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【第2章】君たちを繋ぐパレット 第18話

ハチの体調は、日に日に明らかに悪くなっていた。医者じゃないわたしが見ても明らかなくらいに。でも、パパもママも……もちろんわたしも、それを口にすることはなかった。

ハチが一番分かっているはずだから。


わたし達ができることは……いつもと同じようにハチと接することだけ。


(ねえ? ハチ)

(……なんだよ)

(ママとパパ、優しいでしょ?)

(……)

(何よ。そう思わないの?)

(……いや、思うよ)

(でしょでしょー? 優しい人もさ、いるんだよ)

(あぁ、そうだな)

(てかさ、体調……大丈夫なの?)

(……なんだよ。分かり切ったこと聞くなよ)


ハチはまだこのお家に来て間もない。だから……ハチのお気に入り場所もない。パパとママは「外が見える場所の方が良いかな」と言って、ハチのベッドを外が見える窓側に作ってくれた。


「はっちゃん、大変だったね」

「よく今まで頑張ったな。大変だったろ」

ママたちは手が空くと必ずハチの体を優しく撫でた。本当はわたしもやって欲しいなと思うけど……ぐっと我慢する。


「外は……危険が多いな」

「でも、難しいわよね。家の中だと自由が無い気もして」

「……そうだなぁ」

「外をのびのびと走り回れる方が幸せなのかな……とか思ったりもするし」

「うん」

「どっちが猫ちゃんにとって……幸せなんだろうね」


なるほど……考えたこともなかった。外は怖いとずっと思っていたけど……確かに自由に走り回ることができるし、遊び場所だってある。窓の外を見ていると、たまに飛んでいる鳥だったり、蝶だったり。追いかけたくなることも多い。


(「幸せ」かぁ。……わたしにとっての幸せって……何なんだろう)


(ねえ、ハチ)

(……なん……だよ)

(……大丈夫?)

(ん? あぁ。ちょっと眠いだけだから)

(ハチってさ、幸せ?)

(……どうだろ。さっき言ってたことだろ?)

(そう。幸せって何なんだろうね)

(難しいことは分からないけどさ……)

(うん)

(そういえばこの前、トラに会ったぞ)

(……えっ?)


トラ。ずっと気になってた。ハチとはこうやって再開できたけど……トラは何をしているんだろう?って思ってた。上手くやれてると良いけど。


(どこで?)

(……公園)

(何? トラも……外にいるってこと?)

(……詳しくは……聞いてないけど……あいつも逃げ出してきたっぽいぞ)

(そうなんだ……)


確かにトラは気難しい。考え込んでしまうタイプだったから……ハチと同じように、自分と合わない人の家に行ったら、逃げ出すのも頷ける。


(元気だと良いけど……)

(……そう……だな……)

(ねえ、大丈夫?)

(……ちょっと眠いから……少し寝るわ)

(うん……お休み)


そのまま、ハチが目を開けることはなかった。


わたしは泣いた。ハチは幸せだったのだろうか?外で自由に生きていた方が幸せだったのだろうか?……わたしには分からない。


パパとママも泣いていた。「よく頑張ったね」「よく頑張ったね」と目を開けることのないハチを……ずっと優しく撫で続けながら――


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