馬と鹿 ウェルカム トゥ ロストキングダム
桜蘭たちはメリーヌの助言を受け、フロンティア方面へと向かう。
グレイシア、メリーヌと別れてから数日が経った。今俺たちはフロンティアと呼ばれる場所にやって来ている。移動はイッチーが例のカジノから持ってきた車に乗ってる。もろ無免許運転中。
フロンティアって一括りに言っても、ここは広いなんてもんじゃない。地図を見てたらこのフロンティアって所は俺たちの世界で言うところのオーストラリアぐらいあるんだって。なんかこのデバイスで連絡してみたら出た人がそう教えてくれた。紅さん出てくれなかったな・・・で、オーストラリアがどのくらいかはよく分かんね。
そこで俺たちはたまに変な野盗に襲われながらもイッチーがぼっこぼこにして着実にレベルが上がっていっていた。イッチーはもうレベル50だ、因みに俺は・・・レベルが15。むしろ弱体化してんじゃないかなって思い始めてきた次第です。はい。
「・・・」
珍しくイッチーが悩んでる。どうしたんだろ?
「どしたのイッチー?」
「いや、俺のレベル確かに上がってっけどよ、どうにもこれ以上上がってかない気がしてな。50の表示になってからもあの害獣って奴も、強めのバケモノって奴も盗賊どもを倒してんのに上がんねぇんだ」
「へぇ~、もしかしたらバグってんじゃないの?もしもし?紅さんいますか~ってあれ?出ないや・・・」
俺は連絡を取ってみようかと思ったけど、忙しいのかな誰も出てくれなかった。
「・・・グレイシアあたりはどうなんだよ?あいつは常に出れるみてぇな事言ってたし」
イッチーがボソッと俺にそう言った。ほぉそうかそうか。
「そんな事言っちゃって~、グレイシアの声聞きたいだけでしょ?」
ぼか!!
「すみませんでした。もう余計な事は言いません」
俺は滅茶苦茶殴られた。なんだよ、もうちょっと自分に正直になってもいいじゃないのさ。
俺は代わりにグレイシアに連絡を取る事になった、普通に出た。
「あのさグレイシアさん、イッチーと一発セック・・・」
バキ!!
『どうかしたの?』
「いやなんでも・・・いやね、イッチーがレベルが50以降上がらないとかなんとかで、グレイシアさん90でしょ?どういう事かなっておもってさ」
『それは多分、彼らは人間の限界値を五十としてるからだと思う。あなたたちはまだ人間の範囲内だから、それが原因でこれ以上レベルが上がらないんだと思う。大丈夫、今はまだかもだけど、あなたたちの場合は時間が経てば自動的に上限が解除されるはずだから』
うーん言ってる事よく分かんないけど、とりあえず時間が経たないとダメって事だな。
「サンキュー。あ、そうだ。お礼に今度デートしようよ」
俺は冗談で言ってみた。言った瞬間に凄まじい殺気が背中に刺さった。え~駄目だったかなぁ。
『でぇとってなんだっけ?聞いた事あるような・・・』
あ、グレイシアさん分かってないや・・・
「あー、要するにちょっと付き合ってほしいなぁ。なんて」
『付き合う?別に構わない』
あ、やった。
『で、どこに?』
だめだあの人。
「いや実はさ、イッチーがグレイシアさんの事が気になってるみたいでさぁ。今度会ったらイッチーと二人で一緒にお出かけー、なんかどう?って思って・・・」
ヤバい、今通話を切ったら確実に背後からやられる。ここは確実にデートの約束を取り付けないと。ってかグレイシアって彼氏いるんかな。
『別にいい。私もあの人の事で気になる事があるから』
え?今のセリフってまさか脈あり?え、俺キューピッドやっちゃった感じ?
『それはそうと、あなたたちのいる場所。そこからあまり離れていない場所にかつて失われた王国の首都がある。旧エイド王国、セレスティアル オブ ルピナス。暇なら行ってみたら?あそこはフロンティアとの境目、色んな人が集まる』
せれ・・・なんだって?
『・・・みんなはセレスって略してる』
あ、俺が固まってた理由、このデバイス越しなのにバレた。セレスね。りょーかい。
「分かったー。じゃ、今度会ったらイッチーよろしくね」
『? うん、分かったから』
うーん、どうにもグレイシアよく分かってないっぽいけど、まぁいいや!!
「やったぜイッチー!!デートの約束してやったぜ!!」
バキ!ごきゃ!!むしゃ!!
「だぁれがそんな事頼んだよ?ぁあ゛?トクちゃんよぉ・・・」
あれー・・・めっちゃ怒ってる?いや、この感じは。なるほど~、照れ隠しだな?全く・・・
「いいじゃん、グレイシアも特に分かってないみたいだったしさ!普通にお出かけするくらい大丈夫だって!!」
「・・・ったく」
「そ、それよりもさ!!例のセレスだっけ?行かない?」
ここはさっさと話しを切り替えて、一旦この話を終わらせないと!!
「・・・ちっ、てめぇの魂胆は分かってるが、まぁいいか。無駄に怒るの疲れた。さっさとそのセレスってとこに行くか」
あぁ、良かった。これでこれ以上殴られなくて済む。
「あ、トク。これやるよ」
「ん?」
ゴチン!!最後に一発、強烈な拳骨をお見舞いされた。馬鹿になったらどうすんだ!って、俺がこれ以上馬鹿になったらどうなんだ?
それはそうと俺たちはセレスに向かった。
・
・
・
「おー、ここがセレスかぁ!!」
そこは今までのとことは打って変わって、ザ・ファンタジーみたいな長い橋の先には要塞の壁がありその奥には、街とその更に奥には城って言うか巨大な塔みたいな奴がそびえたっていた。
城門は開放状態で、色んな人が出入りしてて、馬車やら車も行きかっている。俺たちの車は適当な駐車場に止めた。
「へぇー、いろんな店があるじゃん。ってあれス〇バじゃね?」
「だな、なんつーかここ、ふつーに暮らしてぇんだけど」
イッチーがなんだか興奮した様子。そう言えばイッチー昔裏カジノで稼いだ金でフランスに行って、モンサンなんとかってとこがすごく気に入ってたなぁ。写真見してもらってたけど、あそことちょっと雰囲気似てるかも。
ここって大きな三角州ってとこにあるんだってさ。この間社会の追試で三角州の事を教えてもらったから分かる。
「なぁイッチー、なんか腹減ったね」
そろそろ昼時。ここでは食べても食べなくても問題はないらしいんだけど、腹が減ったら食べたくなる。
「そこの店にでも行くか?」
イッチーはニヤッと笑ってある店を指さした。どう見ても五つ星が付いてそうな店だ。店内には綺麗なドレスやらタキシード的な人しかいない。
「イッチー、自分テーブルマナー知ってるからって俺おちょくってるでしょ」
「まぁな~」
イッチーはちゃっかり恐らくカジノから持ってきたであろうタキシードに身を包んでいた。
「いや俺はこっちの庶民的な店がいい!!はいけってー!車のカギ俺持ってる!!」
「ちっ、店員につまみ出される姿見たかったのに。仕方ねぇな」
俺たちは庶民的な方を選んだ。最近はやりのバルってやつ?まぁヨーロッパな居酒屋って感じだな。
俺たちはカウンター席に座ってメニューを眺めていた。
「へー、牛フィレ肉のポワレかこっちにも中々のものが置いてあんな」
「ねぇイッチー。ムニエルってなに?」
「教えてやんね。気になるなら自分で食え。あと自腹な?」
「え~イッチーほとんど持ってちゃってんじゃん。ちょっとは俺にも分けてくれたっていいじゃん」
「もとはと言えばお前がすっからかんにして俺がお前の分を賄ってんだぜ?むしろ俺の分も払えや。紅の恩赦無駄にしたのが原因。自分で何とかしてこそ男だぜ~」
ぐぬぬ・・・言い返せぬ。俺は既にイッチーに仮を作っちゃってる。仕方ないか・・・
俺たちは適当に注文してしばらく待っていた。先にイッチーのが来た、その時だった。
『ガシャーン!!』
突然入り口付近で大きな音が鳴り響いた。なんだべさと思って振り返ると。あらまぁ、口元を布で覆って鉄パイプやら棒やらを持っている、ありゃ完全に強盗だな、が押し入って来ていた。
「ごるぁ!!てめぇら動くんじゃねぇ!!ここに東雲組の奴らがいるってなぁ!!出てこいや!!」
あ、違った。誰か探してんのかね?組って事はここにもヤクザ的な奴がいるって事?
「お前らフロンティアの自警団だの言って俺らの自由を奪いやがって!フロンティアは俺らの場所だ!!誰にも縛られない自由な世界!それがフロンティア!!アダムスもエイドも関係ねぇ!!」
うわぁ・・・滅茶苦茶言ってるなこのハゲ。
「あのさイッチー」
「なに?今食べてんだ。話しかけんな」
「この状況でよく普通に食べれるね」
「あ?あれ?なんだあいつ等、強盗?」
き、気が付いてなかった・・・
「それはいいけど・・・あのさイッチー」
「なに?」
「しののめってなんぞ?」
「夜明け」
「サンキュー」
やっと胸のつかえが降りた。成程夜明けをしののめって言うのか。
「てめぇもこの状況でよくそんな馬鹿な質問できんな?」
「おい!!貴様ら!!何をごちゃごちゃ言っている!?さては東雲組の奴らだな!!てめぇらから始末してやる!!」
周りが一気に騒いだ。いやな~んて事ない、こっちには滅茶苦茶強いイッチーが・・・ってえ?
俺は何食わぬ顔したイッチーに襟を掴まれ盾にされた。
「ぎゃ!!」
頭が!!なにすんねん!!!って
「うおわ!!」
俺はそのままぶん投げられた。
「おいあんたら、俺は食べるときは黙って静かに食べる派なの。うるさいから出てってくんね?トクもさっきからうるせぇし」
「て、てめぇゆるさ・・・」
「うるへー!!イッチーめ!!俺の事ずっと馬鹿にしやがって!!もう許さねぇぞ!!」
いい加減にしやがれってんだ!!さっきから俺の事をサンドバックみたいにしやがってー!!もう知らねー!!
「あー、トクキレた」
「全くよー!!グレイシアからここの事聞いてあげたの俺だよ!?それにイッチーの事思ってデートの約束まで取り付けてやったのにあんまりだー!!」
「おいコルァ!俺を差し置いて・・・って、んが!!」
「お前は黙ってろー!!これは俺とイッチーの問題だー!!」
俺は暴れまわった。イッチーは軽々と避ける・・・この野郎。俺をこども扱いかよ。
「・・・っ 舐めやがって、お前ら!!こいつらやっちまえ!!」
あ!?なんでお前らが参戦すんの!!
「あーよっこらしょー」
「おいコラー!イッチー!無視すんなー!!」
「あー、わりぃわりぃ。お前なら大丈夫だと思ったんだー」
イッチー・・・全く反省してないじゃん!!
「俺もう怒ったー!!」
もう怒った!!とりあえず一発殴らせろ!!
「は?」
「へ?」
俺は確かに全力で殴ったけど・・・イッチーが吹き飛んだ。俺が?イッチーを吹っ飛ばした?その瞬間に俺は冷静に戻って来た。
「あ、イッチー大丈夫?」
「大丈夫だけどよ・・・今のなに?」
「知らんわい・・・」
「あとすまん、トクならあの程度大丈夫かなって思ったからよ。ま、俺の顔に免じて許してくんね?」
あ、珍しくしっかりと謝った。顔とか言い方はあれだけど・・・うーん、まぁいいか!寛大な俺はイッチーを許そう!!
「おい、てめぇら・・・何勝手に話勧めてんだ?ぁあ゛!?」
あ、まだ生きてた。しょうがない、もう一発。
『ズガン!!』
突然耳が痛いような音が鳴り響いた。
「ぎゃあああ!!」
その瞬間にその強盗が悲鳴を上げた。
「勝手にやって来たのはてめぇらだろ。うちの店で好き勝手暴れやがって」
「て、てめぇ!!何をした!!」
俺の席の隣にいた人がゆっくり立ち上がった。顔にいくつもの傷や縫い目のある女の人が手にオートマチック拳銃を持ってもう一人の足を撃ちぬいた。
「この子らの喧嘩が仲直りしたってのに、無粋な野郎だな全く。それにフロンティアは自由の場所だ?自分の勝手な都合の自由は自由じゃねぇ。てめぇらに自由を語る資格はねぇよ」
女の人は更に2発足に鉛弾を撃ち込んだ。
「片足だけは生かしてやる。その残った足で自由である事を考えな」
「お、お前はまさか!!ず、ずらかるぞ!!!」
強盗共はこの女の人が誰なのか分かったらしく、足を引きずりながら逃げていった。
「わりぃな、迷惑かけた」
「いや、俺たちが最初迷惑かけたもんですから・・・」
やば、この人怖い・・・
「オーナー!いらしてたんですか!!」
店のカウンターの内側にいた店員がこの人をそう呼んだ。なるほどこの人がオーナー・・・ってこの感じ。俺たちヤバい店にいる感じ?
「あぁ、どうにもまたあの野盗どもが動いてるって聞いてな。ったくせっかくの店滅茶苦茶にしやがって。ところでお二人さん。随分強いな、どこのもんだ?」
「い、いやー俺たちはプレイヤー?っていうかなんというか・・・」
「普通にここに食事しに来た旅行者」
イッチー、順応早~。
「・・・旅行者か。セレスにようこそ。お前らの顔、なんだか懐かしい気がすんな」
女の人は少し笑うと葉巻を取り出し火をつけた。それがまぁ様になってるのなんの。
「で、あんた結局誰?」
「うちか?うちは名乗るほどのもんじゃない。ここの一応オーナーってだけだ。一本吸うか?」
「俺たばこは吸わない主義。カッコつけて肺やられたくねぇし」
「上におなじー」
「見た目とは裏腹に几帳面なんだな。ますますあいつを思い出すよ。そうだ、あいつ等を追い払った礼だ。うちは基本フロンティアのある場所に住んでる。さっきあいつ等が言ってた東雲組。うちはそこの若頭をやらせてもらってる」
東雲組ってさっきあいつ等が言ってた。それに若頭って事は・・・やっぱこの人ヤバい人じゃん!!関わり持つのってヤバくね!?
「いや、俺たちは・・・」
「遠慮すんな、筋は通さなきゃいけねぇんでな」
「ふーん、じゃお言葉日甘えるか。にしてもその歳で若頭か。すげぇな」
あ、そう言えばイッチーは割と裏の人たちとの付き合いがあるんだった。
「ふっ。そうでもねぇよ。それよりうちはそこに住んでる。何か困ったことがあったら来な」
女の人は一枚の紙を俺たちに渡した。
「あ、そいつは誰にも見せんなよ。あそこは秘密の場所、特にあの野盗どもには知られたくねぇからな」
「了解だ」
「じゃあな、うちは帰るとするよ。またあいつ等みたいのが来られても困るしな・・・
お客様のみんなも悪かったな。今日はうちが全員分奢ってやる」
そう言って大量のお金をレジに置いていき女の人は帰っていった。
「さて食べよ」
「イッチー切り替え早いって・・・」




