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6日目 チェンジ イズ マニー

ここはセ中高等学校の教室の中。俺とようきは

昨日の文化・体育祭についてしゃべっていた。

「いやー、文化派が勝つとは思わなかったな」

「そうですよね。始めは文化に317票、体育に347票で体育派が勝っていましたが、学校走に勝った先輩の30点で勝つことができました」

「それを聞いたときは本当に嬉しかった」

「でも、先輩たちが学校に帰ってきたときはギリギリでしたね」

「まあな。俺らが帰ってきた時にはもう結果発表が行わていてビビったぜ」

俺とユメが学校に戻ってきたときには、生徒たちが

校庭で整列を始めて、結果発表を待っていた。こんなに時間が経っていたことに俺はここにきてやっと気付いた。

「僕は先輩がデートではなく戦争を終らせていたことにびっくりしましたよ」

「すまなかったな。呼んでやれなくて。」

「いいんですよ。先輩が無事なら」

ようきは笑顔で言う。こいつが神だって聞いたときは離れた存在だと思っていたが、今ではとても身近な存在に思える。

身近と言えば、こいつとも距離が縮まったな。

俺は隣を見る。そこではレイがあいかわらず本を読んでいた。

「悪かったな、レイ。告白するチャンスを奪ってしまって」

結果発表が終わって、皆は教室で打ち上げをしていた。

しかし、その中にユメとレイの姿がないことに気付いた。

教室の窓から校庭を見た。

そこには、ひつじに連行されるユメと、それを呆然と見るレイの姿があった。

「連行される前に、告白した」

ようきがすぐさまレイに何か言おうとしていたのを俺は手で制した。

「何ですか。 続きが気にならないのですか」

「気になるさ。でも、あの目を見ろ。悲しい目をしている」

眼鏡ごして、レイは遠くの方を見ていた。席でも なく、黒板でもなく、もっと遠くを見ていた。

俺はできるだけ優しい声でレイに聞いた。

「で、どうだった」

「振られた。・・・でも」

「でも?」

「罪を償い終わったら、また会おうって」

そう言い終えると、レイはまた本を読み始めた。

俺は立ち上がり、レイの肩の上に手を置いた。

そして、揺さぶってあげた。

「良かったじゃんかよ!」

「何がだよ」

「何がも、何も、会おうって、まだチャンスはあるってことだろ。いやー、良かった。本当に良かったッ!」

「僕もそれを聞いて、安心しました。やっぱり、レイはすごいですね。そうだ、踊ろう。ようきの陽気な舞いだ!」

ようきは何やら変な舞いを踊り始めた。俺は気にしなかったが、レイは恥かしかったのか、大げさにため息をついた。

「お前らは何を言っているんだ。まあ、嬉しかたったけどな。ほら、もうすぐ次の授業が始まるから、とっとと自分の席に戻れ」

黒板の上の時計を見ると、確かに授業が始まる1分前を指していた。俺とようきは自分の席に戻り、レイは本を片付けた。

学校のチャイムが鳴り、つるき先生が教室に入ってきた。

つるきは大きな手さげ袋を持っている。これはテスト返しだ。あの手さげ袋に俺たちのテストが入っている。

クラスの皆が起立する。

「起立、気をつけ、お願いします」

『お願いします!』

俺たちは先生に対して札をし着席すると、

つるきは教たくの上に紙袋をどさっと置いた。

「今から前回のテストを返します」

前回のテストというのは、俺がつるきに変装してカンニングをしたテストか。でも、返ってくるのは90点以上のテストではないはずだ。

 昨日で俺はずるをやめることを決心した。

そこで、結果発表のあと、父(校長先生)とつるき先生に自分がカンニングをしていたことを告白した。

だから、点数はあれだ。

つるきは生徒の名前を呼びながら、テストを返している。

俺の前の人が呼ばれると、俺は席から立った。

「由さん」

「はい!」

俺はつるきに近づく。つるきは俺にテストを返した。

「はい、どうぞ」

「どうも」

「次は頑張れよ」

机の戻り、テストの結果を見る。

0点

不正をしたら、0点。それが、学校のルールだ。

しかし、この0点にはそれ以上のことが込められているを俺は忘れていなかった。

「これで約束は守ったぞ、ユメ」

テストを配り終えたつるきは、理科の授業を始めた。

真面目に受けてみると、案外面白いものだった。



授業が終わった俺とようきは、決戦の地であった丘のベンチに座っていた。ベンチでは、授業は難しいなとか今日は何に食べようとかたわいもない話をしていた。そんな中、俺が話題に出したのは円々姫のことだった

「円々姫は今頃何をしているかな」

ポケットに手を入れるが、円々姫は見当たらない。

円々姫 ほ一度、神の世界に帰ったのだ。戦いの疲れがあったのだろう、俺が結果発表を聞いて喜んだときも、円々姫は100円玉の姿のままで一言も話さなかった。

だから、円々姫の名を出した瞬間に顔を曇らせたようきを見逃すことはできなかった。

「円々姫に何かあったのか?」

陽気は何も言わず、俺にあるものを見せてきた

それは昨日の姿のままの円々姫だった。

「どういうことだ」

俺は陽気を真っすぐ見つめる。陽気は観念したのか、俺に衝撃の事実を告白をした。

「円々姫 自身も百金を使っていたのです」

「え」

「まぁ、本人は使っていた自覚がなかったんでしょう」

「ちょっと、待て。じゃあ、円々姫が100円玉の姿から戻らなかったのは、百金の使いすぎのせいだと言うのかよ」

「そうです」

「百金で円々姫は100円玉になったり できたと」

「・・・はい」

「おい、おい、おい!円々姫がこうなったのは俺のせいじゃないかッ!」

円々姫は俺がずるをする度に100円玉になっていた。

昨日の円々姫の思い出から分かるに、彼女は自分が百金をしていることに自覚はなさそうだ。

だったら、なおさら俺のせいではないか。

円々姫の出身国は、金に変わることが誇りだと言っていた。

きっと、それは百金を使わせるためのわなだ。

円々姫は金になるよりも今の人生が楽しいと言っていた。

その人生を壊していたのは、俺ではないか。

俺は円々姫に死んだら意味ねえと言ったくせに!

「あああああああああああーッ!」

ベンチから体が落ちても、その痛みより、絶望の痛みが俺を苦しめた。どうしようもない痛みを叫び続けた。

すると、ようきが俺のことを包み込んだ。

「大丈夫。大丈夫ですよ」

友達に励まされるなんて情けないと思いながらも、なつかしさを感じた。この優しさは知っている。まだ小さかった頃、俺が泣いているときに母がよくやったなぐさめ方だ。

信じがたいことだが、こんな状況だ。何言っても許される気がした。

俺は顔を上げ、ようきを見た。

「…母なのか」

ようきは俺の頭をなでた

「やっぱり、あなたはすごいです。そうです、僕はあなたの母です」

「でも、母はもうーー」

「ひつじが僕を生き返らせてくれたのです」

「でも、俺はまだ信じられない」

「まあ、そうですよね。でも、僕の前世とあなたのお母さんが殺された経緯が同じなんですよ」

「そ、そうか」

「それにまだありますよ。お母さんの名前はなんですか」

「陽気だけど」

「はるきは、ようきとも読めるのですよ」

その言葉をきっかけに、俺は母の笑顔を思い出した。

ようきが素直に笑ったときの顔と同じだった。

「お前が本当に俺の母なのか」

「そうです」

だったら、今、目の前にいるのは俺の母だ。

俺のずるのせいで殺された母だ。

「ごめん。俺のせいで母は死にかけた」

「大丈夫ですよ。僕の教育に問題があったのです」

「でも、しかし」

「僕はいまの人生が一番楽しいです。この『転生したら息子の友達だった』という人生が」

「どういう設定だよ」

「どんな設定だとしても、僕はあなたを恨みません」

恨まない。それだけで、俺は十分だった。

ようき、いや、陽気が俺の頭をなでることに対してもう抵抗はしなかった。

「生きているならもっと早くお教えてくれれば良かったのに」

「ごめんなさい」

「でも、会いたかったよ、母」

「僕もです」

陽気が俺のことをギュと抱きしめる。

とても長く、優しいハグだった。

これでハグが終わったかと思いきや、次は俺の手を握りしめた。

「僕も生き返ったんです。円々姫だって、生き返りますよ!円々姫のことを諦めるのはまだ早いです!」

「もしかして、円々姫を戻す方法があるって言うのか」

陽気は俺を立ち上がらせる。

そして、俺から手を離した。

「手の中をのぞいてください」

手を広げると、中には100円玉の円々姫がいた。今から何をやるのかと疑問に思っていると、陽気は俺

に質問してきた。

「先輩にとって円々姫は何ですか」

「それ、今答えないといけないか」

「絶対にです!」

陽気の圧に押されながらも、俺は考えた。この質問が円々姫を戻すことにつながるなら、迷っている暇はない。

友達、そんな言葉が思い浮かんだが、それは違うと思った。

友達とは一緒に旅行に行ったり、食事を楽しんだり、趣味を楽しんだりする関係だ。でも、俺は一度も円々姫と旅行に行ったり、食事を楽しんだり、趣味を楽しんだりしたことはない。それでも、俺は円々姫と一緒にいるとき、それ以上のものを感じた。

しかし、「こんな存在」を表す言葉が思い出せない。今まで本や小説、ドラマ、アニメとかで何度も聞いてきたはずなのに思い出せない。

ヒントはないかと100円玉を裏返す。

すると、かわいらしい花がほられた面が現れた。

「それは、ローダンセですね」

「ローダンセ?」

「はい。ほられる花はその人の希望しだいで変更できるようですね。」

ということは、これは円々姫から俺へのメッセージだ。

ローダンゼ。

花言葉は、終わりなき友情。

ああ、そうか。そうだった。これしかない。これ以上は考えられない。ああ、なんで気づけなかったのだろう。円々姫は俺にとって、俺にとって、

「俺にとって初めての親の親友だったんだ」

円々姫は

ーーカンニング様は、父との会話をぞんぶんに楽しめ!

かっこよくて、

ーーそうです。私たちは優しいのです。

おちゃめなところもあって、

ーー私にサポートさせてください!

優しくて

ーーあなたの頭を飛ばす!

怖いところもあって

ーー円々じゃあーッ!

面白くて

ーー私たち捜査部と一緒に頑張ろう

すごくて・・・・

最高の親友だったんだ。

次の瞬間、100円玉が俺の手から飛び出した。

「え」

100円玉が俺の目の前で浮遊している。

手を伸ばしたとき、その100円玉は光り出した。

「!」

輝しくて目をつむる。

光がやみと、目の前には円々姫が座っていた。

「・・・円々姫 」

俺の呼びかけに彼女は答えた。

「・・・由君、私を認めてくれたの」

「え、俺はお前のことを親友だと言っただけだが」

「やっぱり、私のことを認めているじゃない」

円々姫が俺に笑顔を向けているのに対して、俺は状況を飲みこめずにいた。額に100は宿ってないが、

前にいるのは本物の円々姫だ。

でも、どうして。

俺は説明を求めようと陽気の方を見る。

陽気は俺たちのことをほほえましい目で見ていたが、視線に気付いてくれたのか、今の状況を説明してくれた。

先輩は円々姫を親友と認めることで百金を解いたのです」

「認めることにそんな力があったのか」

「『認める』は『認めさせる』と同じ能力です

『認める』は一番最強なんですよ」

ーーきっと、これが一番最強です!

そういえば、円々姫も同じことを言っていたな。

あれは本当のことだったのか。

俺と円々姫は一緒に立ち上がり、お互い見つめ合う。

「ごめん、円々姫。俺のずるのせいで円々姫は100円玉になりかけた」

「由君は謝る必要はない。私たちはチェンジ・イズ・マニー

ができたんだから」

チェンジ・イズ・マニー。彼女の親が最後に残した言葉だ。

変化を価値あるものにしなさい。彼女はやっとそれ

に答えることができたのだ。

「…円々姫」

次は俺が彼女の頭を撫でてやった。

しかし、この体の振えは涙のせいではなかった。

「ふっふふふ。だまされましたね」

円々姫は手を広けバーンと俺に顔を見せてきた。

「なんで、そんな神妙な顔をしているの。やっぱり私の演技にだまされたね、ハーハッハッ!」

円々姫は俺の顔を指差して笑っているが、俺が気付かないとでも思ったのか。円々姫の目が少し赤くはれていることに。

「あー、笑ったらお腹がへってきた。ねえ、この3人でご飯食べにいかない」

「それはいいですね!冷戦の終了と文化・体育祭優勝を祝して食べにいきましょう。そうだ、今日は僕がおごりますよ!」

円々姫は驚いた顔で陽気のことを見た。

「え、本当にいいのか」

「いいんですよ、いいんですよ」

「そう、だったらお言葉に甘えようかな」

二人が話を進めている中で、俺は円々姫が言った言葉をかみしめていた。

ーー私たちはチェンジ・イズ・マニーができたんだから

その「私たち」の中に俺は含まれているのだろうか。

変ろうと努力していた始めは、失敗ばかりだった。鬼とのじゃんけんでずるを使ったり、死神とのテストでカンニングをしたりした。一番の失敗は、百金した姿を自分が望んでいた「変化」だと思い込み、大切な人を失いかけたことだ。

俺は丘を降りようとしている円々姫を呼び止める。

「なあ、円々姫 、さっきお前が私たちはチェンジ・イズ・マニー ができたんだからと言っただろ。その私たちの中に俺も含まれているのか」

円々姫は俺の方を向き、はっきりと言った

「何を心配しているの。もちろんだよ!」

「本当か」

「由君は世界も家族も私も救った。由君は本当の自分になれたんだよ」

本当の自分。そうか、これが本当の俺か。

「二人とも、行きますよーーーッ!」

陽気が俺たちに向かって手を振っている

「ほら、由君、ご飯食べにいくよ」

「おう!」

返事をすると、俺は二人と並んでこの場を後にした。






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