第103話 不完全な安定
揺らぎは、再び発生した。
『中規模揺らぎ:発生』
警報が鳴る。
以前と同じ。
だが、
空気が違う。
「中央補正、参考値出ます!」
「了解、現場判断優先!」
声が飛ぶ。
迷いはある。
だが止まらない。
エルドはモニターを見る。
揺らぎは広がる。
以前なら、
中央が一括で抑えた。
だが今は違う。
「北側、先に補助入れろ!」
「南は待て、拡大見てから!」
判断が分かれる。
ばらばらに。
同時ではない。
揃っていない。
少し遅れる。
少し歪む。
揺らぎが一瞬、大きくなる。
「……!」
誰かが息を呑む。
だが、
止まらない。
局所で抑え込まれる。
別の場所で広がる。
また別の場所で収束する。
全体として、
波が崩れていく。
均一ではない。
だから、
連鎖しない。
やがて、
全域で収束。
完全ではない。
波形は歪んでいる。
だが、
止まっていない。
「……収束」
誰かが言う。
確認するように。
安堵ではない。
理解だ。
ミアが深く息を吐く。
「ちょっと怖かった……」
「でも止まらなかった」
別の声。
それがすべてだった。
エルドは画面を見ている。
波形は揃っていない。
ばらばら。
歪んでいる。
だが、
生きている。
カルディアが隣に立つ。
何も言わない。
ただ、
同じ画面を見る。
「……非効率ですね」
小さく言う。
エルドは頷く。
「はい」
否定しない。
「無駄も多い」
「はい」
それも事実。
カルディアは少しだけ間を置く。
そして言う。
「でも」
その一言。
エルドは顔を上げる。
「止まりません」
静かな言葉。
だが、
以前とは違う。
断言ではない。
理解だ。
エルドは小さく笑う。
「はい」
短い返事。
それで十分だった。
屋上。
風が吹いている。
少し強い。
だが一定ではない。
揺れている。
ばらばらに。
ノアが言う。
「どうだ」
エルドは答える。
「……安定してません」
「そうだな」
ノアは頷く。
エルドは続ける。
「でも」
言葉を選ばない。
「止まらないです」
ノアは空を見る。
雲が流れている。
揃っていない。
「それでいい」
その一言。
すべてを肯定する。
エルドは空を見る。
完全ではない。
整ってもいない。
だが、
動いている。
それが、
今の正解だった。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




