第15話:もうピアノだけのせいじゃない。私が触れたいだけ
いつもご愛読ありがとうございます。
ついに凛華が、自らの「本心」を認めます。
ピアノのためという言い訳が消え、一人の人間としての執着が芽生え始めた少女の姿をご覧ください。
阿久津から突き放された一晩、凛華にとって、ピアノの音色はかつてないほどに空虚なものだった。
翌日の放課後。彼女は重い足取りで阿久津の前に立っていた。その瞳は揺れ、内面的な葛藤に苛まれている。
「……阿久津君。私、気づいたの。ピアノを弾くために、あなたの力が必要だって思っていたけれど……それだけじゃない」
無人の旧校舎。凛華は阿久津の真っ直ぐな視線から逃れるように、力なく視線を落とした。
「昨日、ピアノの前に座って、一番に思い出したのは楽譜じゃなかった。あなたの言葉や、隣にいる時のあの感覚だった。音楽のためにあなたを利用しているつもりだったのに、今はもう、あなたなしでどうやって音楽に向き合えばいいのか分からないの」
彼女は絞り出すような声で続けた。もはや「才能」という言葉は、彼を求めるための隠れ蓑にはならなかった。
「もう、ピアノのためなんて言わない。私が、あなたを必要としているの。あなたの存在が、私の心を埋めているのよ……っ!」
凛華の告白は、プライドを捨て去った一人の少女の切実な願いだった。
二人の間に流れる静寂の中で、彼女は自らの心の内にあった執着を認め、阿久津という存在に精神的に深く委ねることを決意した。
高潔な女王としての仮面は剥がれ落ち、そこにあるのは一人の男に心を囚われた純粋な姿だけだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
凛華が自身の「渇望」を認め、阿久津君への心理的な依存を自覚する重要な回でした。
もはや彼女にとって、音楽の研鑽は阿久津君との繋がりを確認するための手段に変わりつつあります。
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