着いたはいいけど
王都の城門をくぐり抜け馬車乗り場に着くと馬車のおじさんとはここでお別れである。
ユリーカ少女は馬車が止まると早々どこかへ行ってしまった。
「着いたはいいが試験は明日か」
そう、口にするとセトも同意するように意見を述べる
「ええ、どうせですから今日で必要な物を揃えた方が良さそうですね。」
「必要なもの?」
どうやらランは余り資料を読んでないようだ。
「ええ、当日は実技もありますから武器を整えなければいけないですしアルセンブルク学園は寮制では無いので住む場所も考えなくては…」
「それなら、僕の所に一緒に住む?」
そう2人に提案すると少し驚いたようにセトが口を開く
「我々にとってはいい事ですけど…レオくんはいいんですか?」
「うん。元々バイロウ領からは出て王都に住むつもりだったのを親が知ってたみたいで事前に買ってるみたいでさそれでその家が一軒家なもんだから、親は彼女とかと暮らせって言ってたけどそんなつもりないしランとセトならいいかなって」
その言葉にセトが少し申し訳なさそうに意見を述べる
「それはどれくらいの広さなのでしょうか?流石に迷惑にならないほどに広ければ大丈夫だと思いますけど」
その意見は最もである。いくら何でも狭ければ迷惑云々の話どころではなくなるからだ。
「話によればバイロウ家と同じくらいの大きさって聞いたよ?」
勿論。家族5人家族にしては少々大きいバイロウ家だが王都からすれば軒並み連ねてそれくらい大きいと言わないだろう。
日本で例えれば6畳ほどの部屋が来客用のを合わせて10つ程でダブルベッド2つが置けるほどの寝室が4つ、応接室など他にもあるので言い出せばキリがないが一括りで言うとお金持ちの別荘と同じくらいの広さである。そんなことを考えているレオとは対照的にセトはレオがバイロウ家と同じくらいという言葉を聞いて絶賛思考停止中である
「おーい、大丈夫かー?」
ランのその声で思考を再開させる。
「バイロウ家と同じくらいってことは貴族層の住宅エリアだよね」
「うん。そうらしいよ」
「大丈夫かな」
「うん?何か問題あった?」
「いや、広さは問題ないし、貴族層の住宅エリアならアルセンブルク学園からも近いから便利だと思ってね」
大丈夫かなと言う言葉はそういう事らしい。
「それじゃあ、住まわせてくれる訳だし月いくら払えばいいのかな?」
「うえ!?そんなのいらないよ。流石に友達からお金を取るのは…」
「そうも言ってられないだろう?うーん金貨1枚はくだらないか?」
金貨1枚は取りすぎだろう。この世界では1番低い順から鉄貨、銅貨、銀貨、金貨となっており、各100枚でその上の物1枚と同価値になっている。金貨1枚は日本でいうと10万程だ。なので鉄貨1枚一銭、銅貨1枚10円、銀貨1枚千円、金貨1枚10万円になるという訳だ。と、言っても現実と異世界では千円の物が同じ価値で買えるとは限らないのだが。それを踏まえセトに値段を下げさせる
「流石に金貨1枚は高すぎじゃないか?せめて大銀貨1枚程だろう?」
「いや、それなら間をとって大銀貨5枚でどうだい?」
「うーん。それ以上は貰えないしなぁ。セトも引き下がらないだろうし、それでいこう」
いつの間にやら値切りっぽい会話になっているのは気のせいだろうか?因みに大銀貨と言うのは銀貨10枚分の価値をした銀貨のことである。他にも大鉄貨や大銅貨などがあるが大金貨はなく逆に鉄貨はほぼ大鉄貨として流通している。細すぎるのも面倒なのだろう
「話終わったかー?」
どうやらランは僕とセトが話してる間ずっと待っていたらしい。
「終わったけど、どうかしたのかい?」
「荷物!レオ家に運ばなきゃいけないだろ?」
「ああ、確かにレオくんの家に住むんだからそうですね」
「住所ならここに…」
「それじゃあ、僕らは先に荷物を運ぶからまた後でね。レオくん」
そう言うとセトはランを連れて人混みに消えていった
「にしても人混みすごいな。家具はあるし、買うものってあったかなー?」
そう独り言を呟きながら散策する。周りには屋台のようなものがズラッと並んでおり市場に近い感じだ。これなら、明日まで暇をせずに済みそうである。
「確か魔法杖とか必要なんだっけか…どうせだし自作しようかなぁ?」
魔法杖と言うのは魔法の道具通称魔道具のことである。魔法を使う上で発動を促す棒状の魔道具の事で大きさは自身の身長サイズから手のひら2つ分までと様々であり、杖先には魔法石や魔石が付いて銀などの触媒金属で飾られている。
魔法石や魔石と言うのは天然の宝石に魔力を注ぐ事で作られる宝石を魔法石と言い、魔獣から取れる魔獣の核を魔石と言う。因みに魔法石は人口魔石とも呼ばれている。
「さてと、そうと決まれば材料だよなー?魔法杖の魔法具は本体となる魔力樹の枝と魔法石か魔石と触媒金属の銀が必要だよな…」
確か、マジックバックに魔法石に加工する前の宝石と銀はあるけど魔法樹は無いんだっけ
「どこかに売ってないかな…魔力樹の枝」
そう呟くと目の前にいた商人のおじさんが声をかけてきた
「兄ちゃん魔力樹探してんのか?」
「え?ええ、場所知ってるんですか」
「おう。3つ先の店に売ってたはずだぜ?」
「3つ先ですね!ありがとうございます」
おじさんに言われた通り3つ先のお店の商品を見ると言われた通り少し高いが魔力樹が売られていた。
「お兄さん、この魔力樹買いたいんですけど…」
「いいですよ!それだと銀貨25枚になりますけど大丈夫ですか?」
銀貨25枚か…指揮棒程の大きさの枝が5本束ねられている。この大きさなら1本銀貨4枚程だろうが…物価が上がってるのか?
「あ、はい。大丈夫です、銀貨25枚ですね」
本当は買うべきか考えた方がいいのだろうが今すぐ欲しいものなので少し奮発する。
「ありがとうございましたー!」
んじゃ、家に戻って作るか!