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学園で無能扱いされた俺、鑑定不能なだけで全属性最強でした ~面倒なので黙ってたら、なぜか学園と国に監視され始めた件~  作者: 黒羽レイ
第2部 選ばれない世界のその先で

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第84話 完璧の前提

 夜の会議棟は静かだった。照明は落とされ、廊下には足音だけが響く。


 エルドは資料を抱えたまま、足を止めた。


 視線の先。窓際に、カルディアが立っている。


 街の灯りを見下ろしながら、何かを考えているようだった。


「……遅くまで」


 エルドが声をかける。カルディアは振り返る。


「あなたも」


 短い返答。沈黙が一瞬だけ流れる。


「今日の議論、どう思いますか」


 カルディアが先に切り出す。


「合理的でした」


「でしょうね」


 わずかに口元が緩む。


「ですが」


 エルドは続ける。


「前提が違う」


 カルディアの視線が鋭くなる。


「前提?」


「止まらないことを前提にしている」


 静かな指摘。カルディアは少し考え、頷く。


「ええ。止まりませんから」


 揺らがない。


「演算は冗長化できる」

「負荷は分散できる」

「完全に近づく」


 昨日と同じ言葉。だが今は、より静かに響く。エルドは一歩近づく。


「完璧に近づくほど、例外は消えます」


「それが理想です」


「例外が消えれば、想定外も消える」


「ええ」


「想定外が消えれば、想定外に対応できなくなる」


 一瞬。カルディアの表情が止まる。だがすぐに戻る。


「想定外は、設計で消せます」


 迷いがない。エルドは小さく息を吐く。


「設計は、過去から作られる」


「はい」


「未来は、過去と同じですか」


 問い。カルディアは少しだけ目を細める。


「違う可能性はあります」


「なら」


「だから拡張するのです」


 すぐに返ってくる。論理は崩れない。カルディアは一歩前に出る。


「あなたは、何を恐れているのですか」


 直球。逃げ場はない。エルドは少しだけ考える。


「……揃いすぎることです」


 カルディアは理解できないという顔をする。


「揃うことは、安定です」


「揃うことは、停止です」


 初めて、言い切った。カルディアの視線が変わる。


「証明できますか」


「まだできません」


 正直に答える。


「ですが、現場ではそう見える」


 沈黙。窓の外で風が吹く。カルディアは視線を外し、街を見る。


「我々は、多くを救ってきました」


「知っています」


「演算は、人よりも正確です」


「知っています」


「なら、なぜ疑うのですか」


 少しだけ、感情が混じる。エルドはゆっくり答える。


「正しいからです」


 カルディアが振り向く。


「正しいものほど、疑われなくなる」


 ノアの言葉。そのままではないが、本質は同じ。カルディアは黙る。


 初めて、反論が出ない。だがすぐに、表情を整える。


「我々は止まりません」


 再び断言。その強さは変わらない。


「止まる可能性より、止めない可能性を選ぶ」


 合理的選択。エルドは頷く。


「それが帝国ですか」


「ええ」


 短い肯定。価値観は交わらない。だが理解はできる。端末が震える。


『国際接続試験、正式提案』


 カルディアが画面を見る。


「始まりますね」


 エルドも見る。世界が、繋がろうとしている。


 カルディアが言う。


「これで、揺らぎは消えます」


 エルドは答えない。ただ、心の中で思う。


(揃えば、消える)


 だが同時に。


(揃えば、止まる)


 夜は静かだ。


 音がしないことは、そのまま安心にはならない。

完璧なものは、壊れるまで完璧に見えます。


不穏だと感じた方は、☆を。

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