陰謀に満ちた世界における罪状
この回から、少しきついです。
寝ようとしたら、隣の部屋との間のドアが開いて
エストリア「何よこれ!直通のドア?!!」
元々、夫婦の部屋だったためエストリアの部屋と俺の部屋の間に直通のドアがあった。
エストリアもルナリスも既にパジャマっぽい物に着替えている。パジャマパーティ?
やっぱりエストリアは胸あるよなぁ。それなりに可愛い気もするが、あの性格だからね。
ルナリスも眼鏡を外すと意外にかわいい。目が合ってしまい不覚にもドキっとした。
俺に向かって
エストリア「鍵も無いのね、、。でも、このドアは絶対に開けないでよ!」
今は、おまえが開けてるがな。
俺「開けないよ」
エストリア「明日になったら、クギで打ち付けてもらうわ」
俺「そうしてくれ。その方が、俺もゆっくり眠れそうだ。」
エストリア「とりあえず机と椅子を、このドアの前に持ってきましょう。ルナも手伝って!」
俺「・・・」
俺「そういえば、ルナリスが奴隷になった経緯を聞いてなかったな」
エストリア「今!?」
ルナリス「良いのじゃないでしょうか。3人だけですし。」
エストリア「そ、そうね・・。」
ルナリス「私の両親は・・」
エストリア「待って!私が話すわ。ルナだと危ない事を言っちゃうでしょ。」
俺「危ない事?」
エストリア「いいから聞いて!」
エストリア「彼女の両親は、二人とも帝国軍で隊長をしていたわ。
そして、この前の戦乱で魔王軍に捕らえられ、その後、帝国を裏切って、魔王軍に加担した・・と、された。」
俺「された?」
エストリア「その時は証拠まであったのよ。裁判で記録 瑠璃が提出されて。
そして、反逆罪に課せられ、貴族の地位を奪われたわけ。二人は行方不明のまま、なんだけど。」
俺「・・。それって、娘のルナリスまで罪になるのか?」
エストリア「そうね。もし、ルナが、それなりの対応をしていれば、彼女に罪は及ばなかったと思うわ。」
俺「じゃあ、どうして?」
エストリア「彼女は、裁判で両親をかばったの。」
俺「ん?」
エストリア「両親を正しいと信じる・・と言ったのよ。だから同罪になったわけ。」
俺「う~ん。なんだか無理やりだな。」
エストリア「あの裁判自体が、ルナを封じる目的だったかもしれない。・・。そう。まず、あなたは、この国の熾烈な権力闘争について知るべきね。」
ちょっと知ってるかもしれない・・。
エストリア「ルナリス、あなたの考えを言ってちょうだい。」
ルナリス「・・・。私は最初から両親の件は陰謀だと思っていました。だから、そう言ったのです。」
エストリア「ルナはものすごく真面目で正直なの。」
ルナリス「ごめんなさい。」
エストリア「あなたが、あやまる事は無いのよ。ルナは、これ以上無いほど、どこまでも良い子よ。正直で約束を守り、勤勉で。悪いのは陰謀に満ちたこの国よ。」
俺「たいへんだな。」
エストリア「他人事だと思ってるの?」
俺「違うのか?」
エストリア「ここからが重要よ。ルナの両親を襲った陰謀の主について・・だけど。」
エストリアが少し皮肉っぽく笑った。
エストリア「ヒロタン、あなたは誰だと思う?あなたも知っている人よ。」
謎解き?試されてる?え~と。
陰謀と言えば左大臣が怪しいが。御前会議に左大臣はいなかった。俺が左大臣を知ってる事をエストリアは知らんかもしれん。
そして、御前会議で貴族議員の件で争う感じだったのは・・
俺「議長・・かな?」
エストリア「正解! この国の政治は腐り過ぎていて単純よね。あなたでも分かるのだから。」
当てたのだから、ほめてくれよ!
エストリア「議長は、この国の裏の支配者の一人よ。そして、ルナがここにいる事で、議長はあなたの敵にもなったの。」
俺「そうなのか?」
エストリア「もともと、この件自体、議長の陰謀にルナの両親が巻き込まれた可能性があるわ。そして、さらにルナもね。ルナが持っている情報は議長にとってヤバイ物なのよ。」
ルナリスに聞けば危ない部分も話してくれそうだけど、、。
でもエストリアが話さないなら、聞かない方が良いか。
エストリア「いずれにしても、油断していると殺されるわよ。あなたも一緒に。
ルナが売れ残っていたのも、たぶん、そのせいだわ。」
この世界に来てから、命がいくつあっても足りない。
俺「分かった。話してくれて、ありがとう。」
俺「ついでに、聞くと、おまえたち二人の関係なんだが・・。」
ルナリス「魔法士官学校の同期なんです。彼女は生徒会長だったんですよ。」
どこかで聞いたような。
エストリア「ルナは常にトップの成績だったわ。ほんっとにマジメな娘なの。」
俺「もしかして、皇帝・・」
エストリア「ミリアも同期よ。成績は悪かったけどね。」
俺「ほ~。」
俺「ルナリスは魔法の学校で成績が良かったって事なら、すごい魔法が使えたりするのか?」
ルナリス「・・・。奴隷になると、魔法使いの職業は奴隷化の瑠璃で封じられます。なので今は何もできません。」
すっごく悲しそうだ。そうだよな、まじめに勉強してきたのに。
エストリア「魔法が使えると自分自身に埋め込まれた瑠璃の設定を、変更する事もできてしまうの。つまり、奴隷化の瑠璃を無効化して、自らを奴隷から解放するのも簡単と言う事。なので、まあ、当然、魔法は封じないといけない。」
ルナリス「はい。」
俺「もったいないなぁ~」
沈黙が気まずい。
俺「うん。遅い時間にいろいろ話してもらって、すまんかった。もう、寝よう。」
エストリア「そうね。おやすみ。」
ルナリス「おやすみなさい」
:
最後にエストリアが振り返って
エストリア「絶対にあけないでよ!」
俺「あけないよ!」
ドアが閉じられた。いろいろたいへんそうだ。
そして、俺は、さらに疲れた。面倒な事ばかりだよ。
ベッドに倒れ、眠り、、
トントン
扉を叩く音。
誰だよ! いいかげん寝かせて!
<ぼ、ぼくです。>
頭の中で声が・・。
あっ!奴隷の通信!そしてこれは・・、。ボクっ子は他にいないし。
俺<どうした?>
サミアス<行くって言ったので>
やめてくれ! そういう趣味は無い!
俺<いや、あれは・・>
サミアス<お願いします>
俺<悪いが戻ってくれ。俺は疲れてるんだ。>
サミアス<少しだけ、、。ドアを少しだけ開けてくれたら戻ります。
お願いです。顔を見て、おやすみを言うだけで・・。>
しょうが無いなぁ。
俺<・・。分かった、少し開けるだけだぞ>
カギを外して少しだけドアを・・
凄い力で強引にドアが開かれ、一瞬で俺の胸にサミアスが飛び込んできた。
すさまじい力だし、素早い・・なんてもんじゃないぞ!
背が低いから、下から上目づかいに大きな輝くような目で俺を見る。
まっ白い肌の上で、銀色の長い髪がゆれている。本当にガラス細工の人形のように綺麗で可愛い!
こんなにも綺麗な物が、生きて、動いているのが不思議なぐらいだ。
でも、俺に触れている体が、、、。
かわいい顔からは想像もつかないような固い筋肉質の腕や体・・。
すばやい動きも、この体があっての事だろう。
サミアス<奴隷のぼくを抱いてください。>
もし、これが、本物の美少女の口から出た言葉だったら、俺は壊れていたの・・だろうか。
でも、サミアス!おまえは男だろ!いったい、俺に何をしろと言うのだ?!?
サミアス<服を脱がなければ、大丈夫・・と言われました。>
誰に言われたんだよ!何が大丈夫なんだよ!
だいたい、、震えてるじゃないか!
手慣れた男娼・・、などには見えないぞ。
俺<きみは、おとこ・・なんだよね。>
良く分からんが確認すべきかな。
俺<きみ自身は、そういう行為を望んでいるのかな?>
サミアス<罰・・ですから。ぼくは罪を重ね、、。奴隷になました。>
そして、はっきりと・・
サミアス<罰を受けないといけません>
そういえば、聞いてなかった。なぜ、こんな子が奴隷に?
俺<良かったら何をしてきたか話してくれないか>
サミアスが下から見上げている。少し不思議そう・・。聞かれると思って無かった?
大きな目がやっぱりかわいい。
サミアス<ぼくは、何人もの人を殺しました。>
げっ!?
サミアス<勇者様は戦場で多くの敵を殺されたかもしれません。>
いや、まったく。ぜんぜん。
サミアス<でも、ぼくは、それよりも遥かに罪深い事をしてきました。>
そして、少し目をふせて、。
サミアス<ぼくは、ぼくの事を可愛いと言い、ぼくを愛してくれた人たちを殺してきたのです。>
つまり暗殺者。アサシン。それもハニートラップというわけか。
本当に陰謀に満ちた国だなぁ。
サミアス<女の子になり切って仲良くなって、>
無表情だと思った顔に自身への恐怖が浮かんでいる。
ガラスの中で黒い炎が燃えてるようだ。サミアスは、その内側の炎を見ているのだろう。
サミアス<僕を愛おしんでくれる手を跳ね除けて、細いナイフで心臓を突きさすのです。>
サミアス<時には、それでも、なお僕に笑いかけて、やさしく僕の頭を撫で・・>
俺<ヤメロ!それ以上、言うな!>
とても良い子なんだと思う。言われてやっただけなんだよね。
それが、どれほど苦痛だったかと思うと、俺も痛い。
これはキツい!
サミアス<だから、罰が必要です>
俺<分かった>
さて、なんと言ったら良いやら。
俺<実は俺は聖者なんだ。そういう属性になってる。>
これは、ほんとだからな。そして、それで行くしか無いだろう。
サミアス<勇者様じゃ?>
俺<勇者は、この国での通称だね。魔法回路とやらの職業は剣士でかつ聖者だよ>
サミアス<そ、そうなんですか?>
俺<きみは罰として抱かれたいと言っている。きみ自身が望んでいるわけでは無い。
聖者の俺は、そういうのは苦痛でしか無い。>
サミアス<ごめんなさい。
では、ぼくの罰はどうしたら、、>
俺<俺は聖者だから、きみや、きみの周りの人が幸せになる事を望んでいる。それが俺の喜びだ。
聖者だから……ね。>
実際には聖者に意味は無さそうだが。
俺<そして、俺は、きみの主人だから、きみは罰として俺を喜ばせないと、いけないよ。>
サミアス<何を言ってるのでしょう?>
俺<俺を喜ばせたいなら、きみ自身ときみの周りの人が幸せになるように頑張らないといけない。>
サミアス<それが罰?>
俺<そうだ。とっても、たいへんな罰だよ>
大きな目に涙が浮かんでる。これで良かったのだろうか。
サミアス<・・・・。ほんとに聖者様なんですね。聖者様に、、買われて、、良かった。>
聖者はたぶんバグ表示だけど。でも、今は、それが少しありがたいよ。
サミアスの冷たかった表情が、泣き笑いみたいな、暖かい物になってる。
サミアス<1回だけ、、、。1回だけ、ぼくを抱きしめてください。>
少し顔を赤らめて。
サミアス<・・。罰じゃなくて、。僕がそうして欲しいです。そうしてくれたら帰ります。>
抱きしめると、ほんとに筋肉質なのが分かった。、でも、とても暖かい。ガラスなどでは無い。
サミアスは少し頭を下げると、名残惜しそうにしながら帰っていった。
うん。たぶん、これで良かった!
そして、ついに、俺はベットに!
他の回と表題の文体が違いすぎるので変更しました(10/13)