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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
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3発目 今時決闘を申し込む人はまだいるのだろうか。


今日の昼のあれ、お前見たか? 見た見た!すごいスタントだったよな! 映画でも作って見せてくれるのかなあ? そうだと良いよね!


放課後、教室でクラスメイトたちは今日の昼の話題で持ちきりだった。聞いた限りでは黒服たちと戦っているシーンを生徒が撮影していたと言う。そのスタントが本当に戦闘をしているように見えたらしく、すごいと評判になっていた。


「実は俺、その撮影を携帯で撮ってるんだ」

「マジか?見せて見せて」


ほほう、それはありがたい。

「それ、あたしも見て良いか?」


映像を撮ったというクラスメイトに寄り、映像を見せてもらった。


「おおっ!?」


「ど、どうした!?北野?」

思わず大声で驚いてしまった。何故ならそこには見知った顔が映っていたからだ。





 翌日。


 杉田宅の食卓にて。

 みんなは朝食と言えばメインに何を食べる?

 パン?白米?卵焼き?目玉焼き?

 俺だったら作る方がオススメだからパン以外だな。


「お兄ちゃん、昨日学校で良いことでもあった?」

「うん?そう思うか?」

「だって今日の朝食、なんかいつもより少しだけどうまくなってるよ」


俺は今日も朝食の用意を担当し、メインとして卵焼きを作ったのだが、少しはりきって作ったのが妹たちにバレたようだ。


「う〜ん、なんつうか久々に体を動かしたってところかな」

「おいギラ。まさか学校で不良デビュー果たしたんじゃないだろうな?」

「いや待ってくれ親父」

「お兄ちゃん・・・いくら二度目だからってヤンキーになるなんて」

「そうだよお兄ちゃん!私たちだって自慢のお兄ちゃんが不良だなんて言いたくないよ!」

「待て待て待て!そんなことにはなってないから。あとありがとう!」

「"そんなことにはなってない"ってことは、暴れたことは否定しないのギラ?」

「・・・・学校でできた新しい友達を助けるためにちょっとだけな」

少し間が空いて、予想した通りのセリフが出てきた。

「ベタだな」

「「「ベタだね」」」

「そだねー」


俺も賛同した。全くのベタな展開だった。今思い返してもあの財閥の息子のやり方に呆れるだけだ。そしてそれに乗った俺も馬鹿。


「入学して次の日に喧嘩か。で?その新しい友達ってのはどんな奴なんだ?」

「男女二人だけ」

「「男女・・・・ハァーやれやれだぜ」」

「なんだ?二人とも」

妹二人が何故かよく知っているオラオラな能力持ち不良高校生みたいな反応をした。

「お兄ちゃん。またやっちゃったんじゃない?」

「サラッとやっちゃうからね。お兄ちゃんは」


・・・妹二人の言っていることの意味がわかってしまっている自分が恥ずかしい。


「多分そんなことはない。ただの友達。そろそろ行ってくるわ」


話を切り上げようと朝食を早く食べ終わって、学校に行こうと準備を始める。

「あ、ギラ。そう言えばリークとデニーは入学できたの?」

「ああ、なんとか無事入れたってよ。LUMEでそう言ってた」








教室にて。

「ギラ、おはよう!」

「ようギラ!」

「遠慮無しだな、意外とお前ら」


 自分で言っておいてなんだが、普通クラスメイトを名前呼びするには抵抗があるはずなのに、二人とも元気良く開口一番に呼んできた。


「高校初めての友達なんでしょ。私たち」

「呼んでほしいならちゃんと呼んであげるのが筋だろ?」

「それは本当にありがと。ところで二人とも朝どうだった?ここに来るまでにたくさんの視線があったんだが」

 自分に視線を向けてた何人かの生徒が口にしてた内容を聞いてたら、前回の出来事と同じことを言っていた。どうやら噂が思ったよりも早く広まったみたいだ。


「いや?俺は特に何も無かったけど」

「私も」

「う〜ん、まあ実際暴れたのは俺だけだしな」

「それにしてもその強さ、どうやって手に入れたんだ?」

「ギラって能力があってこそ強いの?それとも元々体を鍛えているから強いの?」

「おいおい落ち着けって。なんでそんなに俺のこと知りたがるんだ?いつかは話すって言ったろ?」

「俺たちは今、知りたいのさ。あんなモン見せられたんだから」

「そうそう!そして私もあんなふうに・・・・」

「あのー杉田君!この人、君に用があるって」


突然クラスメイトの誰かが、教室の出入り口でギラを呼んできた。

よく見たら、赤色で長髪、ギラと同じくらいの身長、まさに美女と呼ばれて当然のスタイルで、そしてどことなく男勝りな顔つきの女子生徒がこちらを伺っていた。

呼ばれた当人のギラは少し驚いてから何故か笑みを浮かべてどこか懐かしんでる様子だった。そしてその女子生徒は堂々と教室に入ってきて、


「あたしは北野きたの奈々《なな》。杉田義羅、単刀直入に言う。今日の放課後、あたしと喧嘩で勝負してくれ!」

・・・・・この人、いきなり何言ってるんだろう・・・・。

 これって要するに決闘の申し込みってやつか? 昨日の話聞いて、勝負したくなったのかな? でも決闘の申し込みって、今だにあるんだなー

色んな話し声がする中、ギラだけは申し込んできた彼女を真っ直ぐ見ていた。

「わかった。場所は運動場でいいな?」

「決まりだな」

ここに、放課後の二人の決闘が成立した。



「あの北野奈々って言う女、知り合いか何かか?」

「一応そんなところだ。会ったのは一度きりだけどな」

「そんな人の決闘の申し込みなんか、何であんな簡単に受けちゃったの?」

「あんな正面から堂々と申し込まれたら断れないだろ。・・・・それに前に会った時よりどんなに強くなってるか見てみたいしな」


 昨日、自衛隊上がりの黒服多数を相手に(変わった)木刀一本で無双したギラが言うなら北野奈々は相当強いのだろう。だが彼女の目的が何なのか正直分からない。ただ強さを求めてるだけなら、強いと噂されているギラに挑むのもわかるが、見知った相手に挑むにしては朝の決闘の申し込みは少しおかしい。


「でも北野さんって、前ギラに会ったことを忘れてるんじゃない?朝の時なんか他人行儀みたいだったし」

「言われてみれば確かに。フルネームで呼んでたし、どうしてだ?ギラ」

「あれは以前会った人間が”杉田義羅”という人物かどうかを知らなかっただけさ。その時俺は本名を名乗ってないし」

「「なんで?」」

「それはまた今度」

「またかよ!」

「じゃあ、理由はただ勝負したいだけなの?」

「いや、あれは確証を得るためだと思う。前に会った人が俺かどうかを」

「何だそりゃ?そのためにわざわざ喧嘩するって」


それでもまだ疑問が残る。ならなぜそんな確証が必要なのか。私はまだ納得がいかなかった。

 心の奥深くで、モヤモヤした何かを感じながら私は授業を受けることになった。



 そのころ2年生エリアの教室にて、


「おーい神田!今日は下級生にちょっかいかけないのか?」

 と言いアハハハハと笑いながら出て行く数人のクラスメイト。

「昨日の一件ですっかり軽く見られるようになったなあ、神田」

「うるさいぞ北条ほうじょう・・・・」

 2年生の神田利助は二人の同級生と共に自分たちの机を囲んで座っていた。昨日の一件とは、わざわざ自衛隊から引き抜いた自分の使用人がたった一人の下級生にメチャクチャにされたことだ。

「いや、そもそも能力者の女子校生を堕とすためだけにそんなことするか?普通」

「しょうがないだろ、実際本当に強いんだから。最悪力づくで”私は神田利助の所有物です”契約書にサインさせてやろうって考えてたんだから」

「あの流れで契約書!?」

「そこは“へへへっ、体に直接教えてやるぜ。お前は俺のモノだってなぁ!”的なエロ展開じゃないのかよ、がっかり・・・・」

「読者の声は代表するなよ。北条、高井たかい、お前ら俺をなんだと思ってるんだ?」

「「漫画や小説でよく最初に主人公にしてやられる役」」

「的確すぎるわ!! あともう"やられた"だ!」

「それ、言ってて悲しくないのか?」

「うるさい!悲しいを通り越して悔しいんだよ!」

「じゃあこれから何かするのか?神田」

「このままやられた、で終わるつもりなのか?」

「そんなわけない。なんとかあの杉田義羅をギャフンと言わせてやる方法を考えてやる...」

「・・・・それ死語だぞ」

「まだ使ってる奴がいるとはな・・・・・」

「うるさい黙れ!」


「おーい!大変だ!」


さっき神田を笑っていたクラスメイトたちが、なぜか急いで戻ってきた。

「なんだなんだ?」「どうしたの?」他のクラスメイトが質問をした。


「あの杉田義羅が、同級生の女子に決闘を申し込まれたんだってよ!」

「「「なぬ!?」」」


三人組が顔を揃えて驚いた。



そして約束の放課後、運動場にて、


「始める前に、一つ良いか?」

「良いけど何だ?杉田」

「人目に付くことを考えて、俺はこの木刀で戦うからな」

「・・・・・わかった。でもそれで私に勝てると思うのか?杉田」

 北野は少し不満げに聞き返した。


「そこはお前が満足する結果を残すから大丈夫だ」



「あれってどういう意味かな?」

「なんとなくだけど、要するに本気は出せないってことだと俺は思うな」

「それって、木刀で戦うことが本気じゃないとしたら、何で戦うことで本気なのかな?」


ギラ本人は自分の能力が創造能力だと言っていた。その理屈で言えば、本物の刀を出すことだって可能なはず。そうだとすれば確かに人目に付くのも無理はない。


「大体、連載始まって早々主人公が銃刀法違反で捕まるなんて展開あっちゃダメだろ?」

「確かに!」

ギラに諭されて納得してしまう北野。

「「いや、木刀も普通ダメだろ(でしょ)!」」

私と鈴村で二人にツッコミをいれた。

「「よし!始めるか!」」

「「無視する・・・・んなっ!?」」


ズドン!


一つの轟音とともに運動場の中心から一気に立ち込める砂煙。

一瞬、何が起きたのか分からなかったが、砂煙が晴れていくとそれがわかってきた。ギラと北野は各々木刀と拳でのぶつかり合いを繰り返していた。その戦闘はもはや人間同士とは思えないほど凄まじい。二人のすぐ下には衝撃波でも放たれたごとく地面がえぐられ跡ができていた。大体察しが付いた。恐らくあの北野の仕業だ。渾身の一撃をかわされてそのまま地面にあたったのだろう。しかし、その一撃だけで地面をえぐるということはとんでもない威力、当たればギラはただでは済まなかっただろう。でもそこは複数の達人相手に無双していたギラ。今もなお北野の拳をかわしたりいなしたりして攻撃を回避し続け、木刀で切り伏せようとしている。北野もまた木刀の一撃を数発受けているも、それを意に介さず拳の雨を繰り出している。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」と叫びながら。




どこかの荒れ狂う大海原に浮かび雨に打たれながら、

打ち合い続ける複数の戦艦、

その中の一隻の上で薄気味悪い"何か"複数を相手に、殴り、斬り込み、撃つ影が二つ。

かたや一方はその身一つで迫り来る"何か"を吹き飛ばし続け、かたやもう一方は右手に軍刀、左手にコンバットマグナムM19と二つの武器を巧みに操り、"何か"を倒していく。

その二人は互いの戦いぶりを見て"なかなかやるな"と言わんばかりの笑みを浮かべなお戦うが、そんな時、乗っている船と同行する他の一隻からその二人を狙撃しようとする影がズギューンと音を立て、光を放った。



「あの後、何があった、杉田義羅!!」

戦闘中に北野は出会ったあの時のことについて聞いてきた。

「あの海戦が終わってから、お前の活躍とかの情報が全く無くなった!それまではその噂で持ちきりだったのに、別のとある“賞金稼ぎ”のことしか話題が出てこなくなった。一体どこで何をしていたんだ?」

「・・・・・俺がその本人だって確信したのか?」

「ぶつかってみて大体確証に繋がった。私とここまでやれるのはあの時のお前しかいない!」

「じゃあ返答は"何も言えない"だ」

「まさか・・・・あの時あたしを庇ってくらった狙撃が原因ならそう言ってくれ!」

 北野は少し表情を曇らせて言った。どうやら当時のことを悔いてるらしい。


「だったらどうなんだ?」

「本当にごめん!あの戦いに参加した自分がバカだった!それだけじゃダメだと思って決闘を申し込んだ!これならお互い本音をさらけ出せるから!」

それからお互い、一旦攻撃をやめて見つめ合った。

「・・・・姿を消したのは別の事もあったからだ。そもそも俺が噂されてないからって何も不利益はないし大したことでもなかった」

「あたしが納得できないんだ!気遣いは無しで頼むから教えてくれ!5年間も行方が分からないままでとっても不安だったんだ!」


そこまで言わせるほどの彼女の想いが何なのかがわかってきた。

しかし今、彼女に詳しく説明することはできない。

いつかは話すが、今は言いたくない。

でも彼女には責任は無いということを信じさせなければいけない。

俺はそう考えながら少し距離を置き、木刀の切っ先を彼女に向けて叫んだ。


「なら北野奈々!お前が悔いる必要がないということを俺はこの最後の一撃で示す!だからお前も全霊の一撃を出せ!」


 彼女のことはあまり接点が無いから知らない、だからといってたった今見せた彼女の誠意を無下にはできない。だからこそ自分が今出せる全力を、それに答えるためにも使いたい。その思いだけがあった。俺の思いが伝わったのか、彼女は少し心が晴れたように笑みを浮かべながら口を開いた。


「もちろんだ!だが杉田義羅!お前の口からまだ”あの言葉”を聞いてない!それを今ここでハッキリ言ってくれ!」


俺もまた笑みを浮かべながらその言葉を理解し、木刀の柄に近い部分の刀身を左手で持ちそのまま腰を引いて抜刀の構えをした。


「あいわかった!では"勝負"に出るぞ!北野奈々!!」


少し昔の自分の素が出ながらも、本気の言葉を彼女に語った。そして彼女もそれに答えるかのように拳を握りしめて、身体中の血管が一瞬赤く光ったと思ったら、


「うおおおおおらあああああああああああああああああ!!」


 雄叫びながら突進してきた。俺も彼女に合わせて突進し、左目を閉じて狙いを定め、木刀に全力を込めて、抜刀した。

拳と木刀がぶつかる瞬間、


ズン!!バキャァ!


木が折れるような音、地震のような衝撃の音が学校中に響き渡った。

吹き飛ばされそうになるほどの風が正面から来てなんとか堪えた。

いつのまにか集まっていた見物人の内のほとんどは倒れていた。

そして学校の外に向かって運動場の中心から衝撃波による一本の道ができていた。

砂煙で少しの間見えなかったが、煙が晴れたと思ったら北野は仰向けに倒れ、ギラただ一人が衝撃波の道を背に抜刀し終えた姿勢で立っていた。

勝者が残っていたのだ。














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