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学園で無能扱いされた俺、鑑定不能なだけで全属性最強でした ~面倒なので黙ってたら、なぜか学園と国に監視され始めた件~  作者: 黒羽レイ
第2部 選ばれない世界のその先で

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第64話 教科書の中の思想

 学園の講堂は、以前よりも静かだった。


 壇上の黒板に、大きく書かれている。


『個人依存は構造を歪める』


 その下に、整然と箇条書きが並ぶ。


 一、特定個人を安定要因としないこと

 二、判断は制度に基づくこと

 三、責任は組織単位で管理すること


 講師は淡々と説明する。


「過去、境界域対応は一部の特異事例に頼る傾向がありました」

「それが判断の遅延と構造の硬直を招いたのです」


 学生たちは真面目に頷く。


 その中に、エルドの姿もあった。

 若手指揮官としての実績を評価され、

 特別講義に招かれている。


「現在は中央最適化網により、判断は均質化されました」

「個人の勘や感情に左右されることはありません」


 拍手が起きる。


 エルドも、手を叩いた。


 間違っていない。

 言っていることは、すべて正しい。


 だが。


(……何か、抜けている)


 黒板の隅に、小さく記された一文がある。


『判断を預けるな』


 それは、かつてノアが口にした言葉だ。

 だが今は、補足扱いだ。


 講師はそこを軽く流す。


「理念として重要ですが、制度化により解消済みです」


 解消済み。


 エルドは、その言葉を反芻する。


 講義後、廊下に出ると、数人の学生が声をかけてきた。


「エルドさん、中央網って本当に便利なんですか?」


「便利だ」


 即答だった。


「判断が早い。迷わない」


「じゃあ、もう個人の判断っていらないんですか?」


 その問いに、一瞬だけ詰まる。


「……制度の中で判断する」


 そう言い直す。


 学生たちは満足そうに頷いた。


 それで十分だと言わんばかりに。


 夕方。


 中央解析室では、リスが報告を上げていた。


「境界域Pの微差、継続しています」

「数値は安定範囲内ですが、累積傾向あり」


 セドリックは腕を組む。


「誤差は誤差だ」

「揺らぎは常に存在する」


「はい」


 リスは頷く。


「ただ、過去パターンとの一致率がわずかに低下しています」


「新しい波形に適応すればいい」

「問題はない」


 そのやり取りを、後方からノアが見ている。


 誰も彼に意見を求めない。


 それでいい。


 夜。


 訓練場で、エルドは一人、剣を振っていた。


 身体は動く。

 判断も早い。


 それでも、講堂での黒板が頭から離れない。


『判断を預けるな』


 制度は、判断を預けていないはずだ。

 むしろ分散している。


 なのに、なぜか。


(俺は、何を選んでいる?)


 背後から足音。


 ノアだった。


「講義はどうだった」


「正しかったです」


「そうか」


 短い沈黙。


「正しいものは、便利だ」


 ノアがぽつりと言う。


「便利なものは、疑われなくなる」


 エルドは眉をひそめる。


「中央網は間違っていません」


「そうだな」


 否定しない。


 だからこそ、言葉が重い。


 そのとき、端末が震えた。


『境界域R、軽微異常』

『中央予測:問題なし』


 エルドは即座に立ち上がる。


「出動します」


 ノアは動かない。


 エルドは振り返らずに言う。


「規則通りです」


 規則通り。


 その言葉は、確かに強い。


 だがどこか、冷たかった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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