24 六属性を操る者
翌朝。
王城の訓練場には、七百人の騎士が整然と並んでいた。
数日前まで魔法を扱える者はごく一部だった。
しかし今は違う。
教導スキル。
索敵スキル。
鑑定スキル。
そして風、土、光、闇、火、水。
覚醒の連鎖は止まることなく続き、ついに七百人全員が六属性へ覚醒していた。
騎士団長は整列した騎士たちを見渡し、静かに息を吐く。
「これほど短期間で……信じられん。」
副団長も頷いた。
「王国騎士団の歴史でも前例がありません。」
アークは穏やかに七百人を見渡した。
「今日は、六属性を実際に使います。」
その一言で訓練場の空気が引き締まる。
訓練場には大量の木人が並べられていた。
人型の標的である。
「魔力循環を維持してください。」
「狙うのは木人だけです。」
「威力ではなく、正確さを意識してください。」
騎士たちは一斉に頷く。
まず前へ出たのは女性騎士の一団だった。
「始めます。」
一人が右手を前へ突き出す。
「ストーンバレット。」
土色の弾丸が一直線に飛び、木人の胸へ命中する。
鈍い音を立てて木片が飛び散った。
続いて隣の女性騎士。
「ソイルバレット。」
圧縮された土塊が木人の腹部へ突き刺さる。
さらに別の女性騎士が詠唱した。
「ホーリーバレット。」
眩い光の弾丸が木人を貫いた。
「ヒールバレット。」
柔らかな光が放たれ、別の騎士へ向かう。
身体へ触れた瞬間、疲労が和らいでいく。
「回復魔法まで……。」
見守っていた騎士たちから驚きの声が漏れた。
さらに闇属性。
「シャドウバレット。」
黒い弾丸が木人へ命中する。
「ダークバレット。」
もう一つの黒い弾丸が連続して炸裂した。
「バインドバレット。」
闇の帯が木人へ絡み付き、身動きを封じる。
「次、火属性。」
女性騎士は落ち着いた表情で魔法を切り替えた。
「ファイアバレット。」
赤い火球が木人へ命中し、小さな炎が上がる。
続いて水属性。
「ウォーターバレット。」
水の弾丸が一直線に飛ぶ。
「アイスバレット。」
氷の弾丸が木人を凍り付かせる。
「ボイルバレット。」
高温の熱水が木人へ直撃した。
最後は、
「スチームバレット。」
白い蒸気の弾丸が勢いよく放たれ、木人を包み込む。
訓練場へ次々と魔法が飛び交う。
六属性のバレットが途切れることなく木人へ命中し、正確に標的を撃ち抜いていく。
女性騎士たちは属性を迷うことなく切り替え、次々と魔法を放っていた。
その様子を見た若い男性騎士たちも続く。
「ストーンバレット!」
「ファイアバレット!」
「ホーリーバレット!」
木人へ命中するたび、訓練場へ乾いた音が響く。
騎士団長はその光景を見つめたまま、言葉を失っていた。
ほんの数日前まで剣しか扱えなかった騎士たちが、今では六属性の魔法を自在に操っている。
それは、長年騎士団を率いてきた彼の常識を根底から覆す光景だった。
「始め!」
アークの号令が響く。
七百人の騎士は一斉に木人へ向けて魔法を放った。
「ストーンバレット!」
無数の石弾が一直線に飛び、木人へ命中する。
激しい衝撃音が訓練場中へ響き渡った。
「ソイルバレット!」
今度は圧縮された土塊が放たれる。
石とは違う重量感を持った一撃が木人へ突き刺さり、標的を大きく揺らした。
アークは静かに頷く。
「同じ土属性でも性質は異なります。」
「状況によって使い分けてください。」
「はい!」
騎士たちは力強く返事をした。
「次は光属性。」
「ホーリーバレット!」
白い光の弾丸が一斉に放たれる。
数百発の光弾が木人へ命中し、訓練場が一瞬まばゆい光に包まれた。
続いて、
「ヒールバレット!」
柔らかな光が仲間へ降り注ぐ。
訓練中の疲労が和らぎ、騎士たちの表情にも余裕が戻る。
「次、闇属性。」
「シャドウバレット!」
黒い魔力の弾丸が飛ぶ。
「ダークバレット!」
さらに威力を増した黒い弾丸が木人を打ち抜く。
「バインドバレット!」
黒い帯が木人へ絡み付き、標的を完全に拘束した。
「火属性。」
「ファイアバレット!」
赤い火球が次々と命中し、木人の表面を焦がしていく。
「水属性。」
「ウォーターバレット!」
勢いよく放たれた水弾が木人を打ち据える。
「アイスバレット!」
氷の弾丸が命中し、木人の表面が白く凍り付く。
「ボイルバレット!」
高温の熱水が木人へ降り注ぎ、
「スチームバレット!」
白い蒸気の弾丸が木人を包み込んだ。
土。
光。
闇。
火。
水。
騎士たちは迷うことなく属性を切り替え、一つの魔法から次の魔法へと滑らかに繋げていく。
木人には休む間もなく六属性の魔法が降り注ぎ、訓練場には絶え間なく炸裂音が響いていた。
その中でも女性騎士たちの動きは際立っていた。
「ストーンバレット!」
「ホーリーバレット!」
「シャドウバレット!」
「ファイアバレット!」
「ウォーターバレット!」
一切迷うことなく属性を切り替え、正確に木人だけを撃ち抜いていく。
教導役となった騎士たちも各班を巡回しながら助言を送る。
「切り替えが速くなっています。」
「その調子です。」
「魔力の流れを一定に保ってください。」
助言を受けるたびに、騎士たちの動きはさらに洗練されていった。
その光景を見つめる騎士団長は、思わず目を見開く。
「信じられん……。」
「全員が六属性をここまで使いこなすとは。」
副団長も感嘆の息を漏らした。
「しかも教え合いながら、さらに上達しています。」
騎士団長は訓練場を見渡し、静かに頷く。
「もはや一人の教師が育てている騎士団ではない。」
「七百人全員が学び、七百人全員が成長している。」
目の前で繰り広げられる光景は、王国騎士団の歴史を塗り替える、新たな時代の始まりそのものだった。
午後の訓練が始まると、木人は新しいものへ交換された。
騎士たちは整列し、魔力循環を維持したまま開始の合図を待つ。
アークは全員を見渡しながら口を開いた。
「午前は一つずつ属性を確認しました。」
「午後は属性を自由に組み合わせます。」
騎士たちの表情が引き締まる。
「状況を想像してください。」
「相手を止めたいのか。」
「動きを鈍らせたいのか。」
「あるいは、一撃で制圧したいのか。」
「魔法は目的に合わせて選択します。」
騎士団長も真剣な表情で頷いた。
「始め!」
アークの合図とともに、七百人の騎士が一斉に魔法を放つ。
「バインドバレット!」
闇の帯が木人へ絡み付き、その動きを封じる。
間髪入れず、
「ファイアバレット!」
炎の弾丸が拘束された木人へ命中する。
別の班では、
「ウォーターバレット!」
大量の水が木人へ叩き付けられ、
「アイスバレット!」
次の瞬間には氷が木人を覆い尽くした。
さらに、
「ストーンバレット!」
「ソイルバレット!」
石弾と土塊が連続して命中し、木人は激しく揺れる。
女性騎士たちも次々と魔法を切り替えていく。
「ホーリーバレット!」
白い光が木人を撃ち抜く。
「シャドウバレット!」
黒い弾丸がほぼ同じ場所へ命中した。
一つの属性にこだわる者はいない。
土。
光。
闇。
火。
水。
状況に応じて最適な魔法を選び、迷うことなく撃ち分けていく。
教導役の騎士たちも班を回りながら声を掛ける。
「切り替えが速くなっています。」
「次は魔法と魔法の間を短くしてください。」
「そのまま続けましょう。」
助言を受けるたびに、騎士たちの動きはさらに滑らかになっていく。
その様子を見ていた騎士団長は、思わず副団長へ顔を向けた。
「本当に数日前まで魔法を知らなかった者たちなのか。」
副団長は苦笑しながら頷く。
「私も同じことを考えておりました。」
「今では剣を振るうように魔法を使っています。」
訓練場では、六属性のバレットが絶え間なく木人へ降り注いでいた。
木人には無数の傷跡が刻まれ、土埃が舞い上がる。
しかし騎士たちは疲れた様子を見せない。
魔力循環を続けているため、魔力切れを起こす者が一人もいなかった。
アークは静かにその様子を眺める。
一人ひとりの魔法は、昨日よりも確実に洗練されている。
何より大きく変わったのは、自分で考えて魔法を選択するようになったことだった。
指示された魔法を撃つだけではない。
自ら判断し、最適な属性を選び、次の魔法へ繋げる。
その姿を見たアークは小さく頷く。
騎士たちは、ただ六属性を覚えたのではない。
六属性を「使いこなす者」へと、確実に成長し始めていた。
夕日が王城の訓練場を赤く染めていた。
七百人の騎士は最後の訓練として、一斉射撃を行っていた。
「始め!」
アークの号令が響く。
「ストーンバレット!」
無数の石弾が木人へ降り注ぐ。
続いて、
「ソイルバレット!」
重量のある土塊が標的を打ち据えた。
間を置かず、
「ホーリーバレット!」
眩い光が木人を貫く。
「シャドウバレット!」
「ダークバレット!」
闇の弾丸が次々と命中し、
「バインドバレット!」
黒い帯が木人を拘束する。
さらに、
「ファイアバレット!」
炎の弾丸が木人を焼き、
「ウォーターバレット!」
大量の水が衝撃を与える。
「アイスバレット!」
木人の表面が白く凍り付いた。
最後は、
「ボイルバレット!」
「スチームバレット!」
高温の熱水と蒸気の弾丸が連続して炸裂し、訓練場は轟音と白い蒸気に包まれた。
土。
光。
闇。
火。
水。
七百人の騎士は六属性の魔法を迷うことなく切り替え、次々と木人へ命中させていく。
もはや誰一人として属性の切り替えに戸惑う者はいない。
木人は無数の傷跡に覆われ、原形を留めないほど破壊されていた。
騎士団長は目の前の光景に言葉を失う。
「これが……王国騎士団。」
昨日まで剣だけで戦っていた騎士たちが、今では全員六属性を自在に操っている。
しかも互いに教え合い、互いに技術を高め続けている。
副団長も静かに頷いた。
「これほど短期間で成長した集団は、王国の歴史にも存在しないでしょう。」
教導役となった騎士たちは最後まで班を回り続けていた。
「切り替えが速くなりました。」
「命中率も上がっています。」
「その感覚を忘れないでください。」
教えられた騎士は、今度は隣の仲間へ助言する。
「少し手首を下げた方が狙いやすい。」
「魔力は一定に流してください。」
教師が教師を育てる。
その流れは、もう誰にも止められなかった。
アークは静かに訓練場を見渡す。
七百人全員が魔力循環を維持しながら、六属性を自在に扱っている。
教導役は騎士団長を中心に自然と動き、困っている者へすぐ助言が飛ぶ。
もう自分が細かな指示を出す必要はない。
騎士団は、自ら学び、自ら教え、自ら成長する集団となっていた。
騎士団長がアークの隣へ歩み寄る。
「アーク殿。」
「あなたは本当に不思議なお方です。」
「魔法だけではありません。」
「人の育て方まで変えてしまわれた。」
アークは小さく笑った。
「私が変えたのではありません。」
「皆さん自身が変わったのです。」
騎士団長は訓練場を見渡し、深く頷いた。
その視線の先では、若い騎士が若い騎士へ教え、女性騎士が男性騎士へ助言を送り、ベテラン騎士が新人の成長を喜んでいた。
誰もが教師だった。
誰もが生徒だった。
アークはその光景を静かに見つめ、誰にも聞こえないほど小さく呟く。
「卒業も近いですね。」
その言葉には寂しさはなかった。
教師にとって最も喜ばしい瞬間とは、生徒が教師を必要としなくなること。
王国騎士団は、まさにその一歩手前まで成長していた。
夕日に照らされた七百人の騎士は、六属性を自在に操る新時代の騎士団として、確かな自信を胸に次の訓練へ向かおうとしていた。




