3.お願いします
「えーっと話をまとめるとだな」
頭をかきながら洞窟をうろちょろする男、近くには顔に赤い手形のある魔王様が正座、横で指をさして笑っている少女。
ため息をつきながら続ける
「お前は少し前、勇者と戦い、その時にほぼ全ての魔力を奪われた・・と」
「はぃ・・・」
「で、戦いに負けたお前は組織の分裂を避けるため、せめて魔力が尽きたことだけは隠したいと」
「はぃ・・・」
「で、ほぼ空になった魔力をすべて使い、異世界から俺を転移させたと」
「・・・あぃ」
魔王の鼻に握り拳が近づく。
「ひぃ!またあの臭いのはやめてほしいでござ・・・。魔力は少しずつ回復しますし、それまで隠し通せれば」
「ああぁん?手品なめんなよ!勝手に決めて巻き込みやがってまた屁嗅がせるぞコラッ!」
「ええ!あれ屁でござ、屁だったのですか。一体何を食べていたらあんなこの世の終わりの香りがするのですか、ちゃんと野菜食べてますか」
「これでも魔力が尽きる前は全知全能と言われるほどの力が私にはあったのですよ」
空に手を広げ天を見上げる魔王。
「魔力が全て戻った暁には・・・どんな願いもひとつ叶えよう」
「・・・なんでも??」
苛立っていた顔が真顔になる。
「あぁ、約束しよう。なんせ私は全知全能だからな」
「だった・・・だろ!まぁ話を聞く感じだとすぐに元の世界にも戻せそうにないし・・・面白そうでは・・・あるか」
滑り込みながら手を掴む魔王。
「あああ救世主様!よろしくお願いします!一生懸命練習をします!」