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第5節 旅立ちの準備と勇者様 3

外出から戻ってきた時矢は、しばらく部屋でのんびりしていたのだが部屋の近くが少し騒がしくなってきたので扉の外を覗いてみた。


「おっ、授与式は終わったみたいだな。」


授与式から帰ってきたのであろうクラスメイトたちは、各々友達と話しながら自分の部屋に戻っているようだ。


「なら報告に向かいますかなっと。」


時矢はそう呟くと、今日の出来事を振り返りながら黒桐の部屋に向かった。





時矢が黒桐の部屋の扉をノックし、開けるとそこには黒桐以外に愛花と武政の姿があった。


「ちょうどいい所に来たな時矢。早速だが報告をお願いしようか。」


時矢を見つけた黒桐は愛花との会話を中断して、いきなり話しかけてきた。


「相変わらず変わらないですね....。まぁ説明しますが。」


時矢は少し呆れながらも黒桐のお願いに対応するべく、簡潔にまとめた上で話し始めた。





「あんた異世界をエンジョイしてんじゃないわよ!てか盗聴用魔道具って何よ!」


大方説明を終えたと思ったら大声で愛花に突っ込まれた。まぁ話だけ聞いたら観光してきたようにしか聞こえないのだが....。


「まあまあ、落ち着けよ愛花。それより問題は尾行されてたことだろ。」


武政は愛花をなだめながら問題点を指摘した。


「んー。なんで尾行されてたのかも分からないし、顔は分からないはずなんだよね。」


時矢は頭にハテナを浮かべながらそう話した。実際、王城を出るところは誰にも見られなかったし尾行に気付いたのも王城からそれなりに離れた場所だった。


「それに尾行していたのが近衛騎士というのも引っかかるな。」


時矢の言葉に付け足すように黒桐は言った。


「まるで最初から分かっていたような感じだったんだよなぁ....。まぁ、僕だってばれた訳ではないからどうとでもなるとは思うけど。」


「時矢、それはフラグかなんかか?」


武政から縁起でもないことを言われたので慌てて返そうとした時矢だが、それは扉をノックする音に遮られた。


「先生ー。ごはんだって〜。」


どうやら夕食の時間らしく、1人の女子生徒が呼びに来てくれたらしい。


「さて、とりあえず夕食に向かうとするか。」


黒桐の一言で話は一度中断された。



食堂に着くともう食事を始めている生徒がちらほらいた。ちなみに、この世界での食事は意外にも給食とバイキングを足して2で割ったような感じになっている。


時矢たちは、食事を準備するといつも座っているテーブルに座り雑談をしながら食事を始めた。


「あれ?勇者組いないな。」


武政が、周りをある程度見渡すとそう呟いた。


「あーあいつらはなんか貴族達の食事会に参加しているみたいよ。」


武政の呟きに愛花はそう返した。


「また勇者組だけなんだ....。やっぱある程度格差がつけられてるよねこれ。」


時矢はそう言いながら1週間の出来事を思い出した。


実は、こんな出来事は始めてではなく結構な頻度で起こっていた。


始めは訓練を開始する直前だった。訓練に使う魔道具や武器は支給してくれるとの事だったのだが、勇者組だけは特別な魔道具などを受け取っていた。


それを聞いた生徒の誰かが杉山を責めたらしいのだが、


「ステータスが高い人が強い武器を持つのは当たり前じゃないのか?」


とのこと。多分彼からしたらそのまま言っただけなのだろうが言われた側からしたらただの嫌味でしかないためヘイトがたまっていた。


似たような事は何度もあり特に一番多かったのは食事だ。


2日に1回くらい誰かしらの貴族から食事会に誘われては参加しているためおそらく食べているものはみんなとは違うのだろう。


そして、それに対して杉山は


「勇者として貴族と関わっていくのは当たり前じゃないのか?」


とのこと。この1週間で、勇者という職業やステータスなどを理由にかなり勇者組は優遇されていたため少しずつヘイトがたまっているのは言わずもがな。


ともかく、杉山を始め勇者組はステータスなどを盾に調子に乗ることが多かった。


「僕からしたら正直どうでもいいんだけど一般論ウザいよなぁ。」


事実、他のクラスメイトに比べたら勇者組の方が強いのは確かなのだがここまで露骨に差別化するのもウザかった。


「まぁ実害がある訳じゃないしまだ放置かな....。」


時矢がそう呟いた瞬間事件は起きる。


ドン!っと突然食堂の扉が開いたかと思うと、武装した兵士達が時矢を囲むように部屋に入ってきたのだ。


「空原時矢!貴様を国家反逆罪の罪で拘束する!」


兵士達の大群の中から隊長格っぽい人が出てきたと思ったら突然そう言い放った。


「は?」


その言葉を受けて、時矢はアホ顏になりながらそう言った。


ついに次回から....。

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