18話目
「サクラさん、いらっしゃい」
屋上に着くと、瑠々菜は
まるで自分の箱庭に迷い込んだうさぎを
相手するかのように、微笑んだ。
目の前には、ガラス瓶が沢山並べられていた
よく見ると、一つ一つ大きさや形が違う。
そして、少しだけヒビが入っている物や、
透明な液体の入った物まである。
瑠々菜は立ち上がり、瓶を見つめた。
何をされるのか、何となくわかった。
1歩、また1歩、後ろに下がる。逃げないと
でも、逃げたらもっと酷い目に会う。
「サクラさん、今日はとってときですわ!」
瑠々菜はそう言って、笑った。
その笑顔には、一切の曇りもなくて、
キラキラと純粋な目をしていた。
瑠々菜は目の前の瓶を持って、私に近づいて
私目掛けて、思いっきり瓶を振り下ろした。
飛び散った血が、目の前を覆う。
そして瓶が割れ、ガラス片が中を舞う。
何が起きたんだ?
ガラス片が頬を掠める。痛みは無く、
ただスローモーションみたいに体が落ちる。
目の前にはガラス片と血が舞って、
映画のような光景が、広がっていた。
「え……っ?」
意識を取り戻したと同時、強い痛みが走る。脳が止まるような痛みに、言葉が消える。
血が止まらない。言葉が出ない。
私は横に倒れた。ガラスが体に刺さる。
痛い、痛い、痛い。
体が動かない……目の前が歪んでいく。
「あはは!!サクラさん、サクラさん!!」
瑠々菜は笑いながら、新たな瓶を投げる。
透明な液体が、私に容赦なく降り注ぐ。
液体の正体は、アルコール消毒液だった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
私は唸り声に近い悲鳴をあげた。
全身が焼けるような感覚が、私を襲う。
傷口からじわじわと消毒液が体を蝕む。
意識が薄れていく、脳が止まるような感覚。
体は痛いと言っているのに、
全てを無視するように、脳は何もかも
無視して、動きを止める、不思議な感覚。
「…………!……」
瑠々菜が何かを言っている。けれど、
瑠々菜の声は何一つ聞き取れない。
瓶で殴られている感じとするが、見えない。赤黒い血と綺麗に光るガラス片だけが
目の前を覆い尽くす。
目の前が歪んで、意識が遠くなっていく。
目の前のガラス片が、私の血を浴びて、
夕焼けに照らされて、オレンジに光る。
私は、どこで何を間違えたんだろうか?
毎日毎日、地獄のような日々、
助けなんで来ない。先生だって気が付かない
辛いのに、誰にも話せない。
だって、相談したら殺されるんだから。
全身が痛い。体が動かない。頭が働かない。
まるで、生きてないみたいだ。
いっそ死んだ方がマシなんだろうな。
どうしてこうなったんだっけ?




