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失恋姉弟  作者: 加納安
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【ネタバレ】

 ねーちゃんがリビングに持ち込んだノートパソコンの前で固まっている。

 さすがに画面をのぞくのはプライバシーがアレかなと思って……ちょっと離れたとこから声をかけてみた。


「なんか悩んでんの?」


 ねーちゃんは俺にちらりと視線を向けて、それから「はー」とわかりやすくため息。あ、マジで悩んでんだ?


「これなんだけどさあ……」


 画面を見るように手招きされて、俺はじゃあ、と遠慮なくねーちゃんのパソコンをのぞく。

 そこには俺も使ってる、トークアプリが表示されていた。


「ほらこれ、メッセージ送るときの書式なんだけどさ、いろいろあるよね? 『~~』と『~~』で挟んだら、間に入れる言葉が打消し線になったり。『 ** 』だったら強調して太文字になったり」


「あー、ある」


 俺はあんまり使わないけど、使ってるのを見たことはある。


「その中にさあ、これ、この、縦線二本のやつ。これで囲んだら、ネタバレ防止になるみたいで」


 そう言ってねーちゃんが見せてくれたのは『||』だった。……この記号って、なんて読むんだ? と、俺が首をかしげてたら、ねーちゃんはまた、「はー」とため息。


「これ使って、あの人に気の利いたメッセージを送りたいなあと……」


「はー?」


 俺の「はー」は語尾上向きで出て行った。なんだよその悩み。めんどくさいな。


「||■||んことか||■||んことかしか、隠したいの思いつかねーけど」


 思いついた言葉をすぐ教えたら、ねーちゃんは鼻で笑う。


「へっ、相変わらず脳みそが小学校低学年……」


 しかしそう言いながら笑っているねーちゃんも、きっと同レベルだと思う。

 そしてねーちゃんは、俺を般若の顔で睨んで言った。


「そんなの送ったら大事故だから。ふざけてると||■■■||よ」


 わー、ねーちゃんすごい使いこなしてるし。……まあたしかに||■||んこはまずいし。ぜんぜん気が利いたメッセージではない。


「もう、大好きとかLOVEとかでよくね?」


 めんどくさすぎて、ねーちゃんが一番言えない言葉を選んでみた。そしたら案の定、ねーちゃんは顔をニタニタさせながら机に額を打ち付け始める。


「そんなの無理! 絶対無理!」


 無理! と言いながらもなんか幸せそうで、俺はやっぱりめんどくさいなあ、と思った。


「隠したいけどバレてもいいことで、相手が笑いそうなことでいいんじゃね?」


「……あんたのせいで||■||んこしか思いつかない……最悪……」


 机に突っ伏して文句を言うねーちゃんを残して、俺はその場を離れる。

 どうやら今の俺では、いいヒントが出せそうにない。

 俺だったらなんて送るかな。隠したいけど伝えたいこと……?

 だったらやっぱり||■■■■■■■■■■■■■||とかだから……あー、だめだな。ネタバレ禁止。


 これはねーちゃんには、一生解除されなくていいやつだ。


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