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これまで、と、ここから

崩れかけた建物の中で一人の男が瓦礫を掻き分け続けていた。瓦礫、ガラス片、何処からか漂う薬品の匂い、それら全てを掻き分けて彼の手は動き続けている。その男の動きには大切な物、或いは人を探しているのだと見た者に直感させる切実な調子がある。暫く、というにはやや長い間倒壊した研究棟を掘っていた彼の手が止まる。歯軋り。荒くなる息とそれを必死で抑えようとする悲痛な喘ぎ。手遅れだった、誰が見てもそう分かっただろう。普通ならそんな空気感の間に割り込めるものなどいるはずが無いが、少し奥の部屋があった場所からジャリ、という音が聞こえる。そこには一つの存在がいた。存在としか形容しようが無いとも思えるそれは確実にその男がいる方向に向かってきていた。男が大剣を構えた。何かの企業のロゴらしきものが描かれた覆いカバーのような鞘がガコン、という音を立てて外れ、その中から巨大な鉄剣が姿を表す。普通の成人男性では持ち上げるのすら苦労しそうなその剣を男は片手で持ち上げ、剣先をその存在に合わせる。短い呼吸音と共にその剣を振りかぶり飛び上がったその瞬間、その存在は消えていた。まるで幻覚だったかのように。しかし幻覚でないことは地面に重なったコンクリートに垂れた粘液らしきものが証明している。男は難なく着地した。危なげのないその仕草と裏腹に彼は今にも壊れてしまいそうに見えた。彼は大剣に鞘を付け直すこともなく、剣を引きずって元の地面を掻き分けていた場所に戻る。彼はそこに倒れるようにうずくまる。それとほぼ同時に慟哭が空間を満たした。今度こそ聴くものは誰もいない。それを知ってか知らずか彼は慟哭し続ける。叫ぶ言葉は途切れ途切れで聞こえない。それでも男は自身の喉が枯れるまで、枯れても尚体力の続く限り慟哭し続けた。



「こんなものかなッと…!」

俺はそう言いつつ両手を合わせはたく。それなりの仕事を終えた後は安い酒でも飲みたくなる。けれど今は心情的にも状況的にもそんなことはできないだろう。

「服も新調したし、当分の保存食も入れたし…君がくれたこの剣(相棒)もちゃんと持ったさ。」

そこで俺はふうと息をつく。

「俺はもうここにはいられないだろうからな……。やっぱまだ感情的になっちまうな。次に人に会うまでにはなんとかなってると良いけど。」

そう言いつつ俺はバイクに跨って地図を広げる。

「ん〜。あんなことが起きた後なんだし地図はアテにならねえか。どれくらい生き残ってるかも分からんし、生き残った奴らも機巧(てんし)が活動を再開したら減っちまうだろうし…。」

暫くの逡巡の末、俺はその場で地図を破り捨てることにした。紙は貴重になるだろうが知ったことではない。地図は意味がないならどこを目指して進むべきか。結局俺は運に任せることにした。ただ影の伸びる方向へ進むだけ。いかにも崩壊した世界の旅人らしいじゃないか。

俺は口の端を持ち上げながら笑う。自分が思う限りニヒルに。勿論ヘルメットなどは着けていない。失うものは何もないのだからヤケクソに近い気持ちなのかもしれないが、眩い夕日はここちよかったし、風は気持ちよかった。

文章を書くのが苦手なものでどうしても次話書くのは遅くなってしまうと思います

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