47.裏の裏は裏
「行きますぞ魔王様!新々々必殺技!ミスディレクションパンチ!」
ダイルの強力な右パンチが魔王の体に向かう。
「・・・・からの!左パンチぃいいい!!!」
砂煙と共に高い金属音が場内に響く。テーブルや椅子は壁に飛び、天井と床は目視できる揺れが続いている。
「ちょ・・・!ちょっと!ダイル!やめなさい!」
しゃがみ込むレイディ、揺れが収まるとダイルが口を開く。
「さすがは魔王様、この攻撃で全く傷つかないとは。俺の新々々々・・・?何回言ったかな」
「ふふ・・・ダナから返してもらったこの無敵防御君があれば、ダイルの新々真々ミスディレクションパンチなど恐るるに足らず」
しみじみと見つめ合う魔王とダイル、すかさず小林が突っ込む。
「おい!それただのフェイントじゃねえか!あとお前らのネーミングセンスよ」
「えー?じゃあどうするのがミスディレクションでござるか?」
「うぅ・・・確かにフェイントとミスディレクションの違いなんて考えたこともないからな、同じような、違うような、うーん。そうだな」
―――――――――
「はあ、勢いで魔王城を飛び出してきたものの、誰も追いかけてこないでし。全く、おいらあっての魔王軍なのに魔王様は何にもわかってないでし」
モグ太の足音に重なる足音、モグ太がふと足を止める。
「・・・・後ろに気配はなし。重なって聞こえる音からしてかなりの人数が歩いてるでし。この森にこの人数が・・・泉のおいらのヘソクリが心配でし!!」
「・・・この森に一体なんのようだい?騎士さんたち?」
50名ほどの兵隊を前に3人の人影が立ち尽くす。
「知の勇者殿とお見受けする、ここは見ていなかったことにして我々を通していただきたい」
髭を蓄えた兵長らしき人間が膝を折り、3人に話しかける。
「駄目だよ~?駄目!ケイ様からも聞いているでしょう?この森に人間は近づかせられないの。それは絶対なの」
「アイちゃん、もうヤる気満々やないの」
「あたしよりヤる気があるのはあいつよ、あいつ」
「肉体強化!!・・・・ふんっ!!!」
高く飛び上がった人影が一人の兵士の前に立ちはだかる。
「ひいぃ!!」
拳を振り上げる巨漢、身構える兵士。すかさず二人の間に兵長が割って入る。
「いけませんぞ、勇者殿、我々は・・・・」
(巨漢を利用した力任せの殴り・・・・右手で左脇腹辺りを狙う・・・・パワー系特有の特に何も戦略の無い打撃でしょうか)
「かかったな、馬鹿め!!」
巨漢は右手を止め、左手を兵長に向け放つ。
(と、頭が働かないフリですね、よくあるパターンですね、安易なフェイントパンチ・・・)
「ジェイ殿、落ち着いてくだされ。我々は禁忌を犯して森に・・・・ぐっ・・ふ」
左手を避け、話を始めていた兵長が膝をつく。周りにいた兵士が驚き声を荒げる。
「なんだ?!なにが起こった?我々には追えないスピードの乱打でもあったのか!・・・皆・・・・」
声を荒げていた兵士が一人、二人と倒れる。兵の群れは混乱を増していく。
「あーら、駄目よ。ヤクソクを破る人にはお仕置きなんだから・・・」
兵士の一人が頭上のカラスを指さし叫ぶ。
「陽動だ!あちらを見るな!!注目すべきは術者だ!」
「あぁ~ん。やっぱりそうなるのね~。正解だし不正解・・・・ウォーターアロー」
兵士たちを大量の水が襲う。詠唱の光を出すカラスを兵士が再度指さす。2秒3秒と濡れた自分の手を見てふと我に返り叫ぶ
「駄目だ!!皆の横に飛べ!!」
声がする刹那、稲光が森中に光り・・・虫と風の音だけが聞こえる。
―――――――――
「ってな感じでさ、肉体強化!!!と大声で叫ぶ。右手でパンチして止めて、左手かと思わせて、実はそもそも肉体強化魔法が嘘でミスディレクション。肉体強化と口では言いながら、無詠唱で心の中で違う魔法を唱えたらどうなるんだろう?左手がフェイントと気づくときにはすでに右手からの風魔法が直撃して倒れる、周りからは凄い速さのパンチを繰り出したように見えるし、戦っている相手はどちらのパンチが本丸だったのかわからないわけでさ」
身振り手振りを交えながら小林は魔王に熱く語り続ける。
「フェイントのフェイントでござるか!」
「うーん??というよりこれが本来のミスデリクションに近いと思うけどな…」
「上だ!気をつけろ!と言って、演者のほうに気を向かせて、実は演者のほうがダミーのダミーで空を飛んでるカラスが本命のように見せて演者が・・・」
「ちょ・・・ちょっと待つでござるよ!」
饒舌になる小林を魔王が制止する。
「話が高度で疲れるでござるよ~もう少しゆっくり話してほしいでござる」
小林は腕組みをしながら、少し首をかしげる。
「ん。。。右を見ろ!右を見たな!・・・・左を見たな!!ってことなんだよ」
「もう!!ちゃんと説明する気ないでござるな!!」
「ええ?!しっかり解説しているつもりなんだけど、手品に毒されているのかな。。。」




