第31話:爆速のエースが抱える、沈黙の悲鳴
お待たせいたしました。物語は新たなヒロイン、田中結衣とのエピソードへ。
凛華とは対照的な、生命力に溢れる彼女の肉体が、阿久津君の手によってどのように「最適化」されていくのか。
新たな共鳴の物語をお楽しみください。
学園のグラウンドを切り裂く、一筋の閃光。
田中結衣。陸上部の短距離エースである彼女が駆け抜けた後には、土煙と、周囲を圧倒するような熱量だけが取り残される。
だが、ゴールラインを越えた瞬間の彼女の表情を、俺は見逃さなかった。
一瞬だけ、苦痛に歪んだ唇。彼女は周囲に悟られないよう、すぐにいつもの快活な笑みを貼り付けたが、その脚はわずかに、けれど確実に震えていた。
「……阿久津君! 今日も見ててくれたんだ、ありがとね!」
結衣がタオルで汗を拭いながら、俺の方へと駆け寄ってくる。
彼女の全身からは、激しい運動による蒸せ返るような熱気と、健康的な少女の匂いが立ち上っていた。
「田中さん、今のタイム……自己ベストに近いんじゃないか?」
「あはは、バレた? でもね、実は結構ギリギリなんだ。最近、どれだけ練習しても脚が重くて……」
彼女はそう言って、自身の逞しくも柔らかな太ももを、自嘲気味に叩いた。
凛華との一件以来、俺の視界には、彼女たちの身体を流れる『魔力バイオリズム』が微かな光の淀みとして視えるようになっていた。
結衣の脚。そこには、蓄積された疲労と重圧が、どす黒い澱のように溜まっている。
本来なら異能による自己治癒が追いつくはずだが、彼女の心はすでに限界を越えて悲鳴を上げていた。
「ねえ、阿久津君。佐藤さんから聞いたんだけど……君に『調整』してもらうと、信じられないくらい体が軽くなるって。それって、私にも……やって、もらえたりする?」
結衣の瞳が、切実な色を帯びて俺を捉える。
いつもは太陽のように明るい彼女が見せた、初めての「弱み」。
その瞬間、俺の胸の中に、彼女を守りたいという強い庇護欲と、躍動するその肉体を支配したいという不埒な興奮が、同時に芽生えた。
共鳴パスが、微かに震える。
かつて凛華を陥落させたその絆が、今、新たな獲物を求めて動き出そうとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
陸上部のエースとして走り続ける結衣。その強気な笑顔の裏側に隠された、壊れそうな真実。
阿久津君という唯一の理解者を得た彼女の加速が、ここから始まります。
続きが気になる方は、ぜひ評価やブックマークをお願いいたします!




