第15話 会談
シュタナートはイシュアや部下達を伴い、イスカリア王国の王宮内を歩いていた。
イスカリア王国との会談のためである。
時折、出会う人々と挨拶と軽い会話を行う。
それらの人々から媚びられ、恐れられるのはいつもの事だが、今回のシュタナートらはいつものより、腰が低く、友好的な雰囲気だ。
そしてイシュアを連れているので、その美しさにも感嘆される。
いつもならイシュアは不愛想か粗暴な振る舞いをするのがだ、今回はいつになく大人しい。
イシュアは人前だといつもフードを被り、顔を見えにくくするが、今回は魔術師団内部では無く、外部なのでさすがに失礼に当たると思い、フードを被らないように頼んだのだ。
すると今回は反抗もされずに受け入れられた。
シュタナート的にはとびきりの美女を連れて歩くと、羨望の眼差しを受けるので、俗物的だがやはり気持ちいいものである。
とは言え、今のシュタナートは美貌そのものにそれ程の重きを置いてはいない。
最愛の者の容姿が特別優れていなかったからだろう。
シュタナートらは王宮をしばらく歩いていると、ある一団に遭遇する。
中心に恰幅の良く、身なりの良い商人風の柔和そうな男がいて、複数のイスカリアの重臣が集まっていて、和やかな雰囲気で会話を楽しんでるようだ。
その中心にいる男はシュタナートの良く知る人物だ。
一団がシュタナートたちに気付くと緊張した雰囲気となり、シュタナートたちに対して、一礼を行う。
「主がいらしので申し訳ございませんが、これにて失礼をさせて頂きます」
中心にいた男が周りの者にそう言って一礼し、その場をを離れ、シュタナートたちに歩み寄ってきて、一礼して笑顔で言う。
「お着きになりましたか総大導師、そして皆様方、本日はよろしくお願いします」
「先についておったかウォルトン財務官、では手筈通りで頼むぞ」
彼はウォルトン財務官、大導師とほぼ同格で財務、経済活動の統括責任者にして外交も主任務としている。
今回はシュタナートの補佐として、イスカリア王国との会談に共に臨む。
彼は相手方にも十分な配慮をして交渉を行うので、ついついイスカリア王に対して強気にでてしまうシュタナートの補佐役として適任である。
「かしこまりました総大導師。それにしてもどこの美しい方と思ったら、今回はイシュア導師捕、失礼イシュア術師長もいらしておりました。こんにちは、イシュア術師長」
ウォルトンはイシュアに対しても笑顔で声を掛ける。
「ああ」
イシュアは彼にはいつも通り、不愛想に返事したのだった。
「不愛想ですまんな」
「いえいえ、総大導師。位階を間違えるのは失礼な事ですし、まあいつもの事です」
しばらくシュタナートはウォルトンと会話をしながら会談の場を目指して移動する。
ウォルトンは楽しませる会話が上手いので、シュタナートはいい気分になる。
一行が歩いて行くと、複数の兵士によって厳重に警備された部屋の前に着く。
「シュタナート・ジオールとその共の者だが」
「ようこそお越しくださいました、どうぞお入りください」
「私と共に付いて来るウォルトンと各導師長以外は適当に休んでおいてくれ、特にイシュアはいい子に頼むぞ」
「かしこまりました」
「ふん」
「では私たちは中に入るか」
シュタナートは兵士によって開けられた扉をウォルトンと3人の導師長を連れて部屋の中に入る。
中に入ると、ファイサル王とその家臣たちがシュタナートらを立ち上がって出迎える。
「ようこそ、おいでくださいました、ジオール総大導師」
「お久しぶりです、陛下、今回も有意義な会談になる事を願いしたい」
シュタナートとファイサルは握手を交わし、それぞれの席に着く。
テーブルの中央にシュタナートとファイサルが向かい合うように座り、その左右の席にはそれぞれの部下が座る。
シュタナートの右隣りにはをウォルトン、ファイサルの右隣りにはイスカリア王国宰相が座した。
「それではイスカリア王国と永遠たる係累魔術師団の会談を始めましょうか」
ファイサルがそう言うと会談が始まった。
基本的にはシュタナートがファイサルの私室で以前、二人で話合った議題の内容を踏襲していた。
最初の方は魔術師団側の方に利が大きい会談の内容であったが、ウォルトンがイスカリア側にも利があるように調整をしていく。
最終的にはイスカリア側にも十分過ぎる利が確保され、会談の最初の方ではかなり厳しい表情であったイスカリア側だが、後の方になるに従い、少しずつ緩んでいった。
「今回は双方ともに利益の出る良い会談になったな」
会談の終了に差し掛かり、シュタナートがそう言う。
むしろ魔術師団側の方が譲歩している内容であった。
「毎回、今回のように実りのある内容になる事を望みますよ。用意してました宴席も良い雰囲気で行えそうで安心しました」
ファイサルが笑顔で言った。
イスカリア王国側にとっては祝宴と言ってもいいだろう。
「陛下、それでは今回の会談はこれにて終了で、再び宴席でお会いすることにしますかな」
「今回は随分、美しい娘連れて来ていると聞いて、目にするのはが楽しみです」
「陛下、申し訳ないが、もし彼女の事を気に入ったとしてもお側にやる事は出来ないので、その点はご留意頂きたい」
「随分、お気に入りの様ですな。まあ目を楽しませて頂きます。それでは宴席で会いましょう」
「では、それでは」
その会話の後、二人は一礼し、魔術師団側が席を立ち、イスカリア王国側がそれを見送る。
会談のあった部屋を出てしばらく歩いているとウォルトンが話かけてきた。
「こちら側が譲歩し過ぎましたかな?」
「いや、あれで良い。今はもう一方の大口取引先との対決が濃厚だからな。短期的には損であろうとこっちとは少なくとも今のうちは仲良くしておきたい」
もう一方とはヴェルゼ共和国執政府の事である。
ヴェルゼ共和国執政府はガゼリア帝国や深淵の理魔術師団との秘密裏の接触が確認がされており、将来的には争いのなる事がかなり濃厚だ。
「確かにそうでしたな」
「この後の宴席でもあまりあちらの機嫌を損ねぬように楽しもうではないか」
シュタナートは機嫌が良さそうに言った。




