麗沢 クッキングデブ
麗沢編、この話では主に料理をテーマにストーリーを展開していきます。
拙者の名は麗沢 弾。
異世界珍道中NOW、してこの第三章、ようやく拙者にも主人公の椅子が用意されたようでござるな。ま、拙者はモブ派でござるが。
拙者、エルメス殿と共に中央を目指す旅の最中でござる、正直徒歩での旅は体にこたえる、今は少し岩場で休息をとっている次第でござる。
「はぁぁ、疲れたわ~」
少しサバサバした感じで金髪のくるりんサイドテールの女性、エルメス アダムス殿は岩の日陰に座り込む。
「ふぅぃぃいい、だるだるでござるー」
拙者は日陰に横になった。あ、因みに拙者のスタイルは見事な天然パーマに割れても復活するメガネ、そしてこのいい音が鳴り響くポンと出たおなかである!
ついでに背負ってるリュックの中身は教科書タペストリーなど旅にはこれっぽっちも役に立つものは入っておらぬ!!
「何やってんのレイサワ・・・」
「む?読者への説明でござる」
「は?はぁ・・・」
エルメス殿は何か言いたげだが、ツッコむ様子はなさそうでござるな。
「まぁいいや、ところでさレイサワ、サクラの事だけどさ」
「およ?先輩の事でござるか?」
「うん、そう言えばあいつ私の事なんか言ってた?中央での戦いの後、ぶつかったぐらいであんまし話せてなかったし」
エルメス殿はどうも先輩に気があるようなのでござる。事の発端は前の旅の時、南オーシャナでエルメス殿が先輩を気絶させてしまったのが始まりで、あの時拙者が・・・
この事はどうでもいいでござるな、とにかくアレ以降どうも気になっているみたいなのでござる。
「うーむ、特にこれといった事は何も言ってはおらぬな、それにしても先輩いつの間にワダツミ殿やシレン殿と仲良くなっていたのでござろうか」
「ワダツミに、シレンね・・・うーむ、あの二人もなんだか怪しいんだよなぁ。特にシレンの方はやたらとサクラにくっついてる感じだったし」
「およ?」
「それよりも、レイラちゃんもどうなのだろうか。今どきの子ってませてるからね。あの子もライバルになりえそう・・・って、あれ?もしかしてあの二人、二人っきりの旅になってない!?」
「うお!!」
エルメス殿が突然叫ぶものだから体が飛び跳ねてしまったでござる。
「うひゃ!レイサワ!?ビックリさせないでよ!」
同様にエルメス殿も飛んだ、ビックリしたのはこっちなのでござるが・・・
「レイサワ、走ろう」
ほ?突然エルメス殿の目が光った。
「いいから走るぞー!!早くこの旅を終わらせねば!あああああ!!サクラの初めてがああああああ!!」
どうやら、エルメス殿は妄想の中で先輩が襲われてしまっているようでござる。エルメス殿は拙者相手ではオープンに接する事が出来るようなのでござる。
もしかして拙者、人間と思われておらぬのか?ストレス発散装置か何かでござろうか。
引っ張られるように走り、どれだけの時間が経ったことだろう。数日、いや、数週間走った気分でござる。
「何へばってんだよぉ!!まだ五分も経ってないよ!!」
「そうか、五年も走ったのでござる・・・か」
「五分だ!!五年じゃなーい!!いいから起きろー!!起きてーー!!倒れるんじゃねー!」
この扱い、やはり拙者、おままごとの人形の様でござるな・・・
真面目な話、実際には小さな集落が見えていたので、エルメス殿はそれも踏まえ走っただけだった。合計十分程走ったのでござる。
「ありゃりゃ、誰もいないわね」
「はふぅ・・・そう、で ござるな。エルメス殿、流石に これ以上進むのは、危険ではなかろうか。そろそろ日が沈んで来たようですし」
「はぁ、それもそうだね。にしても長いわねこの道、一体いつになったら人のいる場所に着くの?」
「そうでござるよなぁ、先輩たちやグレイシア殿も徒歩で旅に出たでござるからな。あ、でも先輩は動物と話せるみたいでござったな」
「あーそうだったわね、羨ましいわぁ、今度うちんとこの動物たちと話させてみたいな」
「で、出会ったらまた正面衝突するのでござるな、はっはっは!」
ゴッス!!エルメス殿の握りこぶしと正面衝突したでござる。
「それよりも、廃墟とはいえ缶詰程度は見つかったでござるよ。あとカセットコンロに、お!フライパァンッ!!そして?水道も錆びてはおるがしばらく出せば使えそうでござる」
「なんだかんだ探してたんだ。私もこれだけは見つけた」
エルメス殿もあのやり取りの間に様々な食材を探していたようでござる。ツナ缶に、トマト缶、大豆の水煮でござるか。
「エルメス殿、少し外を見てくるでござる」
「え、あ うん。気を付けて」
うーむ、どこかにいい材料は無かろうか、菜園をやっていた痕跡はあったのでござるが・・・
拙者が周囲を探っていたら
「お!コレは!!」
唐辛子でござる!!そう言えば、先輩前にジャンバラヤを食べてたでござるな・・・ならば!!
拙者は屋内へと戻った。そして棚などを粗探しした。
「レイサワ、なんかスイッチ入ってる?」
「ぬぅおおおおおおお!!これとこれをこう混ぜて、あーーーー!玉ねぎがないでござる!!仕方あるまい!缶詰のみでござるーーー!!」
・
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「出来た!!!」
「ひゃぁ!!」
拙者が叫んだと同時にエルメス殿が飛び上がった。
「ビックリしたぁ、で、何作ってたの?すっごい香辛料の匂いがするんだけど・・・」
「ふっふっふ、即興ではあるがオール缶詰チリコンカンでござる!!召し上がるでござる!」
拙者はエルメス殿の前に拙者オリジナルチリコンカンを出した。
「あ、ありがと、いただきます・・・」
エルメス殿が恐る恐る口に運ぶ。
「むっ!!」
「およ!?」
突然エルメス殿の眉間にしわが寄った。
「お、美味しいんだけど・・・」
「そ、そうでござったかぁ。外にあった唐辛子とここにあった香辛料で適当にチリパウダーを作って、それで作ってみたのでござる」
「めちゃくちゃ辛いって訳じゃないんだけど、辛さが丁度いい感じ。ツナも良い感じに食感があるし・・・レイサワ、こんなに料理上手かったんだ」
「ときたま作るぐらいでござるよ~、料理はいつもなんとなくで作っているものでござるから、今回も感性に任せて適当に作っただけでござる~」
上手いこといって、若干いい気分でござる。美味しいと言われるのはいいものでござるな。
「料理は感性ね・・・覚えておくわ、今度サクラにも作ってあげよっか、あいつ前まで辛いのが苦手だったんでしょ?こいつはどうか見てみたいしね」
「それは賛成でござる、エルメス殿の手料理でござるな!!」
拙者がその言葉を発した後、何も見えなくなった。