超級編―国家を転覆させよう15(終)
アストラスに確認をすると、イメリア・フォンティーヌが手引きしていなければ今アズリア王国にいる鬼はアストラスと十六夜だけのはずだった。魔術時も、15年前の騒動で優秀な者はほぼ追い出され、やっと今層が厚くなってきたところなのだとか。
というわけで、十六夜とアストラスはほぼ全力疾走で国を縦断した。鬼だとバレても問題ないという判断だ。
「アストラス様!」
国境に差し掛かると、兵士たちが集まってきた。あれやこれやと渡し始める。
「王都から声明が出ました。女王陛下をアストラス様が拉致したことになっています。イメリア・フォンティーヌが代理で政治を主導するとのことです」
「それで、お前たちは俺を捕まえなくていいのか?」
「いえ!アストラス様が女王様を拉致するはずがありません!イメリア・フォンティーヌとの政争に負けたのでしょう?今は国外に逃れ、また帰ってきてください!」
(戻る予定はないがな)
リリアはそんなことを考えながら、離れて様子をうかがっていた。
「大丈夫そうだね」
十六夜が少女二人に話しかける。リリアはうなずき、シルビアは不思議そうな顔をした。鬼の聴力でしか会話を聞き取れなかったのだ。リリアと十六夜がアストラスに集まる兵士たちの前に姿を見せるから、シルビアも出た。まだ寝間着姿のままだ。少し恥ずかしい。
「女王陛下!」
「こら!近寄るな!」
兵士たちがシルビアを取り囲もうとするから、慌ててアストラスが止める。確かに失礼だと兵士たちは踏みとどまる。
「陛下のお帰り、お待ちしております」
「その時まで、国のことはお任せください」
「―ああ、頼りにしているぞ」
「ありがたき幸せ!」
兵士たちはそろってひざまずく。それはなかなか眺めのいい光景だった。
「こちらのふたりには逃亡の助けをしてもらった。外にも明るい。しばらく道案内してもらおうと思う」
アストラスはふたりをそう紹介した。兵士たちはアストラスの言葉を疑わない。それだけ信用されているということだ。
「これは、ご協力をいただきました。旅のご無事をお祈り申し上げます」
「ありがとう」
リリアが礼を言う。十六夜も笑顔でうなずいた。
こうしてアストラスの人徳で、国境は難なく越えることができた。コーサス国は、基本来るもの拒まず去る者追わずだ。もしかしたら間者などは通していないのかもしれないが。
「やっとコーサスに出たな!」
「ねー」
リリアが両手を腰に当てて声高らかに言う。十六夜も隣で笑う。
「まずは街だな。シルビアの旅道具を買わなくては」
「リリア、大事なことを言っていなかった」
「どうした、アストラス」
リリアは街に向かって歩きながら、後ろで済まなさそうな声を発するアストラスに答える。
「我らは金を持っていない」
「なんだそんなことか」
リリアは意地悪そうに笑って振り向いた。
「食事代くらい返すさ!」
結局リリアは大盤振る舞いでいろいろシルビアに買い与えるのだった。




