(12)脱走
数十分後、フランチェスカは、簡単な報告を艦隊に送った。
コンテナごとトリポリ航宙軍基地への移送依頼を申請し終えたフランチェスカは、ガミーロの船員食堂で、ヴァイオラ艦長と小休止を取っていた。
強襲揚陸艇も海兵隊員数名を残して、艦隊へ返した。
「やれやれ、まさかテロリストが密航していたとはねぇ……」
「艦隊と合流したら、一応事情聴取も受けてもらうわ」
「密航の片棒を担いだ容疑でかい?」
「そう心配しないで。実際のところ、仲介業者からは何も聞いていないんでしょう?」
「まあね。それでも何かしら、お咎めがあるんだろう?」
「うーん、私も詳しくないけど、せいぜい過去の商談と航海記録の提出、数カ月間の報告義務ってところかしら?」
フランチェスカは、端末にダウンロードした諸手続きの要領書をにらめっこしながら言った。
「しばらくは軍の紐付きってことかい?」
「貴女の商売には影響が無い様に、口利きはしておくわ。迷惑かけてしまうお詫びね」
「そう言って頂けるとありがたいねぇ……。ところでさぁ」
「なんです?」
ヴァイオラ艦長はテーブルの上に身を乗り出して言った。
「教えてくれるんだろう? トリポリでの活躍。戦闘機動艇で敵をやっつけたそうじゃないか」
「あはは、まぁ、ね」
最後は体当たり攻撃だったので、あまり恰好のいい話ではない。
そんな話をしていると、突然のくぐもった爆発音と、艦内警報がけたたましく鳴り響いた。
「な、何っ!?」
フランチェスカは思わず浮き足立ち、ヴァイオラは携帯端末で艦橋を呼び出した。
「ドグ! 何事だい!?」
『わかりませんが、与圧デッキで爆発事故のようです!!」
「「爆発!?」」
フランチェスカとヴァイオラは顔を見合わせた。
「しまった! 例のコンテナに閉じ込めた容疑者!」
「ドグ、貨物室閉鎖! 艦橋もロック。誰も入れるんじゃないよ!」
「艦長! 下手に手を出したりしないで、軍に任せて!」
「判ってるよぉっ! ドグ! 聞いたかい、船の皆は持ち場から離れるんじゃないよ、適当な区画に閉じこもってなよ!」
フランチェスカも携帯端末を取り出した。
「フェルナンド、どこにいるの? 状況は把握してる?」
『……しょ、少佐ですか? ヤラれてしまいました。あの野郎! コンテナの外壁を吹き飛ばしやがった』
「怪我したの? そこには他に誰かいる?」
『ペトラとウィンチェスター少尉が見た目重傷です。あっしはちょっと肩を……
「なんで3人ともがそんなところに! 後で報告してもらうわよ、犯人は?!」
『ヤングとか言う奴なら逃げました。追いかけたいんですが、ペトラ達が……』
「中尉は二人に応急手当てを、誰か応援を行かせるわ。貴男は怪我をしているならその場で待機。海兵隊……しまった! さっきみんな艦隊へ戻っていったばかり……」
フランチェスカは焦っていた。テロリストが艦内を徘徊している可能性が高い。 頼りの海兵隊は、容疑者のコンテナ移送のために、艦隊へ牽引機を取りに、貨物検査を完了させた主計課員と一緒に、戻っていったところだった。
「コンテナに閉じ込めたから大丈夫だと油断していたわ、コンテナに何か細工してあったのね」
フランチェスカは苦虫をつぶした顔で言った。
「少佐、火災は収まっているようだよ。医療の心得がある奴に救急キットを持たせて、与圧デッキへ行かせた。後はどうしたらいい?」
「ありがとう艦長。私はテロリストの捕縛を試みる。でも武器なしでどうしようかしら……」
「万が一区画に閉じ込められた時に扉を破壊する斧なら、その赤い扉の中にあるけど、使うかい?」
「斧かついで白兵戦かぁ、それはちょっと……」
フランチェスカが少し引き気味にしていると、ヴァイオラ艦長の携帯端末が鳴った。
『艦長! ドグです! 作業艇発着デッキのエレベーターが動いています!』
「なんだって! 少佐!」
「ドグ副長?人は乗っているの?」
『捕縛したとか言っていた奴です。発着デッキで今、降りました!』
「ありがとう、直ぐ行くわ!!」
艦橋で監視モニターを見ていた副長のドグからの連絡に、フランチェスカは非常にまずい事態になっていると思った。恐らくヤングはこの艦から脱出しようとしている。
「アタイもついて行ってやろうか? これでも少しは腕っぷしには」
「民間人を巻き込むわけには……」
「十分巻き込まれているさね、少佐だけ行かせるのは……チョット」
ヴァイオラ自身からも見下ろされる、小さな体でしかないフランチェスカに、口ごもりながら言った。
「あー、ゴメン。助かるわ」
フランチェスカはヴァイオラの意図したところを、素直に受け取った。
ヴァイオラに案内されながら、発着デッキへ向かう途中で、再びヴァイオラの携帯端末が鳴った。
『艦長! 大変です、奴は作業艇に乗り込んで、発進しようとしています!』
「まずいわ、何とか止められないの?」
「ドグ! 発艦は阻止できるか?」
『無理です、艦長!』
「だとさ、どうするね、少佐?」
「どうするって……」
このまま逃げられてしまうのはまずい。この艦は現在、小惑星帯付近で機関停止中だった。貨物船のTAGていどでは、恒星間どころか惑星間も覚束ないが、小惑星帯に潜伏されたら発見は困難だろう。その間に仲間と秘密裏に合流することは不可能ではないと考えられる。
思案しながら発艦デッキのエアロックに辿りついた時には、既にTAGは発艦していってしまった後だった。
「くそっ! 間に合わなかったわ」
「追いかけないのかい? 少佐」
「追いかけると言っても……」
フランチェスカは、強襲揚陸艇を返してしまっていたことを後悔した。
「少佐の機体なら、追いつけるんじゃないのかい?」
ぽかんとしたフランチェスカは、ヴァイオラと顔を見合わせた。
「戦闘艇の発進には時間がかかるのよ。フライトスーツに着替えてなんかいたら、見失ってしまうわ」
「EVA用だけど、空間対応のスーツなら、そこのラックに入っているさ。戦闘艇のコックピットがどんな仕様かは知らないけど、ヘルメットのレシーバーと酸素ホースのコネクタは、宇宙共通仕様だよ」
「それなら……けど後席が……」
フランチェスカの専用機は、プリフライトチェックを搭載されたAIが自動で全部行うことが出来る仕様だった。とはいえとくに武装はしていない筈だった。固定武装のレーザーは、バッテリー次第で撃てないこともない筈。だがフランチェスカはまだ慣らし運転ぐらいしかしていない専用機で戦闘はしたことが無い。後席のフェルナンド中尉は負傷しているから、乗せるのは躊躇われる。だが、後席に誰か座っていなければ、機体のモーメントが大幅にずれて、フライトコンピュータが対応しきれるかわからない。
悩んでいるフランチェスカに、ヴァイオラが言った。
「後席が空いているんだろ? アタイもダイバーに乗ったことがあると言ったらどうだい?」
「でも……」
「前にも言ったろう? この艦の1番カタパルトはダミーじゃないのさ」
ヴァイオラは片目を閉じて親指を立てた。
「わかったわ。私も覚悟キメたわ。こうなったら付き合って!」
「アイアイ、マァム!」
ヴァイオラは敬礼すると、EVAスーツのあるロッカールームへとフランチェスカを案内した。
”TOPGUN MAVERICK”見てきましたよ、4DXで! いや素晴らしい!! とても面白かったです。前作公開時よりも、CGの技術が格段に上がっている今作は、DLCやACECOMBATを実写でプレイしているような迫力でした。ネタバレになるので書きませんが、あのコミックのあのシーン、やっぱりみんな好きなのねぇwと、思いましたです。
※誤字報告ありがとうございました。早速反映させていただきましたm(_ _)m




