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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、いつの間にか大陸が一つになっていた  作者: 慈架太子


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46 さすがにおかしい

翌朝。


アルデバラン王国王都近郊の森には、二百名の魔導騎士団が整列していた。


一班十名。


二十班編成である。


護衛として近衛騎士十名が同行し、その中央には教導教官である第一王女マーガレットが立っていた。


マーガレットは全員の顔を見渡す。


昨日、水属性スキルへ覚醒したばかりとは思えないほど、魔導騎士たちの表情には自信があった。


「皆さん。」


「今日は実戦教導です。」


「繰り返します。」


「捕縛。」


「拘束。」


「窒息。」


「水属性魔法は、この三つを基本として考えてください。」


魔導騎士たちは一斉に頷く。


「はい!」


「相手を力任せに倒す必要はありません。」


「確実に動きを封じ、安全に制圧してください。」


「では、開始します。」


二十班は一斉に森へ散開した。


各班は索敵魔法を展開しながら森を進んでいく。


「北東に反応。」


「フォレストウルフ五体。」


班長の指示で十名が素早く展開する。


「ウォーターバインド。」


十本の水縄が一斉に放たれ、五体のフォレストウルフを拘束した。


続いてウォーターマスクが発動する。


暴れていた魔物たちは抵抗する間もなく動きを止めた。


「終了。」


あまりにも鮮やかな制圧だった。


昨日まで教導魔法を知らなかった者たちとは思えない。


魔導騎士たちはすぐに次の獲物を索敵する。


森のあちこちで同じ光景が繰り返された。


フォレストウルフ百体。


危なげなく討伐を終える。


続いて現れたのはフォレストベアだった。


巨体を誇る魔物だったが、魔導騎士たちは慌てない。


索敵で位置を把握し、包囲する。


「ウォーターバインド。」


「重ね掛け。」


幾重にも重なった水縄が巨体を完全に拘束する。


動きを封じたところへウォーターマスクを発動。


フォレストベアは暴れることもできず、その場へ倒れ込んだ。


「終了。」


「次へ。」


狩りは驚くほど順調だった。


マーガレットは各班の討伐地点を飛行しながら巡回し、討伐された魔物を次々とアイテムボックスへ収納していく。


「収納。」


フォレストウルフ。


フォレストベア。


次々と魔物が消えていく。


収納を終えると、マーガレットは再び飛び立ち、次の班へ向かった。


昼前になる頃には、魔導騎士たちはオークの群れと遭遇した。


三百体。


「予定通りです。」


班長たちは落ち着いて部隊を展開する。


索敵魔法で位置を把握し、二十班が連携して包囲網を完成させた。


「ウォーターバインド!」


数百本の水縄が一斉に放たれる。


オークたちは武器を振るう間もなく拘束された。


続いてウォーターマスク。


抵抗は長く続かなかった。


短時間で三百体の討伐を終える。


休む間もなく、今度はハイオーク三百体が姿を現した。


それでも魔導騎士たちは動じない。


「捕縛。」


「拘束。」


「ウォーターマスク。」


マーガレットが繰り返し教えてきた基本を忠実に実践する。


やがて最後の一体が倒れると、魔導騎士たちは顔を見合わせた。


「もう身体が自然に動く。」


「教導魔法に慣れてきたな。」


「魔力循環を続けながら戦う方が、以前よりも楽だ。」


マーガレットは静かに頷いた。


魔法を専門としてきた彼らは、一度理屈を理解すると習得が非常に速い。


その成長速度は、近衛騎士団の時を上回る勢いを見せ始めていた。




オークとハイオークの討伐を終えた頃には、魔導騎士団の動きはさらに洗練されていた。


「魔力循環を維持。」


「索敵を展開。」


「捕縛。」


「拘束。」


「ウォーターマスク。」


班長が指示を出すより早く、隊員たちは自然に連携していた。


まるで何年も共に戦ってきた部隊のようだった。


その時だった。


一人の魔導騎士が足を止める。


「……何だ?」


自分の身体に違和感を覚えた。


近くにいた仲間が鑑定する。


「風属性スキル……覚醒しています。」


「え?」


驚く間もなく、別の場所から声が上がる。


「私は土属性です!」


「こちらは光属性!」


「闇属性を覚醒しました!」


「火属性もです!」


各地で次々と覚醒が始まる。


昨日、水属性へ覚醒したばかりだというのに、わずか一日で風・土・光・闇・火の五属性まで覚醒し始めたのである。


マーガレットはその報告を受けても慌てなかった。


「皆さん。」


「念話で六属性の正しい知識を共有します。」


次の瞬間、マーガレットの声が魔導騎士団全員の頭の中へ響いた。


『風属性は斬撃や推進。』


『土属性は壁、盾、牢、鎧。』


『光属性は治癒、浄化。』


『闇属性は隠密や妨害。』


『火属性は燃焼と高熱。』


『そして水属性は捕縛、拘束、窒息が基本です。』


魔導騎士たちは歩みを止めることなく、その知識を吸収していく。


「頭の中へ直接入ってくる……。」


「理解しやすい。」


「理屈まで分かる。」


教導を受けた直後から、各属性の魔力操作が急速に安定していく。


すると、再び覚醒が始まった。


一人の魔導騎士の身体が淡く光る。


「今度は何だ?」


「テレキネシスです。」


さらに別の場所でも光が生まれる。


「私は……テレパシー?」


「レビテーションまで覚醒した!」


魔法研究を続けてきた彼らは、新しい知識を吸収すると、それをすぐに実践へ結び付けてしまう。


魔導騎士団長は苦笑した。


「我々も長年魔法を研究してきた。」


「理屈さえ分かれば応用は早いということか。」


覚醒は止まらない。


「鑑定スキルを覚醒しました。」


「教導スキルです!」


「アイテムボックスまで使えます!」


さらに飛行魔法を試し始める者まで現れた。


「浮けた!」


「そのまま前へ!」


魔力操作だけで身体を支え、木々の間を滑るように飛行していく。


索敵魔法も急速に精度を増していった。


「北へ三百メートル。」


「オーク十五体。」


「その奥にフォレストベア四体。」


次々と正確な位置を把握していく。


その光景を見つめながら、マーガレットは思わず呟いた。


「……さすがに、おかしいですね。」


昨日まで水属性しか使えなかった魔導騎士団が、わずか一日で六属性、超能力、飛行、索敵まで習得し始めている。


成長速度が常識では考えられなかった。


マーガレットは自分自身へ鑑定を発動する。


すると視界に新しい情報が浮かび上がった。


教導スキル レベル5


「……そういうことでしたか。」


マーガレットは静かに微笑んだ。


自分でも気付かないうちに、教導そのものが大きく成長していたのである。




マーガレットは自分の鑑定結果をもう一度確認した。


教導スキル レベル5


間違いではない。


近衛騎士団を教導し、王宮全体を教導し、そして二百名の魔導騎士団を実戦で教導している。


その積み重ねが、教導スキルそのものを成長させていたのだ。


「だから……。」


マーガレットは小さく呟く。


「皆さんの成長速度が、ここまで速くなったのですね。」


原因が分かると、不思議だった光景にも納得がいった。


魔導騎士団が優秀なのはもちろんである。


そこへ成長した教導スキルが加わったことで、理解と習得の速度が飛躍的に高まっていた。


その頃、先行していた班では新たな変化が起きていた。


「団長!」


一人の騎士が空から舞い降りてくる。


「飛行が安定しました!」


「こちらもです!」


「索敵の範囲がさらに広がりました!」


魔導騎士団長は驚きながらも頷く。


「焦るな。」


「基本を忘れるな。」


「捕縛、拘束、窒息だ。」


「はい!」


魔導騎士たちは再び森へ散開する。


索敵魔法で魔物を探知し、飛行で素早く接近する。


包囲が完成すると、二十班は息を合わせて魔法を放った。


「ウォーターバインド!」


数百本の水縄が森を駆け抜ける。


オークもハイオークも抵抗する暇すらない。


拘束された魔物へ、続けてウォーターマスクが発動する。


戦闘は短時間で終了した。


「終了。」


「次の群れを索敵します。」


「北西に反応。」


「フォレストベア十五体。」


「南へオーク三十体。」


情報が次々と共有される。


魔導騎士たちは自ら索敵し、自ら判断し、自ら部隊を動かしていた。


マーガレットはその様子を静かに見守る。


もはや細かな指示は必要なかった。


基本だけを伝えれば、彼らは自分たちで最適な方法を組み立てていく。


近衛騎士の一人が感心したように笑う。


「本当に覚えるのが早いですね。」


隣の近衛騎士も頷いた。


「俺たちも教導を受けた時は驚いたが、魔導騎士団はさらに速い。」


「魔法を研究してきた積み重ねがあるのでしょう。」


マーガレットも微笑んだ。


「ええ。」


「正しい知識を得れば、それを応用する力は皆さんの方が上です。」


魔導騎士団長も苦笑する。


「長年、詠唱や杖に頼る魔法ばかり研究してきました。」


「ですが理論そのものは変わりません。」


「魔力操作を理解した途端、今までの知識が一つにつながりました。」


その言葉にマーガレットは頷いた。


「だからこそ皆さんは、ここまで成長できたのです。」


狩りは休むことなく続く。


飛行。


索敵。


捕縛。


拘束。


ウォーターマスク。


その一連の流れは完全に定着し、二十班は次々と魔物の群れを制圧していく。


マーガレットは討伐地点を巡回しながら、倒された魔物をアイテムボックスへ収納していった。


収納される魔物の数は、すでに千体を大きく超えている。


それでも魔導騎士団の勢いは衰えるどころか、戦うたびにさらに洗練されていく。


その成長ぶりを見つめながら、マーガレットは改めて思った。


「……さすがに、おかしいですね。」


一日でここまで成長する者たちなど、これまで見たことがなかった。




その日の狩りは日暮れまで続いた。


索敵。


飛行。


捕縛。


拘束。


ウォーターマスク。


基本を忠実に繰り返すだけで、魔導騎士団は次々と魔物を制圧していく。


魔法の専門家である彼らは、一度理論を理解すると応用までが驚くほど速かった。


最後の群れを討伐し終えると、魔導騎士団長が討伐数を確認する。


「本日の討伐数。」


「二万体です。」


近衛騎士たちから感嘆の声が上がった。


「一日で二万体か。」


「しかも教導を受け始めてまだ二日目とは。」


マーガレットも静かに頷く。


「皆さんの努力の結果です。」


討伐された魔物は、マーガレットが次々とアイテムボックスへ収納していく。


フォレストウルフ。


フォレストベア。


オーク。


ハイオーク。


巨大な魔物も、一瞬で収納されていった。


すべての回収を終えると、一行は飛行魔法で王宮へ帰還する。


王宮の訓練場では、すぐに解体作業が始まった。


二万体もの魔物が整然と並べられる。


「では始めましょう。」


マーガレットの合図で、近衛騎士団と魔導騎士団は一斉に解体を始めた。


皮を剥ぐ。


肉を切り分ける。


骨を外す。


魔石を取り出す。


教導を受けながら作業を続けるうちに、再び覚醒が始まる。


「解体スキルを覚醒しました!」


「私もです!」


各所から驚きの声が響く。


魔導騎士だけではない。


近衛騎士たちもさらに技術を磨き、解体の速度と精度を上げていった。


解体が終わると、今度は調理が始まる。


オーク肉を切り分け、串へ刺し、炭火へ並べる。


焼き加減を見ながら丁寧に返していく。


香ばしい匂いが訓練場いっぱいに広がった。


「調理スキルを覚醒しました。」


「こちらも覚醒です!」


今日だけで、解体と調理の両方を習得する者が次々と現れていた。


その頃、解体を終えた魔石、肉、素材は近衛騎士たちがそれぞれのアイテムボックスへ収納していた。


「では、冒険者ギルドへ行ってまいります。」


近衛騎士十名は飛行魔法で王宮を飛び立つ。


冒険者ギルドでは、すでに王宮から搬入される高品質な魔物素材は高い評価を受けていた。


大量の魔石、肉、素材は次々と買い取られ、その日の取引も滞りなく終わる。


一方、王宮では焼肉大会が始まっていた。


炭火で焼かれたオーク肉を頬張る魔導騎士たちの表情は明るい。


「うまい!」


「狩ったばかりの肉は格別ですね。」


近衛騎士たちもギルドから戻り、席へ加わる。


マーガレットはアイテムボックスから酒樽を取り出した。


「皆さん、本日はお疲れさまでした。」


「乾杯しましょう。」


木杯へ酒が注がれる。


「乾杯!」


訓練場には大きな笑い声が響いた。


近衛騎士団と魔導騎士団は今日の戦いを振り返り、新しく覚醒した魔法や超能力について語り合う。


互いに技術を教え合い、笑い合い、さらに親睦を深めていく。


それを見つめるマーガレットは静かに微笑んだ。


教導は知識を伝えるだけではない。


人と人をつなぎ、共に学び、共に成長する環境を生み出す。


その環境は、確実にアルデバラン王国を変え始めていた。





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