第三戦 MADっていう暮らしの始まり(10)
「再確認する。二人を仇に思ってる人もいないし、最近誰かと不快なことを起こしたこともないのか」
「もう三回も言ったよ。今回は最後にして欲しい」
ペンダントライトが一台、テーブルが一卓、椅子が三本と霊長類の生物が三匹。これは取調室のすべてであった。
僕と柳下はテーブルに面して座り、向こうにいるのはこの事件を調査する捜査員。明かりが直接捜査員の頭の上から照らすので、その顔の下半部は闇に隠れて見えなくなっている。捜査員の瞳が僕と柳下の間を動き回り、漆黒の目玉は画像編集ソフトの三つのゼロで調合してきたものとも言えるほど光源が吸収できる魔力も宿ってるようだ。
調査は今膠着状態に陥ってる。捜査員はなかなか僕の答えを信じてくれない上、他の部門に頼んで調査を行うのも断ったんだ。
もちろん、僕たちの身分は依然として取り替えた状態だ。柳下の言動をまねして応対しなければいけない。
が、あることは今でもまだ納得できないんだ。
あの腕章をつけ、ボールペン回しをしてる捜査員は、なんと宮部だ。
「知ってる通り、この学校が特殊のため、日本の警察機関は介入することなどができないわ。理事会が認めるグループだけが尋問や調査などできる。この話も三回目。納得してもらうわ」
びっくり?僕の気持ちは言語で形容できない。もしも宮部の語彙で言えば、多分サプライズかな。
まだ長期記憶に入れてない映像から見ると、爆発が起きてからしばらくすると、先生や生徒など大勢の人が図書館の三階に殺到してきた。ただ大部分の人は惨めな犠牲者がいるかどうかを確認するのに来ただけだと思うけど。
人だかりが事件現場をぐるりと取り囲んで、僕と柳下(すでに変装し直した)はまさに真ん中にいる。抜け出すこともできないでいると、宮部は群衆の後ろから悠々と入ってきた。それから、彼女はある証明書を居合わせた先生に見せてすぐ、先生は取り囲んでいる野次馬を追い払いだした。
その後、僕たちは宮部に管理棟にある取調室に連れてこられた。最初宮部は道案内を担当するだけだと思ったが、相手はポケットから腕章を取り出して袖につけたとたん、すべては想像以上に複雑だと意識した──宮部は理事会調査グループの捜査員だった。
どうして彼女はこの職務に当たるのかについては、ただ図書館でバイトするのとあまり直接関係がないと推測することしかできない。
「あたしが図書館で当番していなかったら、今お二人はまだ部外者に付きまとわれてたかもよ。不満は理解できるけど、せめてお二人がどこまで付き合ったかは聞かないよ」
「BL?そんな──」
話が口から出た拍子に、柳下にテーブルの下で足を踏まれてしまった。
「……ゴホン、世の中に不公平に扱われる縁に対して、俺はただ心からの祝福を祈るだけだ」
「うふふ、相変わらずかたいのね。少し楽にできないの。ジョークだったのに」
「喋りより、今はできるだけ早く今度の事件調査を完了するべきだな」
「あら、ようやくあなたと喋るチャンスを見つけたと思ったのに、そんなに冷たいなんて。じゃ、その傍にいるのに代弁させるの?それじゃあまりよくないでしょ」
『人』っていう単語さえも省略しちゃって。明らかに宮部はまったく佐野戦嵐という身分を眼中に置いてない。
目が依然として自分の太ももをじっと睨んで、柳下は取調室に入ってから一言も話さない。正体がばらされないように沈黙を選んだかもしれないけど、実は本気でイメージの僕を演じてると思う。
「事件の調査に役に立つなら、怯者の意見を求めてもよいと思うけど」
「……はっ?ぼっ、僕?僕に?」
当たり前だ。おまえだろ、さもないと怯者は誰──
──あっ、まさかあんな臆病な態度は、柳下が見てる僕のことなのか。




