村落
振り返った先にいたのは、白髪の少女と、それを守るように剣を構える少年だった。
「…流石に二人は想定外だな。」
その少年は今も俺に剣の鋒を向けている。まあ、空からいきなり降ってきた人間を味方だと断定できるはずもない。というか人間かどうかすら疑ってしまうところだろう。
「俺はあんたらに危害を伝えるつもりはないよ。悲鳴が聞こえたから助けにきたんだ。ほら、この通り」
俺は愛剣を地面にドサっと下ろして両手を上げる。
「ホン…トに、助け、か?」
少年が俺に問いかけた。
「ああ、なんならあんたらを住んでるとこまで護送してもいい。」
そう言うと少年は安堵の表情をした。後ろの少女については、少年が立ちはだかっているため良くは見えない。
「そうか…よかった。」
よほど気を張っていたのだろう。そう言い残すと少年は地面に倒れてしまった。
俺は今、少年を担いで、少女の案内に従いながら俺は山道を歩いている。
その白髪の少女はカミヤ・リンと名乗った。彼女らが住んでいる村?集落?の指導者の血筋らしい。少年の名前も尋ねたが、「後で本人が言うはずだから」と強く押し切られてしまった。
正直惜しいけれどバイクは諦め(どうせ動力の補給など望めるはずもないのだからと心の中で言い訳をした)徒歩で彼女等の住んでいるところに向かっている。
元から口数が少ないタイプなのか、俺をまだ警戒しているのか、道中俺とカミヤ・リンとの会話はほぼなかった。しかしリンの案内は正確で、俺たちは特に道に迷うことなく彼女等の住んでいる場所に着くことができた。
その村落(俺のイメージ的には村落が一番近い)に着いた時、そこからは緊張感のある空気が漂っていた。男達が出てきて、武器を持った状態で俺たちを囲む。正確に言うなら囲んでいるのは俺だけだろう。指導者の娘が一時的に居なくなる。それだけでも恐るるに足る出来事なのに、同郷の少年を担いだ大柄で大きな武器を持った男と共に帰ってくる。十分過ぎるほど警戒すべき事柄だ。
その男達が、カミヤ・リンに「ご無事でしたか?」だの「棟梁が心配しておられます」だの言って俺から引き離そうとする。それに異論はなかったのでついでに担いでいる少年も渡しておいた。
俺はその時点で一仕事終えた気分で、今夜の野宿の場所でも探そうかとその村落を離れようとした。
しかし、「貴方はここでお待ちください」といってここに留まれと言ってくる。その声は俺を指導者の娘を助けた人間、ではなく明らかに不審者とか不届者とか思っている響きだったので俺は少しイラッときた。
その気になればここにいる数人の男程度ならブチのめして去ることも難しくない。しかし、そうしなかったのは一種の反骨心とも言える者だったのだろうか、それとも人を斬るのが嫌だったのだろうか。とにかく、俺は引き留められたまま待つことにした。
暫く…と言うには長い時間だった。それくらいが経った時、村落の奥からこちらに向かってくる足音が聞こえた。壮年の男性、数人の護衛らしき人物が周りに控えているからおそらく彼がカミヤ・リンの父、この村落の指導者なのだろう。彼は俺の前まで来ると、深々と、それはもうお辞儀の手本とも言えるほどの綺麗な姿勢で頭を下げた。それが予想外の行動だったのだろう。俺を囲っていた男達が騒めく。
「君が、娘が危機に陥っていた時に助けてくれたと聞いた。恩人に対してもてなすどころか拘留するような真似までして申し訳ない。」
彼はそう言った後頭を上げる。またもや手本のように正確に。
「いえ。誰だって不審に思いますよ。こんなのがいきなり来たらね。」
俺は自分を指差しつつ冗談混じりのトーンでそう応える。
「いや、君は娘の命の恩人なのだ。今からでも丁重にもてなそう。」
本気のトーンだった。ならばそれを無下にするわけにもいかない。それに、元々野宿の予定だったのだから少しでも楽に夜を過ごせるならそれに越したことはない。
「なら、お言葉に甘えて。」
その返事を聞いて彼は満足とも安堵とも取れる表情をする。
「彼は私が案内しよう。君たちは下がっていてくれ。」
その言葉で護衛と、俺を囲っていた男たちが離れて、持ち場へ戻っていく。
「客人が来るのも久しいのだ。何か無作法があれば申し訳ない。」
彼はそう言って俺についてくるように促す。
道中、村落の光景を見た。畑…家…おおよそ俺が想像する村落と違いはなかったと思うが、鍛冶の為だろう建物が複数あった。この世界がこうなっちまう前から彼等はここで生活をしていたのだろうし、どんな集団なのか俺には見当もつかなかった。
案内が止まった。どうやら目的地に着いたらしい。俺の前にあったのは、他のものより大きい、おそらく指導者の家だ。
彼からは宿がなくて申し訳ない、と言う旨のことを言われたが十分過ぎるほど立派な家のように思えた。幼少期はこんな立派なところで生きていくのが夢だったような気もする。
客人用の部屋の前まで案内され襖を開ける。そこには一人の人が居た。まだ記憶に新しい、俺が助けた少年だった。
出来れば一週間以内に続きを書きたいな〜と思ってます。実現するといいな。毎度言っていることではございますが誤字脱字等あれば指定していただけると嬉しいです




