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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第一章  群雄割拠と獅子身中
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番外編02枚目 罰を受けた後にライバルが?

ネコヤは困惑していた、彼の住居は割と一等地に近いマンションの一室なのだがその玄関の前にお土産を差し出し土下座する一団が居座っているのだ。


「えっと・・・マリス少佐・・・・その・・・困るニャ」

「なにとぞ、なにとぞ、アース卿の御怒りを解くのにご協力を」


例の会議の失敗で当分の間、そばに(夜)に呼ばれないという彼女にとっては耐えられない罰を受けたらしい。結果の美人が男の部屋の前で土下座するというすでに世間体から悪すぎる為、周りからひそひそと噂され始めて非常にまずい。


「と・・とりあえずマリス少佐は入るニャ、ほかの方はちょっと」

「お前ら戻ってろ」


マリス少佐が命令すると土下座していた一団が潮が引くように去っていった。


「こっちにどうぞだニャ」


覚悟を決めて居間に通し、手土産を受け取り珈琲を入れる。手土産を見るとかなり高い洋菓子をもってきており本気度がうかがえる。珈琲を相手と自分のところに置き向き合って座る。アース卿の御手付き後、女性として磨きがかかったらしく前よりも綺麗にみえる。


「まぁ、アース卿もしばらくしたら怒りもおさまるからおとなしくしてればいいニャァ」

「その間にほかのライバルが来たらどうするのですか」


卿に限っては無い無いと大笑いして否定したものの後日本当にライバルが出るとは、この時のネコヤは思ってもみなかったのである。


「それにアース卿は一度決めたらなかなか撤回しないからニャァ」

「だからこそ、信用のあるネコヤ様に頼ろうと・・・・・・」

「・・・信用ならまぁ・・・ほらアトリのほうがあるニャ、アトリはアース卿自ら軍略と内政を教えてるニャ」

「流石に彼に頭を下げるのはつらいものがあります、何卒ネコヤ様」


再び椅子から降りて目に涙をためつつ土下座を敢行する女性を相手にこれ以上強く言えないネコヤであった。



ほぼ同時刻、アトリはとりあえず受け取った紹介状に目を通して目の前の女性に目をやった。黒の短髪で緑の何故かスリットが深いチャイナドレス。整った顔立ちで、スタイルは何と言うか出るところは完璧に出て引っ込むところは引っ込んでいる、それをチャイナドレスがこれでもかというくらい強調している。顔も相当の美人に位置するであろう、ただ何故か自分の直感が不穏であると警鐘を鳴らしていた。


「アルゲイン閣下とメリア閣下にこちらに来るように言われまして参上しました、よろしくお願いします」

「軍学と内政に其れなりに造詣が深いとありますが・・・・」

「はい、多少でしたら議論も可能です」

「それでは失礼して」


アトリが簡単な題材で議論を挑むと、丁寧に理論建てして反論してくる。軍学に関してもケースバイケースできっちり反論してくる。確かに掘り出し物だ、あの二人が押すのも解るが最後の一文に大変申し訳ないとあるのがどうしてもわからない。


「はい、結構です後日アースライト閣下にお引き合わせいたします」

「噂の主にお会いできるとは光栄です」

「この紹介状とその能力があれば取り立てられることは間違いないでしょう」


その一言で微笑むので紅茶を進めつつ質問は無いかと聞いてみると、アースライト外務卿の人なりと性格を教えて欲しいといわれるのでつい熱が入って、どれ程素晴らしい主君か、そしてどれ程能力重視で有能かを語ったところ何となく嫌な予感がした。


「素晴らしい方なのですね」

「ええ、少なくとも私は心身をかけております」


もしお仕えすることが出来ればこれから一緒に支えられれば幸いですと微笑むと後日の待ち合わせ時間を確認し退出していった。


「・・・・・・やらかしたかも」


冷めた紅茶に口をつけ誰に言うでもなくアトリは気まずそうに自分自身に言い聞かせるのであった。



やはり噂通りの方らしい、兵士の方や街の方に聞いても悪い話は出てこない、うちの軍を平定した時も見せしめはあったもののそれ以外の損失や略奪を一切許さなかった。その後責任はすべて私にあるので苦情は私に言うようにと大々的に宣伝し、アルゲイン閣下やメリア閣下に非難が集中しないようホットラインまで敷設していた。


「やっと巡り合えたかもしれません」


ぽつりとつぶやきホテルに向かう。今まで自分を見てきた上官はやれ愛人だの女が成り上るだの私自身を見ていなかった。そんな相手は一切目に入れてこなかったがこの方は違うかもしれない。私の心身共に全てを捧げてお仕えする方になるかも知れないと思うと今から期待でその日まで眠れなそうである。


「とうとうアースライト外務卿が宰相を兼任する事となった模様です」


街角の街灯でニュースが放映し未来の主を映し出す。


「今回の責任のすべては私にあり部下にはない、部下は命ぜられてやったに過ぎない、市民の諸君らの不満はすべて私のせいであり、文句があるなら直接訴えて欲しい、いつでも聞き入れる準備がある」


大画面で訴えるアースライト外務卿が大写しになる、ああ、なんて理想の上司であろうか、ただ、女の直感なのだろうか、画面に映って居る右後ろの赤髪の女性が気にかかる。視線はずっとアースライト外務卿を向いている。


「・・・当然これほどの方ですから女性はいますよね・・・負けませんけど」


ナンパ目的で近づいてきた男を無視してそのままホテルに向かう、何はともあれまずはお会いしてからだ、そう言い聞かせるとしつこく付きまとってきた男を簡単に沈めてホテルに向かうのであった。



「と、言うわけなんだニャ」

「という感じでね」


アトリの自室にネコヤが不味そうに訪れると、アトリもやっちゃった御免と謝りながら迎え入れた。お互いの話を推測すると紹介状の一文も理解できたし、火薬庫の傍で花火をしながらダンスしている状況が簡単に理解できた。


「・・・・不味くないかニャ?」

「不味すぎると思う」


お互いに顔を見合わせると珈琲を一気に飲み干した。胃痛懸案通り越して吐血ラインまで行くんじゃなかろうか、簡単に想像がつくしその後の卿の疲弊ぶりが目に浮かぶ。


「「どうする(ニャ)」」


ほぼ同時にお互いに顔を見合わせ悲観に暮れる、メイファ提督は人材としては有能なため紹介しなければならない、マリス少佐もこれ以上干からびられては警護も巡察も能力が落ちてしまう。どちらも何とかしないといけない立場に二人ともなってしまっていたのであった。


「よし、犠牲者を増やすニャ」


そういうとコンソールを急いで二つつなげるとアルゲインとメリアが映し出される。どういう状況であるかを二人に説明し協力するように話すと及び腰で有ったので、アトリが二人を恫喝し、仕方なく協力することになるがその表情はあまりにも暗かった。


「優秀な人材をっていうから推薦しただけですが」

「旦那なら使いこなせるかな~ってほら」


しどろもどろに二人して弁明し続ける。


「じゃぁ、マリス少佐に説明を」

「「無理っす(です)」」

「ただ、メイファ提督がアース卿に惚れたとかまだ言ってないわけでして」

「そうそう、杞憂って線もあるんじゃないんすかねぇ」


二人そろって楽観的な話をわざと降ってくるが表情は既に悟っているらしく、諦めの色が濃い表情であった。ネコヤもアトリもすでに土気色を通り越した顔色になっており事態の深刻さはより深さを増した。


「少しお待ちください、探ってみますので」


メリアが通信用コンソールを開くとメイファ提督に連絡を入れる。


「はい、メイファであります」

「ごきげんよう、いかがでしたか?紹介したアース卿の感想は」

「今までの上官と違い非常に尊敬できる相手であると確信しております」

「そ・・・それは宜しかった」

「心身共に全てを捧げるに相応しいのではないかと思っております、最も閣下が私ごときの貧相な体に興味を持ってくれるかが目下の不安であります」


何言ってんだこいつという表情をするメリアを誰が攻められようか。周りの男提督たちもこいつ鏡見たことあるんだろうかという表情を色濃く浮かべる。


「とにかく、メリア閣下、アルゲイン閣下には最大限の恩義を感じております、小官の出来る事で宜しければ恩返ししたいで有ります」


じゃァ頼むから色恋沙汰に発展だけはしてくれるな、という言葉を二人そろって飲み込む。階級が上がったものの苦労も比例して酷くなってないか?と顔を見合わせため息をつく。


「お疲れのようですし、私もいろいろ勉強しますゆえ失礼いたします」


丁寧なお辞儀と共にコンソールが切れる。その瞬間、全員お通夜状態で顔を見合わせる。とりあえずネコヤはマリス少佐のフォローを、アトリはメイファ提督のフォローを、二人は最悪の事態を想定して準備をすると言う事でその場は解散となった。もっとも、これから始まる嵐のような出来事のスタートラインはすべてここから始まったといっても過言ではないのであった。

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