あの頃の夢
『 わたしたちは人間だったの。 』
私はいじめにあっていた。
セーラー服をボロボロにされたり、筆箱をゴミ箱に投げ捨てられたり、トイレに閉じ込められたり。
私の名前は軽井瑠璃香。(かるいるりか)
2つの3つ編みをお下げにしている。
いじめの理由はよく分からなかった。
でも多分きっと、なんとなくだと思う。
なんでいじめにあったのかな。
理不尽すぎて怒りを感じていたけれど、もう諦めてしまったのかよくわからない。
学校に行かないなんて選択肢はなかった。
義務的に行かなくちゃいけない。
そんな暗黙のルールが私の頭の中で根付いていたのだ。
こんな辛いなら、死んでしまいたい。
死にたい。
もう、生きることを許して欲しい。
死んで、しまおう。
そう思って屋上の縁に私は立った。
その時。
─本当にそれでいいの?
頭の中で知らない声が聞こえた。
「……だれ?」
─きみを、守りたいひとかな。
それから、私の中には私を守るための人格が登場したのであった。
あの子は男の子みたいだった。
私とはまるで違くて、大人しくて冷静な子。
もともと私は明るくておバカさんな性格だったから全然ちがうあの子と気が合うことに驚いてたの。
私がおやすみをすればあの子が代わりに私のいじめの仕返しをしてくれた。
代わりに私のことを守ってくれた。
だから私はあの子が大好きだ。
好きで、あの子がいれば私は眠っていられるから。
このままずっと私の幸せが続いて欲しかった。
けれど。
あの子はいつしかおかしくなってしまった。
私のいじめを諦めない女達に尾が切れてしまったらしい。
なんとあの子は刃物を持って女共を殺そうと企んでいた。
私の手が汚れてもいい。
けれどあの子の手が汚れてしまうのは、私は耐えられなかった。
「だめ、だめ、だめよ。」
「僕は全てが許せない。どうして君は幸せになれない?」
「貴方がいてくれるだけで、私は幸せなの。だからこんなことはやめて。」
「君の幸せに僕は存在するべき人格ではない。その為には君の全てを邪魔する人間を殺さなくてはいけない。」
「だめ、だめ、だめよ。」
あの子はおかしくなってしまった。
だから、もうとめられない。
止められないから、これは仕方ない。
私は意識を体に一瞬だけでも取り込ませた。
その刃物を私は、自分の体内に滑り込ませた。
そして、刃物は私の心臓を貫き。
私とあの子は死んだ。
目を覚ましたのは、誰かの声だった気がする。
「ねえ、ねえ。」
とても低い、あの子よりも低い声だ。
目を覚ますと、赤い目をした優しい笑みを浮かべた青年がこちらを見ていた。
私は死んでないのか?
そう思ったけれど、青年は笑った。
「君たちは死んだの。だから、君にハートをあげる。ずっと見ていたよ、君たちならかみさまに相応しいかもね。」
私の姿は、オレンジ色に変えていた。
驚いたのは、あの子の姿が実在として存在していた。茜色のあの子。
「……俺といっしょに、おいで?」
私達は、……何を望んでいたのか。
────
──
─
「……はっ!」
ガバッと上半身を私は起こした。
「……????」
あたりは真っ暗だ。
そして私の寝相でぐしゃぐしゃになった布団。
「……ゆめ?」
どうやら夢を見ていて、変な時間に起きてしまったらしい。
しんと静まり返った真っ暗な辺りがとても怖く感じた。
なんて夢を見てしまったんだ。
私は汗をかいていて、胸がバクバクと鳴っていた。
……心細い。
私はその場から立ち上がり、カルカンの寝る寝室にひっそりと入った。
あの子は眠っていた。
私達はあの時人間だった。
あなたは私を守りたいがために、あなた自身を狂わせてしまった。
今更そんなこと思い出して、どうなるというの?
「……。」
ぐっすりとあどけない顔で眠るカルに私はふ、と安堵した息が零れた。
「ありがと、カル。」
私はカルの布団の中にガサガサと入ると、カルはううん、と唸るもまた寝返って眠った。
カルの体温に私は安心して、またぐっすりと今度はいい夢を見られそうだ。
ずっと私達は一緒。
ありがとう。
今度は私に守らせてね。




