後悔した。
美樹本の表情が固まり、目が泳いでいる。
さっきまでの彼女ではない。
「……先生、何のこと……?」
「い、いや、深い意味じゃないんだ」
「何ていうか……教育実習のマニュアルに、校内のいじめや暴力を見逃さないってあるだろ?」
「ごめんな。俺、変な言い方というか、どストレートに聞いちゃって」
慌てて取り繕う。
「ふふっ、やっぱり先生変わってる!」
良かった。
美樹本は元の調子に戻っていた。
しかし、今の反応……。
あからさまに何かあるよな。
……。
そして放課後。
あの暗い娘――
新藤 朱里は美術部だった。
昨日は部活に出ていなかったそうだが……。
教室で見ていても、誰とも話す気配がない。
時折、周囲を気にする様子は見せる。
だが、自分から話しかけることもなければ、誰かが話しかけることもない。
彼女の描いている絵を覗き込む。
「……!」
なんと言うか、独特だった。
白と黒を捏ね上げながら、それでも黒く塗り潰されそうな感覚。
素人の俺が見ても異質に思う。
彼女は終始そんな感じのまま部活を終え、
気が付けば、いつの間にかいなくなっていた。
顧問の先生も特に気にしている様子はない。
そして次の日。
いつものように新藤は一人だった。
でも、何で俺は彼女がそんなに気になるんだ?
そんな人間じゃないだろ、俺は。
昼休み。
「先生、お昼またコンビニ弁当?」
いつものように美樹本が絡んでくる。
「仕方ないだろ。作れもしないんだから」
そう答えながら、自分の発言にわずかな違和感を覚えていた。
「じゃあ、これあげる」
「感謝してね!」
そう言って、美樹本は弁当を差し出した。
「ヒュー! 先生やる~!」
それを見ていた他の生徒たちが冷やかす。
「違うだろ……」
思わず苦笑する。
そして、その次の朝、
あることが起こるんだ。




