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せかい  作者: ななし
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空と夜留のおはなし

『百鬼夜行の神になるまで』




空はハーフであった。

日本とイギリスの血を引いた男の子。

輝く金色の髪に空のような青い目はまるで天使のようだ、と誰もが褒めたたえた。

そう、天使だと言われるけれど彼はれっきとした人間である。

だけど空にはお友達がいなかった。

何故かわからないけれど、お友達が1人もできなかった。

幼稚園に言っても、どうしても空は存在が浮いてしまうのだ。

大人達が天使のようだというから、もしかしたら本当に天使にでもなってしまってしまったんじゃないかだなんて。

そんな空に、ある日異変が起きた。

「……あれ?」

彼は、男の子であったはずだ。

だが、突如青い瞳はピンク色と化して、あったはずの男性性器が突如消えていたのである。

空は、小さいながらもこれはありえないことだと分かっていたから、誰にも言わずにいた。

大変だ。

こんなこと、ふつうじゃないと。

桃色の瞳が青くなれば、いつもの体に戻り、はたまたなんの予知もなしに青い瞳が桃色になれば体は少女の体つきに化していた。

とんだメルヘンだ。

隠し通していたはずの空は、ランドセルを買う前には母にバレてしまった。

その頃の母は、夫に逃げられてヤケになっていたのかもしれない。

「あなたのその気持ち悪い体のせいで、あの人は逃げたのよ。」

もちろんそんなの嘘だ。

夫は空がそんな体つきなのを知るはずもない。そもそも瞳が変わるのだって、いつも人通りが少ないときに変わるから瞳の色もバレずにすんだのだ。

空は、母のその顔を見て絶句した。

あんな顔を見た事がない。

まるで無機物を見るかのごとく、零度のように冷たいその瞳はお前が悪いんだと言わんばかりに空をせめたのだ。

こんなこと、あっていいはずじゃない。

幼い空は、どれもこれもおかしいだなんて気づくことが出来ても無力だった。

このままでは、母に消されてしまう。

空は外へ向かって無我夢中で走り続けた。

森の中に行こう。

そう、森の中に行けば大丈夫。

そう思いながら、確かにその小さな足はぱたぱたと走り続けたのだ。

夕暮れになる頃には確かに森の中にいた。

母はもう追っては来ない。

空はため息をついた。

このまま死んでしまうのも1つの案かもしれない、と。

弱りきっていた空に、ひとりの手が差し伸べられた。

「あなた、どうしたの?」

それは過去に聞いたことのあるような、母性に包まれた優しい声だった。

顔を上げると、地面にまでつきそうな白の髪の毛に青と黄色のオッドアイという、非現実的すぎる美しい女性がいたのだ。

頭にはひとみと同じ色の四角い輪っかが2つ、宙を浮いてる。

「……ぼく、」

「ううん、やはり何も言わなくていいわ。ねえ、貴方、私の子供にならない?」

「ぇっ。」

怪しい人にはついて言っちゃダメよ、なんて過去の母に言われたけれど。

「私ね、夜留(よる)っていう息子がいるの。貴方とお友達になってくれると嬉しいな。」

お友達……!

今までお友達なんていなかったのに、と空は目を輝かせた。

そして女の人は、優しそうな顔をするから。

空はこくん、と頷いた。

「私の名前はクリスタルっていうの。気軽にクリスタルでもお母さんでもいいからね。」

こうして、空はクリスタルの元で暮らし育つことになった。


夜留は空を見て目を輝かせた。

「俺、ずっと森ん中で住んでるから幼なじみいなかったんだよな!来てくれてすっげー嬉しい!」

はつらつとした子で、綺麗な子だ。

確かに家は森の中で、しかも古びた祠の中だった。

ここでクリスタル母さんは、ハートを4つ所持する神様だと知って驚愕する。

神様に育てられて、ぼくの友達は……神様の子供だなんて。

クリスタル母さんは言った。

「あなた達が大きくなったら、ハートをひとつずつあげる。そしたら、あなた達は神様としてこの街を守ってね。」

正直大きくなってから言われたこの言葉は、空はあまり聞きたくなかった。

だって、この街は都合のいいように空を褒めたたえたくせに、あっけらかんと捨てたに違いないから。

夜留は笑った。

「どんな君も君だよ。」

空は、その言葉に目を丸くしたのだ。




「はぁあ。」

ソラナキは過去を思い出して、祠にて笑った。クラリックはそれを見て首をかしげた。

「どーしたの?」

「……んーん。なーんでもないっ。」

ハートを貰った時、なんと息子に残りのハートを預けてもらうだなんていって消えていった母さん。また彼女に会うには、きっと神様としての役目を果たさなくてはいけないときだろう。

母さんがいなくなった時少しグレてしまったボクは妖怪達にちょっかいをかけていた。

そこからどうなったのか、いつのまにやら力をつけすぎたらしく百鬼夜行の王になっていただなんて。

ソラナキ……空亡。

それは、人々の運命、天中殺の中心となるもの。

ボクは天中殺を操るものになった。

おかげでハートの使い方は、街を守ると言うよりはならず者をまとめる力になったけれど。

この黄色いハートって、そんな力があるんでしょ?母さん。

ハートを貰った時に、神様としてもらったこの名前。クラリックもそうだね。

「……夜留、いい名前だなぁ。」

「ふふ。突然どうしたの?」

「今日はちょっと、昔みたいに子供らしく遊んでみない?」

クラリックは目を丸くして、嬉しそうに笑った。

「ふふっ、喜んで。」

母さん。

ほんとーに、ありがとう。

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