第46話:力の入らない脚。拒絶がもたらす絶望的な重さ
いつもご愛読ありがとうございます。
「拒絶」の代償は、あまりにも残酷なものでした。
阿久津君の熱を失い、ただの少女へと戻ってしまった結衣の姿をご覧ください。
翌日の放課後。グラウンドのスタートラインに立った結衣の脚は、まるで鉛でも流し込まれたかのように重かった。
(……動いて。お願い、動いてよ……!)
どれほど意識を集中させても、以前のような『跳ねるような熱』が湧き上がってこない。
阿久津に拒絶された記憶が、冷たい楔となって彼女の魔力回路を凍りつかせているのだ。
号砲が鳴る。
だが、結衣の蹴り出した一歩は、無様に地面をなぞるだけだった。
「っ……、はぁ……っ、ぁ……!」
加速できない。
走れば走るほど、全身を襲うのは心地よい快楽ではなく、肺を焼き、筋肉を千切るような剥き出しの苦痛。
阿久津に『調整』され、痛覚を喜びへと変換されていた彼女の身体は、今や純粋な負荷に耐える術を忘れてしまっていた。
「田中さん、どうしたの!? 全然タイムが出てないわよ!」
部員たちの困惑の声が、今の彼女には何よりも鋭い刃となって突き刺さる。
視界の端に、阿久津の姿を探してしまう。だが、彼はどこにもいない。
共鳴パスから伝わってくるのは、沈黙という名の絶望。
阿久津の情動というブーストを失った途端、学園のエースは、ただの「運動神経の鈍い少女」にまで墜落していた。
彼女はトラックの途中で力なく膝をつき、自身の太ももを爪が食い込むほど強く握りしめた。
阿久津が刻んだあの『共鳴跡』さえも、今は冷たく、虚しく沈んでいる。
「阿久津君……助けて……。私、あなたに触れられてないと……もう、一歩も進めないよ……っ」
猛烈な**喪失**感。
自分を最強にしてくれたのは、自分の努力ではなく、彼の気まぐれな『情動』だった。
その事実が、結衣の心を、再起不能なまでに叩き折っていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
物理的な**喪失**以上に、阿久津君に「失望された」という事実が結衣の足を止めます。
「彼なしでは走れない」という呪縛が、最も悪い形で彼女を縛り付ける展開……。
ここからの二人の再構築にご注目ください。




