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【完結御礼】アオハル転生! 告ってフラれたあの子が「主さま」 ~TS女軍師になったオレは可愛がられてこき使われながら、彼に天下を取らせます~  作者: 香坂くらの
サニー……!

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エピローグあるいは蛇足

付け足し最終話です。


 新体制が始動して数ヶ月。

 ベアトリクスさんの修道院横に、王宮直属の出張庁舎が開設された。


 あのイリアス・リヴァースがかつての重装鎧を脱ぎ捨てて、文官姿でそこの最高責任者となり、日々、民衆の税務相談に乗っていた。

 そんな彼の傍らには、書類の束を抱えたシリルの姿もあった。

 差し入れを届けてやると、今日もこんなやり取りを交わしている。


「……シリル殿、この『納税申告書』や『収支証明書』というものは、剣を振るうよりはるかに骨が折れるな。……あ、しまった。また間違えた」

「泣き言はなしです。あなたが姉さんに会う決断をした時のあの勇気と気概さえあれば大丈夫。計算間違いの一つや二つ、なんてことないでしょう?」


 小さくため息をつきつつ首を振り、香りのいい茶をスッと横に置く。


 以前イリアスが「ノヴァン・ド・オルドーの差し金だ」と凝り固まっていた時に、彼を説得し、オレとの話し合いをセッティングしてくれたのはシリルだった。彼女がいなければ、主さまもオレも、それにイリアスだってどうなっていたか分からない。


「……シリル殿。あの時のことは改めて感謝しているよ。君が突き動かしてくれなければ、今頃僕はアレクシス卿に……」

「感謝なら、言葉以外で示してください。……ま、そうですね、この仕事が終わった後の夕食の約束とか?」


 シリルの不敵な笑みに、イリアスは耳まで真っ赤にした。


「……承知した。格式張った店ではないが、民らに人気の店を予約しておこう」

「え? ちょい待ち。君たちもしかして……お姉ちゃんは何も聞いてないんだがね?」


 ――家柄も身分も、新しくなったこの国ではもはや愛の障壁にはなりえない。由緒正しい家柄の騎士が庶民出の娘に落とされる日は、そう遠くないようだった。


◇◇


 さて、これはヒューゴ配下のレゼロがもたらしたトピックだ。

 王都から少し離れた地方の村で奇妙な光景が見られた。小さな屋敷を選挙事務所に改装し、たすきを掛けたアレクシスが、慣れない手つきで農民の悩みを聞いている。


「……なるほど、なるほど。この用水路の詰まりが原因か。よし、皆の者、記録しろ!」


 背後では、かつての教皇庁幹部や没落貴族たちが、泥に汚れながらメモを取っている。


「猊下、次こそは必ずや当選せねばなりませぬ。そのためには『民の心に寄り添う』のです!」


 幹部たちの必死な声に、アレクシスは眉をひそめながらも、「……言われんでも分かっとる。全ては票のためだ」


 と毒づきながら、自らスコップを握った。

 権威や家柄で人を支配するのではなく、一票を乞うためにすすんで泥を啜る。皮肉にも彼は今、人生で初めて「平民の本当の姿」を自分の目で見ようとしていた。


◇◇


 オルドー城下にあるオレの屋敷は今日、パーティという名の乱痴気騒ぎで賑わっている。主催者はシックスと、最近所帯を持ったレオだ。二人に任せたのはオレだが、正直、近所から苦情が来るんじゃないかって後悔しヒヤヒヤしている。


「サニー。以前キミは私を天下人にしたいと言っていたな。だが、私が作りたかったのはキミの言う『独裁国家』じゃないぞ? キミのようなやつが、戦場を駆け回らなくていい世界だ」

「言いますね、主さま。そんなか弱き美少女をこれでもかってこき使ったのはあなたですよ?」

「あはは、そうか、それもそうだな」


 バルコニーで肩を並べている主さまは、珍しく歯を見せて笑った。――あぁ、カッコ良すぎるじゃないかよ……。正視できなくて、夜空の方に顔を逸らした。ぽっかりとした満月がオレたちを照らしている。


 そういえば……と思った。

 ――あの、修学旅行の夜、外階段で見た月はどんなのだったかな、と。


「主さま、ちょっと聞いていい?」

「なんだ? 遠慮なく何でも聞いていいぞ」

「主さまは今まで、いったい誰のために戦ってきたんだ?」

「唐突なやつだな。なぜそんなことを聞く?」

「なぜって……」


 どうしてかな? 「サニーの頑張りが報われるようにだ」とか答えて欲しいのかな。


「さっきも言っただろ。一生懸命なキミが幸せになれる世界をつくるためだよ」

「オレはまだ、完全に納得できてないんですよ。せっかく手にした王の座をあっさり手放して、民主主義の世の中にしちゃったことを。せめて大統領とかになる道もあったでしょうに」


 おかげで世の中大混乱だし、敵もメチャメチャ増えたし。


「ほほう。それが不満なのか、サニーは。せっかく天下を取らせてやったのにもったいないと?」

「ええっ、そんな解釈?」


 そうなのかも、とチラリと思った顔を覗き込まれてムカッとした。どうしてだろう。


「……だよな……せめて選挙に出て議員に当選して欲しかった」


 聞こえないくらいの小ささで言ったのに、大笑いされた。


「そうか。そうか。要するにサニーは、いつでもこの私を一番に据えておきたいんだな。よーく分かった」

「そ、そ、そんなつもりじゃ――」

「あのな、サニー。言っておくがな」


 ズイっと。主さまが顔を寄せてきた。

 ちっ、近い。ハズい!


「確かに私は民衆に支持され、国政を動かしたい。でもそれが、希望の一番じゃない」

「――はぁ。そうなんですか?」

「それよりも、絶対に失いたくないものがある。私はそれをずっと大事に守りたいんだ」

「うーん……?」


 だから近い。近いって!

 アンタの言葉が全然耳に入んないんだよ!


「いいか。サニー。これからも私の味方であり続けろ」

「……はい?」

「ずっとそばにいろ」

「……」


 庭先の喧騒が急に遠のいた。優しく吹き抜ける風が主さまのマントをはためかせた。

 主さまは、かつての可憐な女子高生じゃない。今は凛々しくも美しい青年だ。その青年にオレは――シルヴィア・フォレストはこの瞬間、完全に気持ちを奪われていた。気づくと右手が大きな手に取られ、まっすぐな瞳を向けられていた。


「――好きだ、サニー。ずっとそばにいてくれ」

「……っ!? 反則だ、そんなストレートに……!」


 どうしていいか見当もつかず、とにかく思いっきり顔を背けた。だけど、握られた手をしっかり握り返している自分を自覚していた。


「……あぁ、ああ。答えは決まってます。……了解です、死ぬまでそばにいてあげますよ。その代わり、嫌にならないでくださいよ?」


 今日は最後まで、邪魔者の魔法少女マクラは飛んでこなかった。


(FIN)

中編作品となりました。

今回は書き始める前に設定や構成に時間をかけました。なので書き始めてからは割合スムーズに進行した気がします。ただ、気合いが先行し過ぎて、見直しがいい加減のまま次話に進んだりしてしまいましたが。

まぁ……やっぱしいつも通り、鳴かず飛ばずの結果で「ジコマン・ニッチ」な作品となりましたが……まぁ満足な時間を過ごせました。有難うございました。

で、次回作と言いたいんですが、もういっこ、同時進行だった作品がありまして、こっちは逆に設定とか構成なんて一切考えずに好き勝手に書き進めたので、現在非常に難航しています。でもま、同じくらい楽しんで書いてるので気楽に進める事にします。そちらの方も良ければよろしくお願いします。

長々とすみません。それでは失礼します。

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