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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第一章  群雄割拠と獅子身中
13/110

報告書10枚目 仮初の平和

電撃作戦での惑星連合共和国の統合は各国々に衝撃を与え、軍事バランスが崩れる結果となるが、お互いの国家の足の引っ張り合いが始まり、また首都星テラから離れた宙域でもあることからテラ連合側は厳重警戒をしつつ軍備を整えるといった、消極的軍事行動にとどまることになった。


「そう言うわけでありまして女王陛下にお引き合わせをと」


深々と臣下の礼を取り、後ろに控える二人を紹介する。いつも通りの笑顔を崩さずパンドラ女王はゆっくりと立ち上がった。


「アルゲイン殿、メリア殿、此度の事まことに不幸な事故だと思います」


不幸な事故?二人とも顔を見合わせ疑問を浮かべる。


「何でもスリースター公国に略奪されていたところをうちの防衛艦隊と鉢合わせになり乱戦になったと聞きますが」


にこやかに首をかしげながら違ったかしらと言った感じで報告書に目を通す。


「まことに不幸な事故であります、その結果三党首の一人も討ち死になされましたが、お二人は帝国で保護できました」


余計なことを言ったらわかるなという目で釘をさす。さらにその後ろでアトリやマリス、ネコヤがばれない様に二人に殺気を放つ。


「へい、アースライトの旦那には危ないところを助けていただき」

「か・・・感謝のしようもございません」


慌てて二人揃えて口裏を合わせて保身を図る。


「あらあら、良い事をしましたねアース卿、さて、御二方ですが、帝国籍になるので准将の地位を差し上げます、今までの領土を二人で考え、分けて治めててください」


再び臣下の礼を取り感謝の意を述べる。ご苦労様です、では退出なさって結構ですよとの言葉にアトリ達に案内されて退出する。


「・・・また事後承諾ですの?ご丁寧にシナリオも書き換えて」


扉が閉まると、静かに底冷えする様に目を開きアースライトを見つめる。


「大変申し訳なく陛下、機を逃すとまた面倒なことがございまして」

「手柄がともなっている間は黙認しますが・・・・・」

「はっ、感謝いたします」

「ただ、気に食わないので罰を差し上げます」


だよなぁとため息をつくとご随意にと臣下の礼を取る。


「罰としてあの二人の上官を命じます、後空席だった宰相も丸投げします」

「え・・・いや・・・ちょっと」


さらっと何言ってくれてるのこの人と言わんばかりに取り乱す。それをさも面白そうに眺めながらパンドラ女王は付け加える。


「外務卿と宰相の兼任に宙域支配者、憧れますわね、権力だらけですよ?」

「わ・・・・・私にはその、責任が重すぎるかと」

「後・・そうだ、元帥から言われてましたので少将までの人事権も丸投げしますから書類としっかり戦ってくださいね」


野心のある人間ならそれこそ喜び勇むのであろうが私にとっては拷問に過ぎない、ストレスと重圧で一気に倒れそうになるのを必死にこらえる。


「ふふ、頑張りなさい、あなたの忠誠は信じています。ただ周りはそう見ない、私は井戸の中の蛙程度ですが空の高さは見えますわよ?」

「へ、陛下が蛙で有らせられるなら私ごときはなんとなりましょうか」

「あなたとマーリンは水ね・・・無ければ困るもの」

「心身を賭してご期待に」


普段と違い思わずこぼしたパンドラ女王のセリフに耳を疑いながら平伏する。


「責任と重圧は人を磨きますわ、期待しています」

「可能な限りは最良の結果を」


微笑むと周りの付き人を従えて退出する。どこまで見えてどこまで理解されているのか、さっぱり解らない。相変わらず底の知れないお方だ。


「井の中の蛙大海を知らず、されど空の高さを知る・・・・か」


呟くと面白くもなさそうに扇子で口元を蔽い執務室に向かう、おそらくあの命令は数分もたたずに発令されるし知れ渡るであろう、面倒ごとは執務室でやり過ごすに限る。


「よぉ遅かったな宰相殿」

「・・・お前の配下全部少将にしてやる」


執務室の扉を開けるなり部屋の住人以上に堂々と椅子に座るマーリンが面白そうに声をかけてきた。いつの間にと苦笑しつつ手をあげる。


「ま、冗談はさておき狙い通りの展開か?」

「階級と役職以外は完璧だな後は誤算祭りだ」


乾いた笑いと共に椅子から追い立てて改めて背もたれに寄りかかり深くため息をつく。それを見届けると同時に扉の外に誰かの気配がするとマーリンが途端に声を張り上げだした。


「陛下に取り入って今度は宰相だと?この腰巾着が」

「悔しければ手柄を立てればよろしい、一国併合位の手柄を」

「この詐欺師が、必ず貴様のやり口を暴いてやるからな」


鼻息荒く扉を乱暴に開け放つ、出て行き様にこっそりウインクしていくあたり手慣れたものだ。蛮族はこれだからと呟くと外にいたアルゲインとメリアが入室してくる。


「・・・はぁ、やっぱり派閥って怖えなぁ旦那」

「我々は上官がアースライト卿なのでアース派閥なのでしょうね」


どうやら命令を聞いたらしく領土の地図を持ってきたらしい。広げると何処から何処までを頂けますかとペンを差し出してくる。とりあえずアルゲインは今まで通りの港の部分と商業、工業部分を、メリアは鉱山部分と農業地部分と振り分け、今後の収入具合でまた多少変えると宣言する。


「何かあれば私はここにいるので報告を上げる事、後は裁量に任せます」

「畏まりました」

「旦那、人材はどうする、頼めばあってくれるのか?」

「二人の目から見てこれはと思う者は推薦状を持たせてアトリに」

「最後に我々から人質とかとらないのですか?」

「いらん、偽りの忠誠は身を亡ぼすのは知っておろうが」


二人とも身震いをすると今後とも忠誠を誓いますと宣言し二人そろって出て行く、割とあの二人お似合いじゃないのかねぇと思いつつ命令書を書き直す。が、思い直してそのままごみ箱に投げ捨てるとお茶持って来いと大声で怒鳴るのであった。


「アース卿そろそろお休みになられては?」

「書類が山になっているのに寝れるか・・・」

「心労が重なるニャ」


お茶を持ってきたアトリが静かに窘める、ついでにさらに書類を追加しているネコヤが素知らぬ顔で心配し始めるがそれなら追加を辞めろ。まぁいい、少ししたら休むので出て行ってよいぞと二人を追い出すと付き人も追い出す。誰も入ってこないようにロックをするとコンソールを操作する。しばらくの後画面が四つ開き相手の顔が見えない会議が始まる。


「これで我らの悲願に一歩近づいたわけだが」

「左様、あの悲劇を繰り返さないための一歩ですね」

「セルペンディアを忘れてはならない」

「我等の関係も知られてはならない、これ以上の細心の注意を」

「連絡方法はまた変える、後日手法は送ろう」

「各員の奮闘を期待する」

「「「「悲願達成の為に」」」」


四人が同時に宣言するとコンソールが消え去る。忘れるものか、悪夢の根本たる原因を、そしてあの馬鹿王の面を・・・・・。憂鬱げに書類を片付けると静かに椅子に体重を預け普段はめったに吸わないパイプ煙草を取り出す。しばらく葉を調合しパイプに詰め静かに吸い出す。


「・・・・・私の手はどこまで血に汚れている、必ずそちら側に行くがまだ早い、仕事は残っているのだ・・・それまでそちら側で休むことは許されない」


パイプ煙草を嗜みながら隠し机にしまってある写真に話しかける。


「もっとも貴方は私と違う場所に行くのであろうが・・・見守ることはできるだろう?どうだ、貴方が買ってくれたパイプ、似合う年齢と階級になったろ?」


目頭を押さえつつ写真に話しかける。


「立ち止まれないし、止まる気もない・・・その為には手段を択ばないしまた選ぶ気もない、私が倒れた時に全ては終るためにまだ力を貸して欲しい」


もはや隠す気もないらしく流れる涙をそのままに写真を見つめる。


「全ての始まりであり・・・・終わりとなる我等の女王セルフィアム・セルペンディア閣下・・・・・いや、セルフ・・・・貴方の子は必ず私が守ろう、そして平和の担い手に・・・・・」


部屋の明かりが全て消え、ただすすり泣く音だけが響くのであった。


「人材ねぇ、お前のところ居るか?」

「召し出すにもアース卿のところとなるとそれなりに有能でないと」


帰りの戦艦の中で顔を見合わせ困ったようにアルゲインとメリアは話し合っていた。


「・・・・問題あるのは多いけどいざ有能であるかと言われるとなぁ」

「素行が~、性格が~と引っかかる人ばかりですね」

「まてよ・・・一人居たろ、ほら、諫言し続けて蟄居させられた」

「お待ちください・・たしかメイファ・ヨウリン提督ですね」

「そうそう、何故かチャイナドレスでスリットの際どい」

「火種投げ込むような気がしますが・・・優秀ですわよね」


ぐぬぬとお互いに考えながら一応文武両道だし今のアース卿には必要な人材でありますし、ただマリス少佐がとお互いに長考におちいる。


「多分・・・・惚れるよなあれ」

「間違いないでしょう、彼女の理想の上司像ど真ん中です」

「仕事は任せる、やれるだけやれ、責任はすべて取るだもんなぁ旦那は」

「・・・・・任せます」


三日後二人の連名の紹介状を握りしめ、黒髪で短髪、緑のチャイナドレスに身を包んだ不思議な提督が、アトリの前に現れることになるとは彼ら以外は知らない答えであった。


「アース卿・・・・そのですね・・・・・」


言葉を濁しつつ隣の提督を紹介するアトリ。


「アルゲイン閣下、メリア閣下より推薦されましたメイファ・ヨウリンです、まだまだ学ぶことも多く若輩ですがアースライト閣下の配下に加えていただきたくはせ参じました」

「軍事に関しても平均以上、内政に関しても平均以上、万能型と・・・・思うのですが」


紹介をしつつ何故か困ったような表情を崩さないアトリを不思議に思いつつ目の前の提督に目を向ける。


「実力主義で使える意見は採用していただけると聞いて」

「当然使える意見なら取り入れるし、その意見の責任者を任せる、ただし失敗したら承認した私の責任だ、失敗を恐れずどんどんやって欲しい」


何故か途中から目を輝かせて此方を見ているのだが、アトリのほうに目をやると珍しく天を仰いでいた。


「噂通りの方で安心しました、身命をとしてお仕えいたします」

「紹介状もある事だし少佐の地位を授けよう、今後も帝国の為に力を尽くして欲しい」

「閣下の為にどの様な苦労も惜しみません、御用があればお呼びください、それこそ夜の」

「あ~~~っと、アース卿はまだ仕事があるのでこれで失礼します」


アトリが発言を遮ってメイファ少佐を連れて部屋を出て行く、何やら不穏なセリフがあった気がしたが流しておくとしよう。隣のネコヤと目が合うがいやぁモテますなと茶化すので数分後彼の頭には扇子が生えていた。まだまだこれから忙しくなりそうであるがそれは別の話なのかもしれない。

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