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第17話 シュタナートとイシュア

 シュタナートはイシュアの目の前で片膝をついて跪く。


 相手が明らかに上位者なので、結婚を申し込むならこのくらいの礼儀は必要であろうと思ってのことだ。

 

「イシュア、私の妻になって貰えないだろうか?」


 シュタナートはイシュアの目をしっかり見て、真剣な表情でそう言うと、利き腕である右手を差し出した。


「うーむ、このままの状態では私の方がまるで偉そうな感じになってしまうな」


 そう言った後、イシュアは膝を曲げてしゃがみ、片膝を曲げて跪いているシュタナートより、若干目線が低くなる。

 その行動を見てシュタナートは彼女がわざわざ高みから降りてきてくれたのだな、と思った。


 そしてイシュアはシュタナートの差し出された手をしっかりと両手で握る。


「良くぞ言ってくれた、こんなに嬉しいことはない。前世は敵であったが、今世は最高の味方となろう。望んでくれるなら来世においても……」


「私も叶うのなら永遠の伴侶を望んでいる。イシュアが良い男を見つけて、見限らない限りは是非そうして貰いたいな」


「以前より卑屈にはなっているな。少し可愛いらしくはあるが。まあ物心ついてから過去の自分に対する劣等感があるようだから、無理のない事ではあるが。だが安心してくれ、シュタナートがシュタナートである限り決して見限る事などない。私が心揺れる男などいないと思うが、仮にいたとしたら迷いを排除するためにその者を殺害しよう」


「相変わらず物騒だな」


「だがシュタナートにとってはとても安全だ。たとえ身を挺してもシュタナートを守ろう。それに想像するのも辛く悲しいが私を見捨てて他の女行ったとして、それは私の力不足ゆえ、シュタナートを害するようなことはせん」


「至れり尽くせりだな。勿論、こちらもイシュアを悲しませたり、辛い思いをさせるつもりは毛頭ない」


「それだけしても良いと思う存在だ。シュタナートは私とって決して代替え出来ない存在のうえに望みを叶えて現れてくれた。というか色々言い過ぎて肝心の返事をしていないな」


「では、改めて。申し出どおり私はシュタナートに妻になろう。あらゆる面で最高の妻になることを目指す。以前も言ったおとり、基本的には全てシュタナートの言う事に全て従おう。しかしシュタナートの身の安全等があるので、完全に全てがというわけではないが」


 結婚の承諾がなされた時、シュタナートは魔力を含む力が湧いてきたように感じた。


「良い返事をありがとう、我が愛しの妻であるイシュアよ」


「これからは私はイシュア・ジオールとなるな。まあ名乗る機会はあまり無いかと思うが」


「まあ、そうだな。さて、このままの体勢では、アレなので立ち上がるとするか」


「うむ、夫に従おう」


 二人は手を携えて、一緒に立ち上がる。

 そして暫し見つめ合った後、互いに体を抱きしめて口づけを交わした。

 先程よりはあっさりしているものだったが、舌を絡めた濃厚なものだ。

 下半身にも変化が訪れ、密着してたイシュアも気が付いて、呆れたような満更でもなさそうな表情を向ける。


「しかし夫婦になったは良いが、何をしたらよいものか。君の両親から許可は降りんだろうし」


 シュタナートは誤魔化すように言う。

 だが彼の頭に中は近いうちに行われる、目の前のとんでもない美少女との性交のことでほぼ頭がいっぱいだ。

 まあ、イシュアをどう旧魔術師団の仲間に紹介するかなども少しは考えてはいるが。


「まあ、降りんだろう。シュタナートには特別な魅力があり、私の両親にもわかるだろうが、年若く、あまりに突然ゆえに無理だろうな。だが折角夫婦であるのに親の目を盗んでちょくちょく会うはまどろっこしい。なので駆け落ちした方が良いだろう」


「駆け落ち? 君はそれでもいいのか? 確かに思う存分、君と過ごせるのは私には魅力的だが」


「ああ、元よりそのつもりだ。駆け落ちする旨が書かれた置手紙とこれまで育ててくれた礼である金銭も置いてきてある。幻術で隠しているので、見つかるのは明日以降になるが」


「うーむ、どうも全て君の手のひらで転がされているようだな」


 イシュアは全て従ってくれると言ってくれているが、それでようやく対等に近い関係になるようにシュタナートには思えた。


「出過ぎた真似をしてしまったか?」


「いや、君の行いは私の事も考えてのことというはわかっている。まあ、駆け落ちするにして君の両親に挨拶に行こう。さすがに夫婦ではなく恋人として挨拶させてもらうが。やはり顔も知らない相手との駆け落ちだとより不安になると思う。それに幸いにも私は人から好意的に見られる性質のようだし」


「うむ、では私の家に行こうか。しかし両親にシュタナートを会わせるとなると、少し妙な気分になる」


「君にもそういう感情があるとは少し意外だな。挨拶を済ませた後はドラクル一家にも別れ言いに行かんとな。その後に旅立って、ゆっくりで出来る場所を探して、しばらくは二人きりで過ごそう」


「うむ、しばらくは思う存分ゆっくりと二人で過ごしたいな。その後はどうする?」


 イシュアが期待に胸を膨らませた表情で聞いてくる。


「そうだな、やはり自身の魔力を復活させる事に力を注ぎ、いずれは大魔導師と呼ばれる程になりたいものだな。イシュアにも私の魔術の知識や経験を伝授し、二人で助け合いながら魔術の研鑽をしたいものだ。それに二人の子供も欲しいと思っている」


「そうだな、自身を高めることは非常に重要なこと、二人で共に助け合って成長していきたいものだ。それに私も出産は是非経験したいと思っている」


「さらに魔術師団も復興したいものだな。その魔術師団をかつてのように強大にして、いずれは打って出たいとも思っている。国々を支配していき、この帝国すらも、そして大陸全土、さらには世界を」


 かつての野望が鎌首をもたげる。

 今のシュタナートには大それた野望ではあるが、イシュアと共になら不可能で無い様な気がしてくる。


「フフ、実に面白そうで、そしてやりごたえがありそうだな」


「それからだな……」

 

 シュタナートとイシュア、二人はその後も楽しそうに自分たちの未来のことを事を語る。


 そして裏路地を後にし、手を携えて共に新たな道を歩んで行ったのであった。


 

これにて若鳥の章は終了です。

物語全体としても後もう少しで終了になります。

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