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【第2章】君たちを繋ぐパレット 第19話 

ハチの火葬に、わたしは立ち会うことはできなかった。

どうやら家のすぐ近くに車が来ていて、そこからハチは雲の上に向かったらしい。パパが教えてくれた。ハチの骨は台所の横に置いてある。


「にゃーちゃん。せっかく兄弟ができたのにね……」

ママがわたしのほっぺを撫でてくれる。ママの指そして手のひらから悲しみが伝わってくる。……ハチのこと……大切に想ってくれてたんだね……。


「にゃあ……(うん……)」

「にゃー……!(寂しいよー……!)」


わたしも寂しい。せっかく再開できたのに。ハチが旅立ってから、パパとママが前みたいに元気になるまでに少し時間がかかった。


(やっぱり……パパとママも落ち込んでるんだ)


わたしは寂しい。でも……パパとママは、何に対して落ち込んでいるんだろう?考えれば考えるほど、わたしは分からなくなった。そんな時、パパたちをもっと落ち込ませてしまうことが発覚してしまった。


「腎臓病」

本当はもっと複雑な名前だったけど……聞いてもよく分からない。それが襲ってきたのは突然のことだった。


(……気持ち悪いっ)


ご飯を食べたわけでもないのに……今まで感じたことがないような吐き気。パパたちはお仕事だったから、家の中でたくさん吐いてしまった。誰も助けてくれる人はいない。


「にゃーちゃん!? どうしたの!」

帰ってきたパパはビックリしていた。これまで吐いたことのない回数、吐いたから。量も色も……今までとは全然違った。


(……うーん……)

(苦しい……)


ずっとパパたちが帰ってくるまで、うずくまっているしかない。そういえば……最近トイレも全然出ていない。お腹も痛かった。


(やばいなぁ、これ……)


全身が震えるように寒く、まるで外で生活しているかのよう。パパたちがエアコンを付けて行ってくれたのに。


その後のことはあんまり覚えていない。パパが急いで車に乗せてくれた所で……わたしの意識はなくなっていったから。


「……急性……ですか?」

「はい……残念ながら……」


ぼんやりとした意識の中で、パパと誰かの声が聞こえる。内容は難しいから分からないし、所々しか聞き取れない……でも、何となくヤバいんだろうなということだけは分かった。


「……はぁ」

「にゃーちゃん……」

帰りの車の中で、パパは泣いていた。ごめんね。何か……車の中のパパはいつも泣いてる気がするよ……。わたしのせいだ。


寒い……

気持ちが悪い。


(苦しい……息が……)


しばらくすると呼吸することさえ難しくなっていた。吸っても吸っても……空気が入ってこない。


「先生……何て?」

「急性の腎臓病らしい……」

「にゃーちゃん……」

ママ……目に涙を浮かべながら、わたしに頬を摺り寄せる。ママ……わたし苦しい……。


はっ……はっ……はっ……

肩を大きく動かし、いつもの何倍もの速さで息をしないと……苦しい。


「……今夜が山って言われたよ」

「そんな……」


はっ……はっ……はっ……


(もう……無理だ……息ができない……)


ぐぅーっと体全体が苦しくなるのが分かる。

わたし……迷惑かけてばっかりだ……ごめん。パパ。ママ……


もっとたくさんパパと遊びたかったなぁー……

もっとたくさんママに良い子良い子して欲しかったなぁー……


もっと――

たくさん――


「にゃーちゃん!?」

「ねえ! にゃーちゃん?」

「ねえ! ねえ!」


消えゆく意識の中で……誰かがわたしの背中を揺すっているのが分かる……

分かった。ママでしょ?この手。

分かるよ。わたしには――


あっ……わたしの頭を触ってる、この手……

パパでしょ?

分かるよ。わたしには――


パパとママは幸せだったのかな

それとも迷惑だった?

わたしがお家に来ちゃって……


わたしは幸せだったよ

パパやママと一緒に過ごせて、楽しかった。


幸せって……こういう気持ちなんだ……


「……にゃーちゃん」

「幸せな日々をありがとう……」

「うちに来てくれて、ありがとう……」

「また、姿を変えて……会いにきて……」

「にゃーちゃん……」

「……ありがとう……」


遥か遠くで、パパとママの声が……かすかに聞こえる。


そんな……パパとママも幸せって言ってくれるの?

嬉しいよ? わたし……


パパとママに――

出会えて良かった。


ありがと


視界が暗闇に包まれた――







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