1.迷惑
空を覆い隠すような漆黒の影。地響きと雷鳴が鳴り響く・・・・。
「ふはははは・・・!よくぞここまで来た勇者よ」
-------〇〇デパート内
「はぁ・・・・売れねえ」
大きなデパートの一角、小さなテーブルにため息を漏らす男が一人。安めのスーツ、首元には蝶ネクタイを着けている。
「まぁこのご時世?飲み会で隠し芸なんて流行らねえか、くそが」
テーブルを握り拳で叩くと床にトランプが飛び散る。
「あー・・・やっちまったよ」
屈んでトランプを集めている後ろ姿に、小さな体が近づく。
「おじさん?魔法使い?」
「あぁ?・・・おっ、いらっしゃいませ、お嬢様!これなんて簡単でいいよ~」
本を手に取り、パラパラと中が白いことを見せる・・・指を鳴らしたら絵が出てきた。
「ううん、こういうのじゃなくてダイなんとかがしているような」
蝶ネクタイの男の顔が曇る。
「あの野郎、また金にならないマジックしやがったのか、ぐぎぎぎ」
ブツブツ何かをつぶやいた後、ふと笑顔になり紙を取り出す。
「じゃあお嬢様、この紙の丸が書かれた部分に好きな数字を書いてくれ、書いている間俺は見ないようにしておく・・・書き終えたか?なら縦横に折ってくれ」
男は両手に何もないことを見せ、顔を横に向けたまま紙を破っていく。
「んでもって・・・」
テーブルの引出から灰皿を取り出す、真ん中にはライターがある。
「ライターで紙を燃やしながら、煙を見る・・・そうすると・・・さんじゅう・・・35・・・と当てること・・・」
ジリジリジリ・・・!!天井から水が大量に降り注ぐ。
「小林さん!あなたまた火を使って!ここは火気厳禁と何回言えばわかるんですか!」
隣の売り場から怒鳴り声が聞こえたかと思うと、その場にもう男と少女の姿はなかった。
「ふう・・・危なかったぜ、またやっちまったよ」
非常階段に座り込み、タオルで持ち出したトランク、体を拭きながらボヤく。笑いながら言っているためかあまり反省の色は見えない。
「おじさん!おじさん!」
「なんだお前ついてきたのか、ゴメンな濡らしちまっ・・・あれ?濡れてねえなうまく避けたのか。」
「さっきのやつどうやるの?紙のやつ」
「おっ、お嬢様も魔法使いになってみたいか、それにはこれだ、魔法使いの教科書ターベルコース!さっきのやつも掲載されていて更に希少価値もあって・・・うだうだ」
「うむ、あなたで良さそうだ。」
「へ?・・・なんだか目の前が急に暗く・・・」
ぽた・・ぽた・・・
「冷たっ、なんだここ、洞窟?」