第58話:公衆の面前での抱擁。もう隠すつもりなんてない
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衆人環視の中で行われる、あまりにも背徳的な抱擁。
結衣が選んだのは、自由なエースの座ではなく、一人の少年に捧げられた「完全屈服」の道でした。
観客席のフェンスを飛び越え、結衣はなりふり構わず阿久津の胸へと飛び込んだ。
「阿久津君……っ! あ、あぁ……やっと、触れられた……っ!」
数万人の観衆が、そしてカメラのレンズが、自分たちの姿を捉えていることなど今の彼女にはどうでもよかった。
結衣は阿久津の首に強くしがみつき、その匂いを、体温を、貪るように自身の全身に吸い込んでいく。
「田中さん、みんな見てる……。それに一ノ瀬たちが――」
「関係ない! 言わせておけばいいよ……。私、もう決めたの。誰に何を言われても、私は阿久津君の『お人形』として走るって……っ!」
結衣は阿久津の胸に顔を埋め、上気した顔で熱い吐息を漏らした。
共鳴パスを通じて、阿久津の戸惑いと、そして自分を求める強い独占欲が流れ込んでくる。その瞬間、結衣の身体は歓喜に震え、その瞳からは完全にアスリートとしての自立心という光が消え失せた。
それは、世界を驚愕させた天才走者による、あまりにも無惨で、あまりにも美しい**完全屈服**。
「見て、私の脚……。あなたの『熱』がまだ、こんなに脈打ってる。……ねえ、阿久津君。私を、もっとめちゃくちゃにして。一生、あなたの手放せない『道具』にしてよ……っ!」
彼女は阿久津の大きな手を自ら掴み、ユニフォームの下に隠されたあの共鳴跡へと導いた。
公衆の面前でさらけ出される、一人の少女の剥き出しの隷属心。
阿久津が彼女の腰を強く抱き寄せ、その存在を「所有」することを認めた瞬間。
結衣の魔力は黄金の極光となって吹き荒れ、二人の絆が学園の規律という名の偽りを完全に焼き尽くした。
もはや誰も、この二人の『共鳴』を不正だとは呼べなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
数万人の前で阿久津君への隷属を誓った結衣。
彼女にとって、勝利の果実に意味はなく、彼の腕の中にあることこそが真の「ゴール」でした。
第2章もいよいよ大詰め。二人の「その後」に期待してくださる方は、評価やブクマをお願いします!




