目指すは王都
翌朝
目覚めてふと外を見るとフェル兄さんとフラン兄さんが手合わせをしていた。多分この10年ずっと2人でああして手合わせしてきたのだろう。
「さてと、準備するか」
そう思いながらふと気がつく
「あ、収納魔法とか無いのかな?無限収納とか夢があるよな…試してみるか?…ええっと…我が願うは収納鞄 時を刻まず質量を超越する【マジックバック】」
そう唱えると、ポンッと鞄が出てきた。一見ただの肩掛け鞄に見えるが開いてみるとなんとも言えない空間がある。試しに1週間分の衣類と貴重品を入れていく。
「おおっ!全部入った。あ、でも取り出す時ってどうするんだ?…頭に思い浮かべて取り出したらソレって事が多いいけど…あ、当たりだ」
この【マジックバック】は便利な機能が付いているようで、基本的には思い浮かべるだけで取り出したいものが取り出せるようだ。他にも他人には普通のバックにしか見えないし、いざとなればバックなしでも発動できるようなので便利である
「そうと分かったら、着替えは半分はもっていこう。っと、そろそろした降りないと」
気がついたら外にいた2人も居なくなっており、下から自分を呼ぶ声が聞こえた
「はーい!」
***
「さて、お前に渡すものがある」
父が真剣な面持ちで見やる
「渡すもの?」
「本当はお前が成人する時に渡すつもりだったんだがな」
そう言って手渡されたのはローブと剣
「これは…剣?」
「剣は剣でもダマスカス鋼の剣だ」
ダマスカス鋼ってこの世界にもあるのか
「鋼の剣より硬い丈夫な剣だ。父さんが鍛えたんだぞ」
「え、父さんって鍛冶できたんだね」
「おう!フェルとフランのも俺が作ったんだ」
「そっか。大切にするよ」
「おう!」
「レオ、たまには帰ってこいよ」
「フェル兄 それって母さんが言うことだろ」
「ふふっ、そうね。レオ本当にたまにでいいから顔見せに来てちょうだいね」
「うん。取り敢えず落ち着いたらまた来るよ」
「じゃあな」
「またな」
「うん。フェル兄さんもフラン兄さんも頑張ってね」
「「おう!」」
「じゃあ、行くね」
バタン
うん。結構耐えたな。実質家族の記憶は約6年しかない…それでも、やっぱり寂しくなるな…っと、馬車が来る!
「おっ、兄ちゃん。もしかして兄ちゃんも王都に行きたいっていう子かい?」
「はい。アルセンブルク学園に入学しようと思いまして」
「おっ、そういやもうそんな季節か。確か入試試験つー奴だったな」
「はい。その試験を受けに行くんです」
「そうか!ま、乗りな。乗り心地は保証しねーがちゃんと王都に届けてやんよ」
「ありがとうございます」
そう言って乗合馬車に乗る。まだ誰もいない。それもそうだろう、僕が乗った場所は日本でいう電車で言えば始発になるのだから
「あと何人乗るかねぇ」
「そうですね。あと6人位は乗ると思いますよ」
「ほう?そりゃなんで」
「僕みたいな感じの人があと6人道端に居るからですね」
「兄ちゃん、魔力探知が使えるのかい?」
「いえ、そんな出来のいい魔法じゃないですよ。ただ道端に6人いるって分っただけですから。人が多い場所じゃ、全くの使い物にならないですし、それに消費する魔力が尋常じゃないですからね」
「ならなんでそんなの使ったんだい?」
「練習ですよ。まさかここまで魔力を削るとは思いませんでしたけど」
「はっはっはっ。そうかいそうかい…」
***
その後、予想通り6人が乗り込み馬車の中は総勢7名となった。定員は10名ほどだろうがこれ以上乗り込む事はないだろう。暇なので母から貰った魔法学の本を読んでいると声をかけられた。
「なぁなぁ、アンタもアルセンブルク学園の入試を受けに行くのか!?」
「え、僕の事?」
「おうっ!思ったより随分と幼い声だな」
「そうかい?ところで君は?」
「俺はランゼル…ランと呼んでくれ!」
「そうかい。僕はレオナルド…普段はレオと呼ばている」
ランゼル…多分平民とかの出身だろう。どうやらこの世界で名字があるのは貴族だけのようだからな
「ランは見たところ12位かな?」
「おう!お前はいくつだ?」
「そうだね。確か今年で16だったかな?」
「へ!?レオって歳上だったのか!」
その言葉に周りに座っている奴らも驚いた様子を見せる。確かにここまで見た目が幼ければ驚くだろう。勿論年齢16と言うのは嘘ではないが身体的に言えばまだ11なので年下だ。
「一応ね?でも、このナリじゃそう思われても仕方ないけど」
「本当にそうなのかしら?」
と、会話に入り込んできたのはランの目の前にいた少女だ
「それは、どういう意味かな?」
「言葉の通りよ?貴方もこの馬車に乗っていると言うことはアルセンブルク学園の入学希望者。私も例外ではないわ。だから初級魔法の【身体表示】は使えるわよ」
【身体表示】これは自分の身体的能力などを確認する、俗に言うステータスというやつである。と言っても所詮は下級より低い初級魔法なので、見れるのは相手の年齢や健康状態等の極わずかな情報だが…あ、そっか年齢見れるのか
「身体表示の魔法によれば貴方は11となっているけどどういう事かしら?」
「そう言えばそうだねぇ。でも、身体表示の魔法が偽装出来ないわけじゃない」
「貴方に」
「貴方に偽装魔法が使えるはずがない?そんなの君が決めることじゃないだろう?」
「くっ…」
「だが、確かに僕は11だ。それは身体的な年齢であって実際には16年ちゃんと生きてる。その意味が分かるか?」
「…その」
急に問われるとは思わなかったのか口篭る
「何か呪いのようなものがかけられているとかでは無いのでしょうか?」
と、別の男の子が喋る。ランとも喋っていたので仲がいいのだろう
「ほう?よく分かったね。彼女の言った通り11歳である事には変わらない、例え16年生きていたとしてもだ。さて、君はなんの呪いについて分かるかい?」
そう言って先程の彼女に問いかける
「い、いえ」
「多分、成長速度を遅くする類じゃないでしょうか?レオくんが言うには16年生きてるけど身体表示では11と出てるからね」
「正解。よく分かったね?っと、君の名前は?それと君も…いや、一層の事自己紹介をしようか」
「だな!改めて俺はランゼル。ランでいいぜ!歳は12だ」
わんぱくな性格なのだろう。the少年って感じだ
「私はセトリスタ。セトと呼んでください。敬語に関しては癖なので気にしないで下さいね。歳は13です」
さっきの呪いと言い当てた子だ。敬語キャラなのだろう。少し大人びており生徒会で言えば会長、副会長あたりか
「…私はユリーカ。歳は12よ」
少しいじめすぎたか少し落ち込んでいる…が大丈夫だろう。
残りの3人は入学希望者しゃじゃないらしい。3人ともローブを着ており、フードを被って顔が見えないが剣なんかの武器を持っているので冒険者か何かだろう。
「ま、気楽に行こうよ。王都にまでまだ時間があるんだしさ」
「そうですね」
「なぁなぁ、セトは風の魔法が得意なんだっけ?」
「そうですね。強いていえば風魔法ですね。相性が1番よかったのは風ですし」
確か誰でも一つは適正属性があるんだったな。僕は全属性だった気がするが、今は一つだけにしておくか
「ランはどうですか?それとレオも」
「俺は火だ!」
「分からないかな。よく分からないんだよね。」
「そうなんだな!でも、火はカッコイイぞー!」
あ、今ランがなんでアルセンブルク学園に入学希望か理由が分ったわ。魔法使えたらカッコイイからだ。多分この事がセトにも伝わったのかなんとも言えない顔をしている。
「あーうん。かっこいいね」
セトがランを抑えている様子からしてやはり、仲がいいのだろう。ユリーカ少女は馴れ合う気はないらしく話に入ってこない。
それから1週間たった。この1週間でセトとランとは仲が良くなったと思う。ユリーカ少女は一向に仲良くなれないが…そう思いながらふと馬車から顔を出すと
「おっ!王都の入口が見えるぞ」
その声に反応してランとセトも顔を出す
「おお!でかい!カッコイイ!」
「確かに大きいですね。それにアルセンブルク学園の入学試験があるからか結構混んでますねぇ」
「まだ少しかかりそうだな」
そうやって顔を出しながら会話していると馬車の人に怒られる
「こら、まだつかないんだから馬車の中で大人しくしてろ」
「「「はーい」」」
さてさてさて、王都まであと少しか…やっと魔法を習えるんだ!…まぁ、試験に合格したらの話だけど




