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アオハル転生! ~告白直後にTS転生。フラれた相手を天下人にする話~  作者: 香坂くら
サニー従卒

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003話 河を渡るギャル


 ディワール辺境領の城塞都市、オルドー城の軍議。

 そこは、重苦しい殺気と加齢臭が渦巻く、この世で最も「オレ」の苦手な場所だ。


「閣下、隣領攻略は限界にございます。背後の御身内への備えも欠かせませぬ。ここは一度退くべきかと……」


 古参の家臣たちが弱音を吐く中、正面に座るノヴァン様――野畔希(のあぜ・のぞみ)は、美しい顔を険しく歪めていた。

 オレはといえば、端っこで守衛をする従卒のフリをしながら、耳をダンボにして状況を探っていた。

 なるほどな。内紛には勝ったが、戦線が伸びきって補給が続かないわけだ。ここで一気に川を越えて電撃戦を仕掛けなきゃ、ノヴァン様の首が危ないってワケだ……。

 歴史ゲームオタクの兵藤剛(ひょうどう・ごう)から聞いた話を思い出す。

 こういう時、あの「猿」ならどうした?


「――その悩み、このオレがどうにかしましょう!」


 つい、調子に乗って躍り出てしまった。

 一瞬の沈黙。その後、部屋は爆発したような怒号に包まれた。


「なんだその小娘は!」

「スパイか!?」

「斬れ、即刻処刑だ!」


 突きつけられる剣や槍の穂先。オレは冷や汗を流しながらも、上座のノヴァンを真っ直ぐに見据えた。


「騒ぐな」


 ノヴァン様が声を上げた。彼はじっとオレの顔を見つめた。

 ひょっとすると数日前、オレが献上した「割れない石(=補修用モルタル)」のことを思い出したのかも知れない。オレは肩もみの最中、言ったんだ。「この石で橋を作りませんか」と。


「……サニー。あの『石橋の案』を戦場で試そうというのか?」

「ええ。閣下に勝利を献上するための、魔法の泥遊びです」


 ノヴァン様がフッと笑う。


「面白い。やってみろ。ただし失敗すれば、女子とて容赦せん。その首、城門に晒してやる」

「心配ご無用! オレの辞書に失敗なんて言葉はありませんから!」


 城下へ戻ったオレを待っていたのは、頭を抱えて座り込む妹のシリルだった。


「……姉さん、また無茶をしたんですか。隣国への電撃戦を可能にするなんて、法螺にもほどがありますよ」

 シリルはオレにそっくりな顔立ちだが、中身は驚くほど現実主義者だ。

 いつもオレの破天荒な行動の尻拭いをする苦労人である。そんな彼女がオレの誘いに乗って村から出て来たのは相当の覚悟だったに違いない。ありがたいことだ。姉さん幸せだよ。


「法螺じゃない。古代帝国――ローマの知恵だ。いいかシリル、このオルドーのご領地には『ベルカノ火山』がある。あそこの火山灰と、石灰、それに海水を混ぜれば、水の中でもカチカチに固まる石が作れるんだ」

「ローマ? なんですかそれ。……はぁ、わかりましたよ。どうせ止めても行くんでしょう。資材の調達計画は私が立てますから」


 さすがはオレの妹だ。話が早い。母さん、こんな出来た妹を送り出してくれてホントーに有難う。


◆◆


 オレたちは火山の麓、河賊が跋扈(ばっこ)するという危険な川べりへと足を踏み入れた。目指すは良質な火山灰が堆積する「灰の河原」だ。

 だが、運悪く(あるいは運良く)、オレたちは最悪な連中に囲まれた。


「おっと。こんな『おキャワイイ』な姉妹が、あーしの縄張りに入って来て、何を探してるんだい?」


 現れたのは、燃えるような赤い髪をなびかせた、野性味溢れる美女だった。

 河賊の頭領、シックスだと名乗ったのはオレらをビビらせるためか、名を広めるためか。

 彼女の部下たちが抜いた剣が、オレたちの喉元に迫る。


「姉さん、だから言ったのに……!」


 震えるシリルを背中に隠し、オレは一歩前に出た。


「いいところに来た。シックスと言ったか? あんたに商談がある」

「商談? 笑わせるね。命乞いの間違いだろ?」

「いいからこれを見ろ」


 オレは持ってきた火山灰と石灰の粉を混ぜ、近くの水をかけた。そしてそれを泥団子のように丸めてシックスの手に握らせた。


「……? なんだい、ただの泥――。っ!? 熱い、なんだこれ!?」


 シックスの目が驚愕に見開かれる。

 水と反応して発熱し、みるみるうちに硬化し始めた「ローマン・コンクリート」のサンプルだ。


「これは、オレがノヴァン様に捧げる、天下統一の礎だ。あんたの縄張りにあるこの砂が、金よりも価値のある宝物に変わる瞬間だよ」


 オレはシックスの顔を覗き込み、異世界で培った「サニーとしての最高の笑顔」を見せた。


「どうだ? オレに協力して、歴史の目撃者にならないか。案内してくれるなら、報酬は弾むぜ?」


 シックスは、固まりかけた泥団子とオレの顔を交互に見つめた。

 彼女の頬が、発熱したセメントのせいか、あるいは別の理由か、朱に染まっていく。


「……ふん。あんた、面白いね。度胸もあるし……何より、その顔、あーしの好みにピッタリだ」


 彼女は部下に剣を収めさせ、不敵に笑った。


「いいよ。案内してやる。その代わり、仕事が終わったら……あんたをじっくり、あーしが味わわせてもらうからね? きしし」

「えっ、そっちの意味で!?」


 背後でシリルが、


「姉さん……また変な人をたらし込んだ……」


 と絶望的な顔で呟くのが聞こえた。


 ――こうして、オレは「最強の建材」と「最強の河賊」を手に入れた。

 すべては、あの高飛車な主さまに大勝利をプレゼントするためだ。


次回予告

【ナレーション:シルヴィア・フォレスト(=サニー)】


みんなぁ、サニーだぞ!

河賊のシックスを仲間に加え、いよいよ始まった一夜橋プロジェクト!

だが、ノヴァン様の背後で蠢く、教皇庁からの刺客がオレに牙を剥く。

「オレはただ、主さまの役に立ちたいだけなんだ!」


次回、アオハル転生! 第4話『あーし、軍師様に恋しちゃう! 百合色のささやき』


主さまへの想いは誰にも負けねぇ!

……サブタイ、ヘンだぞコレ?

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