一兆編 第三話 レッドアンドブルー
「一兆」
コーキが俺に話しかけた。
「イッチーでいいんだけど」
「やっぱなんか言いにくい、却下だ」
あらら、却下されちまった。まぁいいか。
「あっそ、で、何か用事?」
「カチコミをするのであればあるチームの事を言っておこうと思ってな。朱雀地方を根城にしてる集団だ」
「朱雀?」
「昔の言い方だ。今はエイド南って分かりやすい名前になったが、どうにも言いにくくてな」
あー、成程そう言う事。しかしこれまた四神相応と来たか。色んな国の文化が混ざり合ってんな。南に朱雀とすれば、ここは西の果て、白虎と言った所か。
「大体わかったわ。で、そのチームってのは?」
「ブルーサンダース。奴らは俺たちと違いインテリでウマが合わない集団だ」
「確かに、こっちには血気盛んそうなのが多いからな。むしろそっちの方がギャングっぽいな。見た目普通でも裏であくどい事を平然とやる感じ」
「あぁそうだ。俺たちと違い卑怯な手を平気で使ってくる」
卑怯な手か・・・むしろ面白いな、この俺に卑怯さで勝負するか。
「よっしゃ、次はそっちにカチコミすっか」
「話を最後まで聞け」
あ、まだ話しの途中だったの。てっきりその集団はこのチームにとって面倒だから先にやっちまえって思ったんだが。
「奴らは腕っぷしとしてはそこまで強くはねぇ。だがこれまでずっと睨みあいになってたのはリーダーの特異な魔法のせいだ」
「特異な魔法?どんなのを使うんだ?」
「電撃、ムゥの力は間違いないが奴の電撃は青いのだ」
「青いって、電撃が青くなるのつったらただの光の見え方だろ?それがそんなに変なのか?」
目に見える放電現象の光は、その時の気象条件とかでその光の色に差が生まれる。青白く見えたり、紫色になったりするのはそれだ。
「そんな事は知ってる。青いのは光がじゃねぇ。うまく説明出来ねぇが電撃そのものが青いって感じだ。しかもその電撃は通常の何倍も威力がある。それに青い魔法と言えば中央にいるフォックスと言う奴が青い炎を扱うと聞いたことがある、あれもまた常識外れの超高温の炎らしい。奴の魔法は恐らくそれと同じだ。その力があったから俺たちは潰しあいに発展しなかった。一兆、もしやつと戦うつもりならば注意しろよ。弱そうに見えるがチアキの実力は計り知れん」
青い魔法か・・・それは初めて聞いたな。こいつの魔法も大したもんだったが、それよりも遥かにヤバい魔法って解釈をすればいいのか。
「気になるなそいつ、チアキとか言ったか?どうやらそいつはこれからの戦いに重要な意味を持ってそうだ」
俺が知る限りではアウロ内にそんな魔法を持った奴は聞いたことが無い。この世界における魔法とは無から有を生み出す現象であったとしても、科学の範囲内。しかし、その青い魔法はどうやら科学の常識を逸脱しているみてぇだ。俺がそれを使えるようになれば・・・
「で、決行はいつだ?」
「ん?分かんねぇか?今からに決まってんだろ?」
「マジ?」
「まじ」
同時にコーキは部下を呼び、カチコミの準備に入った。
「いよいよあいつ等ぶっ潰すんですねコーキさん!!」
「うおらぁやってやらぁぁ!!」
ま~血気盛んな事。あちこちで暑苦しい声が上がっている。
「あんまり大人数にするなよ?俺はあくまでも喧嘩好きじゃねぇんだから。交渉出来るに越したことはねぇ。一番強いの二人位で頼むわ」
「ぁあ!?」
ガン飛ばされた・・・
「そうだな。無駄に戦う必要はない。ワニム、トラマル。俺と来い。一兆、俺とこの二人の三人ならば文句はないな?こいつらの実力は分かっているだろ?」
「あぁ、こん中じゃ一番腕が立つのはお前らだろ。トラマルは頭が少々あれだがま、大丈夫だろ」
「え?頭があれってどゆこと?」
うん、俺の毒舌を理解で来てねぇ時点で馬鹿認定な。てかこれじゃトク以下だぞ。
「よっしゃ、じゃあ行くか!!」
しーん・・・誰も俺に乗ってくれなかった。
「では行くぞ、今こそ奴らとの因縁に決着を付ける時。カチコミだぁぁぁ!!」
「うをぉぉぉぉぉ!!」
やっぱ、信頼度が違うのね。友達とかは基本要らねぇと思ってる俺だが、少し羨ましく思っちまったよ。
俺たちは車に乗り込み、朱雀地方を目指した。因みに俺はグレイシアの乗ってた車を使っている。結構使いやすいのよねこれ。
朱雀地方
「へぇ、フロンティアと違って随分と街っぽいんだな」
ずっとセレスとフロンティアにいたせいか、このエイドって場所はずっと砂漠やら城があったりとか中世風なのかと思ってたが、ここは随分と生活環溢れる街だ。商店街はあるしさっき学校のようなものもあった。複雑に路地が入り組み現代風の街並みが広がっている。
「ここはエイド第二の都市、フェニックスにほど近い近郊住宅。お前らの言い方ではベッドタウンだったか?」
成程ね、そういや遠くにビル群らしきものも見えたな。あれがフェニックスって言うのか。
「そう言う感じか。中々に住みやすそうじゃん。で、そのチアキってのはどこにいるんだ?」
「今は四時ぐらいか、そろそろ下校時間だ。今はまだ学校にいるかもな」
「あ、ちゃんと学校行ってんだな、俺と違って。俺は暇だったら行くぐらいだしなぁ~」
まぁ、ギャングにも色んな奴がいるからな。一見優等生に見えても陰ではカツアゲしてたり中には麻薬の売買をやってる奴を見たことがある。そう言う俺も闇カジノ通いでイカサマやってやりたい放題だしな。
「てかあんたらって学校行ってないんだな」
「俺たちは全員親がいない。家出をしたもの、勘当された者、中には親を殺した奴もいる。俺たちはそんな奴らの集まりだ。学校に行ったところで退学がいい所だ。それに行く金もねぇしな」
これ以上突っ込むのはやめとくかガチで闇が深そうだ。
そんなこんなで学校に着いた、えっと名前はオオトリ学園付属、私立オオトリ中学校・・・中高大まで一貫校って奴か、へー。
「あー、ここに来るたびに嫌気がさすぜ。俺たちを見下すようなこの校門。なんだあの手入れの行き届いた花壇はよぉ」
ワニムは校舎に向かってガン飛ばしている。どうやらこの学校そのものも嫌いらしいな。
「よっしゃ、殴りこむぜ!!」
「あぁちょい!!!」
トラマルがバットを持って車から飛び降りようとした。俺は慌てて首根っこを引っ張って止める。
「ぁあ!?何すんだコラ!!」
「阿保か、校門の前、警備員がいるだろうが。そんな状態でそんなもの持ってってみろ。即刻警察行きだ。それに俺無免許だし」
「言われてみれば、そうか・・・」
はぁ、馬鹿はこれだから・・・多少は周りを見ろよ。目標を一点に絞るから馬鹿になるんだろ。
「付近に止めて奴が出てくるのを待つ。後を追い奴らの集会所を見つけ、その時だ。分かったなトラマル」
「あ、はいコーキさん」
コーキの指示にトラマルは頭を下げた。
しばらくすると、校舎から生徒が吐き出されていった。制服は女子はセーラー服に男子は学ランに学生帽?デザインふっる。
にしても数が多い。全校生徒何人だよ全く・・・
「あ!」
トラマルは誰かに気が付いた。
「あの女!!」
トラマルが指さした方には丸い大きな眼鏡をかけたおかっぱに近い髪型をした女子が本を読みながら歩いている。いかにも優等生のような出で立ちだ。にしてもあんな大人しそうな奴がギャングの一員か。嫌だね~。
「シラキか、だが奴が今日集会に行くとは限らん。尾行するのなら別の奴にした方がいい」
「いや、あいつは毎週火曜日は絶対に集会に行ってる。今日は火曜。シラキは絶対に集会所に行くはずだ」
「トラマル、なんでそんな詳しいんだ?」
ワニムがポカンとした顔でトラマルに質問した。
「いや、敵の行動を知っておくのは当たり前の事だろ?それに、シラキは他の奴らと違ってあまり用心深くない。つけるのならあいつが一番なんだ」
「なーんでそんな事まで知ってんだよ。すげぇなお前・・・」
ワニムがトラマルを心底感心したように言っている。
「そうか。よっしゃトラマル。あいつ拉致すんぞ~」
「え!?ちょ!!馬鹿か貴様!!拉致って分かってんの!?犯罪だぞこら!!」
案の定の反応だ。しかし
「いや、それがいいかもしれん。俺たちは全面戦争するつもりはない。あくまで話し合いが目的だ。奴らに堂々と話しあいは通じん。目には目を歯には歯を。シラキには悪いが人質になってもらうとしよう」
「うえ!?」
「賛成ですコーキさん。それに拉致っちまえばあいつから集会所の場所も聞き出せる。一石二鳥だ」
「ワニムまで!?」
「どうした?反論があるのなら聞く・・・これ以上にいい手があるのか?」
コーキは悪意なくトラマルに質問するが、トラマルはすっごい嫌そうな顔をした。こりゃ面白そ。
「なぁコーキ、どうやらトラマルは奴の行動を知ってるみたいだ。きっと一人になる瞬間も知ってんじゃないか?」
「そうなのか?」
コーキが俺の質問を受けてトラマルに受け流した。
「え!?え、うんはい」
トラマルはおどおどしながら頷いた。
「そうか、ならばシラキの拉致、お前に任せた。頼んだぞトラマル」
「ええええええええ!?」
「おいトラマル、さっきから変だぞ?お前、コーキさんの命令が聞けねぇっててのか!?ぁあ゛?」
「い、いやそんな事はないけど・・・」
「じゃあ行け、見失うだろうが」
ワニムの威圧に耐えかね、トラマルは車を降り、シラキを追跡した。
「なんなんだ?あいつ・・・」
「さぁな・・・」
二人は互いに頭を横に傾けた。
「さてと、念のためだ。俺たちもこっそり追うとするか。もし追跡がバレたらややこしくなりそうだからな。それこそ全面戦争だ。ここは絶対に成功させなきゃいけねぇ」
「あぁ、それに女と言っても年上だ。奴には運べんだろう」
「そうですね。バレないようにいきましょうコーキさん」
俺たち三人は路地裏に車を止めてトラマルの後を追った。
「トラマルは?」
「あそこだ」
ちょうど覗き込むと、何食わぬ顔で本・・・いやあれはメモ帳だなそれを見ながら歩くシラキの後ろをつけていくトラマルがいた。おー、つけられてるのに勉強熱心だこと。
そしてシラキはついに一人になった。その瞬間トラマルが飛び出した。
「や、やい!!シラキ!!」
「へ?」
シラキは驚いた顔で振り向いた。
「て、てめぇに用事がある!!俺と大人しくこれb・・・」
「トラマルちゃん!!丁度いいとこに来てくれたー!!」
「へ?」
「は?」
あー、そう言うパターンね。シラキはトラマルの威勢を完全に無視して一方的な会話を始めた。
「ねぇトラマルちゃん!今小説を書いてるのですけど、それの主人公を考えてたらあなたがぴったしなの!!取材させてくれませんか?」
「え、えっと・・」
「あのね、主人公は一人のヤンキーの少年。その少年は一際小さくて周りからは馬鹿にされるのですけど少年の心の底にはそれを覆す熱い意志、そして野望を秘めていた。そして少年は数々の敵を倒し、やがてヤンキーの頂点に上り詰めていく。的な感じでそんな話を考えていたら頭の中にあなたが浮かんで、丁度その時現れてくれた!!これはきっと運命です!ね、ちょっと家に来てくれませんか?色々聞きたいのです」
「いや 俺はあの・・・」
トラマルはおどおどしている。そんな事を全く気にしないシラキはトラマルの手を取っている。
「お、おい・・・」
「これ逆に・・・拉致られてねぇか?」
「今日は行くとこあったんだけど・・・止めです!!こっちが優先!ねぇトラマルちゃんお願い!!来てくれる?いや来てください!!」
「ふ、ふぇぇ・・・」
「何をしているんだあいつは・・・」
「女だろうと容赦なくぶちのめしてきたというのに。何だあれは・・・」
二人はトラマルにプレッシャーを放っている。
「あ、そうだ、アイス買いに行かない?私奢りますから」
「・・・・・・は・・・・はぃ・・・・」
トラマルは超小声で答えた。
「おいこれじゃマズい、一兆・・・一兆?」
「なぁ、あんたそう言う感じの小説書きたいんなら。自分で体験する方がいいぜ」
「な!あなたは!?」
「イッチーでいいぜ、ほい首トン」
俺はシラキの後ろに瞬間移動し首をトンとやって気絶させた。まぁ、こうなるだろう予想はついてた。奴のメモ帳は小説のネタだったしそれの主人公にマジでぴったしなのはトラマルだ。
それにあの様子からしてトラマルはシラキに対してなんか面白い感情抱いてるっぽかったしな。最初っからトラマルには無理だったんだよ。
「わ!!」
倒れてくるシラキをトラマルは抱えていた。
「わわわわわわわわ!!イッチーてめぇ、急に何すんだ!!」
「だって、お前がヤバそうだったもん。」
「全部俺の計算の内だったのによー!!狂わせやがって!ってぎゃ!!」
俺が軽くシラキの背中を押すとトラマルはバランスを崩し後ろに倒れた。そして覆いかぶさるようにシラキも倒れる。
「は、はわ、はわわわ!!俺の上に!カックン・・・・・」
あ、興奮しすぎてトラマルまで気絶しちゃった。やり過ぎたか?
「済まない、助かった礼を言おう一兆。それにしてもトラマルの奴は、やれやれだな。まぁこういう事もあるか」
「しかしなんなんだ?こいつらしくない・・・」
ワニムは頭が回ってもこういうのには疎いんだな。だがどうやらコーキは、理解できたっぽいな。
「さてと、後は向こうが来るのを待つだけだ。その前にこっちも取材しとくとするか」




